16話 猫耳少女は仲間のために戦う 1
「あなたはなにが、目的なの?」
エイブルと名乗った悪魔に剣を向けて、睨む。
「さっきも言っただろう。僕はお前らを殺しにきたんだよ」
「なんのために?」
「パードリー様の礎になってもらうためだよ」
「それは……」
「――――何回、聞いてくるんだい? もういいだろ?」
額から頬に伝って、汗が流れる。
時間稼ぎはここまでか……もしかしたら、私と同じようにティアラやルーク、グラットが起きるかもしれないと思ったが、諦めるしかないようだ。
エイブルは口元の片方を歪ませて、笑みを浮かべる。
「それじゃ、死ね」
その言葉を発すると同時に、エイブルは音もなく動き出す。
一直線に槍を私の顔に向けて、突いてくる。
躱そうと剣で槍を流そうと動く。
キンッと金属と金属がぶつかる音が響き、私は槍の突きを躱した。
だが、三叉槍が頬を掠めた。血が頬を伝い床にぽたぽたと落ちる。
完全に剣で流しきったと思ったが、躱しきれてなかった。
「やるね。いつもなら、これで一刺しで終わるのに」
「私は、簡単にやられない」
「そうだと、いいけど」
言って、睨み合っているのに、どこか余裕のある感じでエイブルは笑う。
その隙を狙って、私は力を込めて、剣を振るう。
「おっと」
三叉槍に剣が引っかかったまま、悪魔は部屋の扉の方へと投げ飛ばされる。
そのまま、扉を突き破っていくかと思いきや、悪魔は扉をすり抜けた。
「これが、この悪魔の能力か……」
「そんな、攻撃で僕を倒せると思った?」
思うわけがない。
ピスタニア王国で戦った、女の悪魔はこんな簡単に倒せなかった。
もっと、相手の動きを見て、隙をつかなくてはいけない。
それにしても、エイブルの体は軽かった。
力任せの素早さじゃないから、音もなく動けるのか。
これはまた面倒な悪魔と戦っているな私。
だけど、仲間のために戦わなくては。
それに、今の状況でティアラが目を覚まさないってことは、やっぱり悪魔の攻撃なんだろう。
この悪魔を倒せば、もしかしたら目を覚ますかもしれない。
「ねえ、僕はどこから顔を出すと思う? 獣人のお姉ちゃんにわかるかな?」
どこからともなく聞こえてくる声に、私は視線を回す。
どこからくる。
後ろから、上から、左右から……四方八方に警戒しながら、集中する。
「僕はお姉ちゃんに、捉えられないよ」
声の方に私は視線を向ける。
その瞬間、エイブルは足元から姿を現した。
「ばあ!」
下から槍を突き上げてくる。反応が遅く、躱すことは不可能だった。
だけど、私は力一杯に上から下へ剣を振り降ろす。
三叉槍は、太腿の辺りに突き刺さる。
「やるね、お姉ちゃん。だけど、いつまで耐えられるかな」
言って、エイブルはまた笑みを浮かべて、姿を消す。
厄介な敵だけど、反応できないほどじゃない。もっと素早く反応できれば、私の剣が悪魔を斬れる。
深呼吸をして、もう一度集中しようとした時だった。
部屋の扉がゆっくりと開く。
そこには、この国を案内してくれたアンナが立っていた。
「ここは、危ない! 逃げて!」
「え……」
私が必死にそう叫ぶと同時に、背後から強烈で純粋な殺意を感じた。
その気配を背中に、私はアンナの方に走った。
三叉槍はすでに私の背中を捉えているだろう。
振り返って剣を構えても遅いだろうし、横に躱せばアンナに槍が刺さってしまう。
この状況を打破する方法がなく、私はただアンナを守るために、飛びつく。
「さよなら、お姉ちゃん」
笑い声のような少年の声が、耳元で聞こえてきた。
「死ね」
言葉と共に、私の脇腹に槍が突き刺さった。




