11話 夜の国の悪魔の存在
ルーンナイトリス王国の中心部から少しずれた位置に、この国の王が住まう城が存在していた。
闇に身を包む二人が、王座に鎮座する男に膝をついた。
凛とした女の声が、王の間に響く。
「パードリー様、例の冒険者が眠りにつきました」
「そう……なら、食事の時間にしようかしら」
男は立ち上がり、王座の後ろに回り高欄に出る。
月明かりに照らされ、男は姿を現す。
そう、この男は、この国の王ではない。
二本の角を頭に生やし、赤い瞳で街を蔑むように眺めている。その手には、鋭い爪が伸びていた。
高貴な服に身を包んだこの男の正体は、パードリーという名の第七悪魔の一人である。
「それでは、いただきまぁぁす」
パードリーは両手を広げて、大きく息を吸う。
すると、徐々に口の中に空気ではなく、魔力が溜まっていく。
口いっぱいに魔力を溜めると、パードリーはそれを思いっきり飲み込んだ。
「ゴクリ……最ッ高に美味しいわ!」
パードリーは満足な表情を浮かべる。だが、すぐに首を傾げた。
「ん? おかしいわね……」
「パードリー様、どうされましたか?」
パードリーの後ろまで移動していた二人のうち、三叉槍を持った悪魔が少年のような声で聞き返す。
「いつもと味が変わらないのよねえ……神の魔力を食べてるはずなのに」
「それは、どういう……」
パードリーの疑問を聞くと、女の悪魔はすぐに魔法を発動した。
目を閉じて、この国に撒いてある魔力の気配を辿る。
そして、そこで一つの違和感を覚える。
「なぜか、あの冒険者たちの気配を辿れません」
「ミスト、それはどういうことなの?」
「多分ですが、誰かによって守られている可能性があります」
「なるほどねぇ……」
頭の中で思考を巡らせ、パードリーは先を見据えて策を練る。
パードリーの目的は、悪魔から魔王に進化し、すべての悪魔の頂点に立ち、悪魔も人々も関係なく、自分の言いなりになる世界を作ることである。
そのためなら、手段は選ばない。
国を乗っ取り、進化するための魔力を食らっていた。
計画はここまで、順調だ。
さらに、そこに神の力を持った冒険者がやってきたことで、計画はさらに加速していた。
冷静に考え、パードリーは答えを出す。
微笑みながら、指示を出す。
「エイブル、今からその冒険者を殺しに行きなさい」
「了解です。ですが、よろしいのですか?」
「理想はこの国に縛って、夢を食べ続けるのが良いけど、神の魔力を食べられないなら、殺してここで食べた方が早いわ。だから、行ってきなさいエイブル」
「パードリー様、了解しました」
三叉槍を握り、エイブルは高欄から飛び立つ。華奢な体が素早く遠ざかり、消えていく。
それを見て、パードリーは舌なめずりをする。
「楽しみに待ってるわ」




