10話 少女は夜の国で眠る
夜ご飯を食堂で食べた後、私たちはそれぞれ泊まる部屋へと戻った。
私はベッドの上に座り、頭の上に乗せたキューを横に置く。
すると、キューはゆっくりと動き、窓際の方に移動する。
「どうしたのキュー?」
私の呼びかけに、キューは反応を示さない。
どうしたんだろう。この国に入って、初めは元気だったのに、街を回ってる時はずっと静かだった。
寝ていれば、可愛い寝息が聞こえてくるけど、それもなかった。
窓から外を眺めて、キューはなにを考えているのだろうか。
マナフィリムという妖精の特性なのだろうか。
まだ、出会ったばかりでわからないことばかりだ。
腰に差した剣を置き、私の向かいにあるベッドに腰を下ろす。
「ティアラもなにか、感じてる?」
フィストの真面目な問いに、私は頷く。
「うん……なんだか、この国の人たちの笑顔が不気味に感じるよ」
「私も同じ。みんなニコニコして不気味だよね」
どうやら、私の感じていた違和感はフィストにも伝わっていたらしい。
やっぱり、おかしいと感じていたのは私だけじゃなかったんだ。
「キューも国に入ってから様子がおかしいし、街の人も様子が変だし、この国でなにか起こってるのかな?」
「うーん……」
フィストは天井を見上げ、考えてから再び口を開く。
「だとしたら、この国は早めに出た方が良いかもね」
「もしかしたら、ルークもすでに気づいてるかもしれないし、言えばそうなるかも」
「だったら、明日に向けて、しっかり寝ないと」
そう話し合って、私とフィストは旅服から、寝間着に着替えた。
いくつか、引っかかることがあるけど、明日旅立つなら、私たちには関係ないことだろう。
☾ ☾ ☾ ☾
「ダメだよティアラ」
「どうして、いいじゃん」
ベッドの上に横になってフィストは掌を私に向けて、制止する。
「今日はちゃんと寝ないと明日、旅立つ体力がなくなっちゃうでしょ。だから、私のベッドに入ってこないで!」
「ええ……たまにはいいじゃん」
「たまにじゃなくて、宿に泊まるたびに、入ってくるから言ってるの!」
今日はちょっぴり寒いから、フィストの温もりを借りたいのに。
「わかったよ。今日は一人で寝るよ」
私は、悲しい表情を浮かべて、窓際のベッドに横になる。
ふと窓際を見ると、キューが青色の体を月明かりで照らして、未だに外を眺めていた。
「キュー寝るよ」
そう声をかけると、キューはこっちに振り向く。
「キューキュー……」
疲れているのか、元気がなさそうに返事をするキュー。
私は手をひらひらさせて、こっちにおいでと誘う。
「キュー……」
眠そうに返事をして、キューが布団の中に入ってきた。
私は、冷たくてぷにぷにした体を抱きしめて、呟く。
「キューお休み……」
キューを抱きしめていると、徐々に温かくなっていく。
それが心地よくて、私はゆっくりと瞼を閉じた。
最近は安心しているからか、前まで感じていた恐怖がなくなっていた。
多分、みんながいる安心感があるからだろう。
私は、キューの温かさを感じながら、まどろみに落ちていった。
☾ ☾ ☾ ☾
「ティアラ、朝だぞぉぉ!」
「ん……」
誰かに呼ばれた気がして、私はゆっくりと瞼を開く。
そして、最初に視界の中に飛び込んできたのは、なぜだか、懐かしさを感じる天井だった。
「ティアラ、そろそろ大人になるんだから、お父さんに起こされるんじゃなくて、自分で起きれるようにならないとダメよ」
私はゆっくりと起き上がり、目の前に広がった光景に首を傾げた。
「あれ……ここは、どこ……?」




