奴隷少女は次への場所に進む
私は、ルークの背中に背負われ、螺旋の階段を下る。
「シャーデちゃん、足元暗いから気をつけてね」
「うん! わかった!」
にこにこするシャーデがルークの隣で手を繋いで、一緒に階段を下っている。
そんな時、ふと疑問が浮かぶ。
「シャーデ、一つ聞いていい?」
「ティアラお姉ちゃん、どうしたの?」
「最初から、ここで探せばすぐに見つかったじゃないかな?」
「え、だって最終手段だし」
「でも……」
「ティアラお姉ちゃん! 楽しかったでしょ!」
「まあ……そうだね」
同時にすごく疲れたけどね。今だって、足が痛すぎて立つだけで、ふらふらだし。
私はシャーデに苦笑いを向ける。
「私もすごく、楽しかった!」
シャーデの弾けるような声が塔の中に響いた。
塔を下り、外に出ると空はもう真っ暗で月が見える。
商業都市ウェルトは今日の終わりを告げていた。
街を歩く人の数も、昼間と比べて、嘘のように少ない。
「シャーデお嬢様! ようやく見つけました!」
塔の近くの広場を歩いていると、黒くきっちりとした服に身を包んだちょび髭のおじさんにシャーデが呼ばれる。
「シャーデお嬢様、わたくしから勝手に離れないでください!」
この人はなに? てか、シャーデのことお嬢様って言ってるけど、本当に何者?
息を荒げ、膝に手をついたちょび髭のおじさん。
「はあはあ、今日はわたくしと一緒に食べ物の調達をしに外に出たのに、なんでどっか行っちゃんですか!」
「だって、つまらないもん」
唇を尖らせながら、ふんっとそっぽを向く。
「迷子になったら、どうするんですか!」
「私、迷子になんてならないもん」
迷子になったのは、私なので、ちょっとばかり耳が痛い。
「あの……」
シャーデを叱るちょび髭のおじさんに、ルークが訪ねる。
「あなたは、誰ですか?」
「あ、すみません。わたくしは、この商業都市ウェルトの領主のウェルロット・ルーカス様の執事、チャルトンと申します」
私は、一瞬脳の処理が追いつかず、動きが停止する。
え……領主の執事がなんで、シャーデを……。
「もしかして、シャーデってすごい人?」
「ティアラお姉ちゃんに言ってなかったけ? 私のお父さんこの街の領主だよ」
「そ、そうだったの⁉」
そう言われて、驚くが、色々なことが腑に落ちる。
この街の人たちみんな、シャーデのことを知っているかのように話しかけていた。
あれは、シャーデの顔を知っていたからなんだ。
「今日は、シャーデお嬢様をありがとうございます」
礼儀正しく、頭を下げる執事のチャルトンに、ルークの背中で焦りながらいえいえと返す。
「一人ぼっちで迷子になって、不安に思っていたところをシャーデに助けられたので、感謝を言うのは私の方です」
「そうなんですか?」
「恥ずかしいですけど、はい……」
「そうだよ! 私は人助けをしたの!」
腕を組み得意げな表情をするシャーデ。
「ありがとうね。シャーデ」
私はそう言って、ふんわりとしたシャーデの頭に手を伸ばして、撫でる。
「うん!」
「それでは、シャーデお嬢様帰りますよ」
「はーい!」
シャーデはさっきよりも機嫌がよくなったチャルトンと手を繋ぎ、行ってしまう。
最後に、シャーデは笑顔で振り向いた。
「ばいばい! お姉ちゃんたち! また、遊ぼうね!」
大きく手を振る、シャーデに私とルークは手を振り返す。
「ばいばい!」
てか、もしかして、遊びたくて街を回っていたのかな?
いや、流石に子供がそんな打算的じゃないよね。
☾ ☾ ☾ ☾
次の日の朝、私とルークは商業都市ウェルトの出入り口前に立っていた。
朝日が眩しく、私たちを照らしていた。
「疲れはとれた?」
「はい。今は、すごく元気です!」
「そっか、なら次の場所を目指して行こうか」
「その前にいいですか?」
「ん、どうした?」
真面目な表情を作り、ルークの顔を真っ直ぐに捉える。
「私、ルークと同じような魔法を使いたいです! だから、教えてほしいです!」
「いいよ。この先、危ない魔物とかいるし、自分で身を守る方法を覚えた方がいいしね。ちなみに、僕はそのつもりでいたよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。だから、言う前にやる気になってくれて、嬉しい」
にこっと笑うルーク。
私は、その笑顔に真剣な眼差しで答える。
「私、ルークみたいに綺麗な魔法、使えるように頑張ります」
言葉を聞いて、ルークは頬を赤く染め頬を掻きながら言う。
「僕が教えるから、きっと使えるよ……」
私は、自分の掌を見て、たくさんの想像を膨らませる。
手から、炎や水が出るかもしれない。
ルークみたいに空を自由に飛べるようになるかもしれない。
そう考えるだけで、胸がたくさんの期待で溢れてきてしまいそうだ。
「わくわくしますね!」
「そうだね。ティアラがどんな魔法を使うのか僕も楽しみ」
微笑みまじりにルークが照れるように笑う。
「よし、準備もできたし、次の目的地に行くぞ!」
「はい!」
私は、旅への期待を胸に、次の場所に向かって一歩踏み出した。
目指すは、ビスタリア大森林の中に存在する森の国、ビスタリア大森国。




