7話 少女たちと女の子
空には星が煌めき、街も蝋燭の明かりが所々にあり輝いていた。
レンガで建てられた建物がずらっと並び、地面もレンガで舗装されている。
「綺麗な街並みだね」
「本当に夜だ。こんな魔法結界あるんだ……」
「こりゃ、酒がうまいぞ」
しばらく、今までに見ない街並みに見惚れていると、頭の上でキューが目覚める。
「キューキュー!」
「あ、キューが起きた。国に着いたよ!」
私がそうやって声をかけると、キューは頭の上からぴょんっと飛ぶ。
すると、必死になにかを伝えようと、キューは鳴く。
「キュキュキュー! キュキュー!」
「ん? どうしたの? もしかして、寝起きでびっくりしちゃった?」
「キュキュキュー!」
キューの意思を読み取ろうとするが、いまいち伝わってこなくて、私は首を傾げる。
もしかして、お腹が空いたのかな?
その時、私たちは声をかけられる。
「旅人さんたちですか!」
声の方に視線を向けると、小さな女の子が私たちに話しかけていた。
ルークが、目線の高さを合わせるために、膝を曲げる。
「そうだよ。どうしたの?」
「そ、その……」
少し、後ろめたいような気持ちがあるのか、目をぐるぐると回しながら、女の子はぎこちない笑顔を浮かべて答える。
私は、頭の上から飛んだキューを持って、話を聞く。
「わ、私の名前はアンナ! 旅人さんに街を案内してるの! だから、案内させてほしいなと思って話しかけました! どうですか?」
「そうだなあ……どうする?」
ルークは私たちに視線を向けて聞いてくる。
すると、フィストがアンナを訝しむような表情で見ながら、返す。
「私は信用できないです。もしかしたら、私たちの物を盗んだりするかもしれませんし」
フィストの言っていることはわかる。
門の前の兵士とは違い、なにか裏がありそうな表情をしているから、怪しむのは大事だ。
すると、グラットがアンナに近づき、質問する。
「嬢ちゃん。美味しい酒が飲める場所を知ってるか?」
グラットを恐れているのか、アンナは涙目になりながら素早く顔を上下に振る。
「なら、俺は案内させてもいいと思うぜ!」
「はあ……あなたは酒のことしか、考えてない」
「もちろんだ!」
いつも通りのグラットに、フィストは肩をすくめて辟易している。
「じゃあ、後はティアラだけど、どうする?」
ルークは私を見て、答えを委ねる。
私はうーんと声を出しながら、考えた。
フィストが怪しいと言う気持ちもわかる。
だけど、なにも知らない国を案内してくれる人がいるというのも、ありなのかもしれないと思う。
ルークはどうなんだろう。
旅の中で、ルークが自分の選択をする姿をあまり見たことがない。
いつも一歩下がったところで、私たちを眺めているような気がする。
答えがないのか、みんなの意見を尊重しているのか、それとも自分の答えに自信がないのか……。
そんなことを考えてもわからないので、私は自分の選択を口にする。
「案内してもらいましょう。私たち来たばかりで、泊まる宿も、美味しい食べ物もわからないので、案内してくれた方がありがたいと思います」
色々考えたが、案内してくれた方が私たちが動きやすいと思ったのだ。
フィストは、私の選択に納得がいってないのか、話しかけてくる。
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。物とか盗まれても、フィストの力ならすぐ取り返せるでしょ。それとも、子供にも負けちゃうぐらい弱いのかな?」
私が煽るように言うと、フィストは眉を寄せ、頬を膨らませる。
「そんなわけないでしょ! 私が子供に負けるなんてありえない」
「なら、案内してもらおうよ」
「まあ、確かにそうね。こっちには魔法使いもいるし、心配はないか……」
自分の中で、納得がいったのかフィストはアンナに視線を向ける。
「疑ってしまって、申し訳ないわ。それと、これからよろしくね」
気まずそうにしながら、アンナも気まずそうにしながら口を開く。
「ぜ、全然大丈夫です。わ、私の方も急に話しかけてしまったので……」
――――パチン。
ルークが手を叩き、みんなが視線を向ける。
「それじゃ、アンナに案内してもらおっか! よろしく、アンナ」
すると、アンナは私たちの前に出て、身振り手振りで言った。
「それでは、夜の国、ルーンナイトリス王国の案内をさせていただきます。旅人さんたち、行きたいところはありますか?」
そんな問いに、私たちは顔を見合わせて、それぞれがそれぞれの行きたい場所を言った。
こうして、長い夜の旅が始まった。




