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3話 少女は前に出る

「え、これが、マナフィリム!」


「キューキュー」


 冷たい手触りで、まん丸でぷにぷにして、キューキューと鳴く生き物。

 すごく可愛い。

 妖精っていうから、もっと人型のを想像してたけど、こんな子もいるんだ。


「おい、なんでそんな妖精が上から落ちてくるんだ?」


 ゆっくりとグラットがこっちに近づきながら、聞いてくる。


「それは、私もわからないよ」


「キュー!? キューキュー!」


 思い出したように、マナフィリムは顔を青くして、鳴きだす。


「ん? どうしたの?」


「キューキュー!」


 上を見てと言われているような気がして、私とルークはゆっくりと視線を上げた。

 近づいてきていたグラットは、足を止めた。


「な、なんですかあれ、ルーク?」


「あ、あれは……ウッドタイガーだ……」


 私とルークは顔を青くして、こっちを枝の隙間から睨むウッドタイガーを見上げた。

 四足歩行でゆっくりと獲物を狙っているかのように動き、鋭い牙と鋭い視線がこちらを捉えていた。

 

 「木登りができるぐらい手足の握る力が強い魔物なんだ……」


「そんなの聞いてませんよ!」


「――――ガオォォォォ!」


 突如、木から飛び降りてくる。


「危ない!」


 素早くルークが魔法を発動し、私とマナフィリムを抱えて、上から落ちてくるウッドタイガーを躱した。

 砂塵が舞い、その奥から凶暴な鳴き声が聞こえてくる。


「グルルルルゥゥ……」


「ルークとティアラ大丈夫!」


 フィストが、必死になりながら声をかけてきた。


「だ、大丈夫……ちょっとびっくりしただけだから」


「僕も平気だよ」


「それなら良かったけど、あの魔物はなんで、上から落ちてきたんだろう?」


「フィスト、俺の心配もしてくれよ!」


 離れた距離からグラットが、声を上げる。

 フィストは、冷たい視線を向けて答えた。


「あなたは、一目散に逃げたんだから大丈夫でしょ」


「そんなあ……」


 ウッドタイガーの方を見て、ルークはフィストの疑問に答える。


「この木にはさっきフィストが言ったように、魔力が詰まったマナンの実がなっている。魔物も妖精も生態的には同じで、魔力をエネルギーとしている。だから、あの魔物も木の実を狙っているということになるな」


「じゃ、どうして私たちを狙ってきたんですか?」


 抱えられた体を下ろしてもらいながら、私はルークに聞く。


「いや……狙いは僕たちじゃなくて、多分、そのマナフィリムだと思う」


 そうか、マナフィリムは魔力を吸ったり、与えたりする力がある。

 その溜まった魔力をあのウッドタイガーが狙ってきたのかもしれない。


 手に抱えたマナフィリムが震えて、鳴いている。


「キューキュー」


「大丈夫だよ」


 そう声をかけて、私は笑みを浮かべる。

 こんな可愛い子が、目の前で襲われるのは私としては嫌だ。


 私は、マナフィリムに視線を向けた後、覚悟を決めて言った。


「ウッドタイガー倒すの、私に任せてくれませんか?」


「できる?」


「はい!」


 自信満々に声を上げて、返事をする。

 この七日間の旅の中でルークに、いくつか魔法を教えてもらって、使いこなせるようになってきたから、自信がある。


「なら、任せるよティアラ。でも、危ないと思ったら僕が助けるからね」


 私は、その言葉を聞いて、マナスライムを自分の頭の上に乗せて、安心しながら前に出る。


 砂塵から鋭い眼光が光った。

 今までなら、怖くて震えてるかもしれない。

 だけど、今は自信があるから、怖くない。


 私はウッドタイガーを睨み返した。

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