2話 少女は小さな出会いをする
「わあ……すごい大きい……」
私は、大樹の前に立ち、本を広げながら呆然としていた。
「すげーな、この木」
「私の国にも、大きな大樹はいっぱい生えてるけど、ここまで大きいのは初めて……」
「僕が飛んで上に行っても、届かなそうだね」
汽車から降りて、七日間、色んな街を旅して、私たちは妖精の森フェーアリアに来ていた。
この森は、一本の大樹から伸びる枝に全体が覆われ、さらにその下には大量の木々が生えている。
つまり、私たちの頭上は木々に二重で覆われているのだ。
でも、なぜだろう。
洞窟のように太陽の光が通らないこの場所で、明かりがあるのは。
本の絵がはっきり見えるほど、青白い光が私たちを照らしていた。
とても、不思議な空間の中に、私たちはいた。
私は、本の絵を大樹に重ねるようにして見た。
『深い森の中に落ちる宝石の光』
私たちがいる場所と同じ景色が、本には描かれていた。
「すごく綺麗だけど、この光ってなんだろう?」
私が、頭上から降り注ぐ光を不思議に思いながら聞くと、フィストが答えてくれた。
「私も詳しくないけど、この光は多分、大樹から出ている魔力の光だと思う」
「ん……?」
いまいちピンとこなくて、私は首を傾げる。
フィストはゆっくりと大樹に近づいて、片手で触れる。
「命の大樹。この大樹は魔力を吸って成長している。そして、この木の枝には、魔力が宿った実、マナンの実がたくさん実ってる。その実から放たれる光だと思う」
「へえ……」
私は一筋の光をたどって、上を見上げる。
青白い光が、私の目に直接入った。
あまり、光の強さを感じない。まるで月を見上げているようだった。
遠くを見つめるように私は、目を細めた。
「あ! あった!」
私は、光を放っている木の実を見つけて、声を上げた。
青い宝石のようにキラキラして、綺麗だった。
あれが、マナンの実か……。
「どんな味、するのかな?」
「ティアラ、あれは食べられないよ」
「え?」
私の横に立っていたルークが、笑みを浮かべながら言った。
「あの実には、たくさんの魔力が詰まっていて、食べると魔性病になってしまうよ」
「そ、そうなんだ……」
ちょっぴり残念に思いながら、俯く。
「それに、あの実は妖精が生活するために、必要な食料だから、人が取っていい物じゃないんだよ」
「そっか、それなら仕方ないですね。一度、食べてみたいけど……」
「てかよ! この大樹はどこから魔力を吸収してるんだ? まさか、俺らの魔力じゃないよな?」
大樹に近づき、手で触れるグラットが疑問気に聞いた。
「それは、妖精から出る魔力の鱗粉やマナフィリムっていう、魔力を吸収したり、与えたりする妖精が、この大樹を成長させているんだよ」
「へえ、私、マナフィリムって初めて聞いた。ルークって詳しいのね」
「まあね。魔法を習ってる時、旅するために色々知識もつけてたから」
ルークが私を見て、頬を赤くして笑みを浮かべた。
私は、また疑問が浮かんで、ルークに聞く。
「マナフィリムってどんな見た目の妖精なんですか?」
「それは……」
ルークが答えようとした瞬間、突然、鳴き声が響いた。
「――――キューーー!?」
私の頭上から鳴き声が聞こえた気がして、ゆっくりと視線を上に向けた。
「え?」
水音のような音を立てて、私の顔になにかが直撃した。
顔になにかが張り付き、息ができない。
無理やりそれを引きはがし、両手で持つ。
「なにこれ?」
それは、透き通るように青く、ぷにぷにした球体だった。
「キュー」
「え、鳴いた……」
ルークが近づき、その不思議な生き物を観察してから、口を開いた。
「それが、マナフィリムだよ」




