↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
78/99

43話 少女はとんがり帽子の魔法使いと街を歩く

 ルークは目覚めてから、フィストと同じようにお腹が空いていたらしく、朝からバクバクとご飯を食べていた。

 食べ終わると、お腹に入れすぎたのか、しばらく横になった。


 太陽の位置が、西の方へと傾いた頃、ルークが起き上がって言った。


「ティアラ、今から一緒に街を歩かない?」


 突然の提案だったけど、私は快く笑顔で返した。

 何より、ルークから誘ってくれたことが嬉しかったのだ。


「行きます!」


 ☾ ☾ ☾ ☾


 ピスタニア王国の城から西へと進んでいく。


 空はすでに、ほんのりと青にオレンジが混ざっていた。

 王宮区画には、武器商人や武器職人がたくさん集まり、武器を売ったり、作ったりしている。

 素材を運ぶために、大通りの真ん中を馬車がたくさん行ったり来たりして、せわしなく騒がしい。


 そんな街が、今まで見てきた街とは違い、私は好きだ。

 時間が経てば、この国はまた、私の知らない姿をしているのだろう。

 

 そんなことを思うと、私は自然と口を開いていた。


「ルーク、私は今より、もっと強くなりたいです。だから、もっと魔法を教えてほしいです」


 天使様に強くなれると言われた時から決めていた。

 強くなるなら、やっぱりルークから色んな魔法を教わるのがいいと。


 隣を歩くルークは、私に視線を落として聞き返してきた。


「それは、どうして?」


「それは……私が弱くて、何も守れないからです……」


「もしかして、グラディオが死んじゃったのを後悔してる?」


「それもあります。だけど、フィストとルークが大きな傷を負ってしまったことや、悪魔を逃がしてしまったこともあります。私が強ければ、もっと最小限にできたって思うと……このままじゃダメだと思って」


「そっか……」


 ルークは、人差し指を立てて言った。


「ティアラが強くなりたい理由はわかったよ。だけど、ティアラには一つだけ約束してほしい」


「それって、何ですか?」


「それはね。この先、必ずあの夜のような状況がやってくる。その時、自分の力だけじゃなくて、僕たちの力も頼ってほしいってことだよ」


 私はルークの言葉に、首を傾げた。

 意味がわからないわけではない。だけど、なんで今、それを言われたのかわからなかった。


 ルークは、優しい笑みを浮かべてわからない私に、答えてくれる。


「今のティアラは、強くなったらなんでも一人で動こうとしちゃいそうだからね」


 ようやく約束の言葉の意味がわかった。


 私が強くなったら、後悔したくないから全部自分で動こうとしたかもしれない。

 それに対して、ルークは私に一人だけじゃないよと言ってくれたのだ。


「僕たちだって戦えるから、強くなってもちゃんと頼ってよ。それが約束」


 私は足を止めて、ルークを真っ直ぐに見つめる。


「わかりました。一人じゃ戦いません」


「うん。なら、次の旅の道のりで魔法を教えるよ」


 ルークの言葉に、頷いて、私は砕けたように笑みを浮かべて、再び歩き始める。


「でも、強くなるまでは、多分、頼りっきりになりますけどね」


「そうだね。だけど、ティアラは考えて動けるから、それだけでも戦力だよ」


 言って、ルークは微笑んだ。


 ☾ ☾ ☾ ☾


 王宮区画を進み、城壁を潜る門の下まで来た。

 脇には、城壁の中に続く扉があり、入ると、上に上るための階段があった。


「ここに何があるんですか?」


 ルークに連れられてきたから、気になってしまった。


「僕も初めて行くからどんな景色が見れるかわからないけど、想像通りなら綺麗だと思うよ」


「それは、期待しちゃいます!」


 わくわくとしながら、長い螺旋状の階段を登り始めた。

 

「はあ……はあ……」


「まだ、半分も登れてないよ」


 先を登るルークが、私に向かって煽ってくる。


「う、うるさいです」


 汗が、頬を伝い落ちていく。

 上を見ると、まだまだ続く階段に絶望した。

 

 でも、これぐらい登れないと強くなれない。頑張ろう。

 

 私は、一心不乱に階段を登り続ける。

 ルークの煽り声を無視して、上を向くと諦めてしまいそうになるから、下を向いて、何も考えずにただ登り続けた。


 足に痛みが走るが、それも次第に慣れてきた。

 そうして、上っていると、私の視界にオレンジ色の光が差した。

 視線を上げると、ゴールが見えた。


「ティアラ、もう少しだよ!」


「はあ、はあ……わかって……ます」


 ふらふらしながら、一段一段階段を踏みしめて、上っていく。

 微風が肌を撫でて、もう少しだと感じる。


 すると、視界の中にルークの足元が入って、顔を上げる。

 ルークが、いつも通りの笑顔を浮かべていた。


「よく登ったね」


「はあ、はあ……頑張りました」


 しばらく、階段の段差に座って休憩した。

 呼吸が整ってきた頃、私たちは外に出た。


「わあ……!」


 外に出た瞬間、飛び込んできた景色に私は目を見開いた。

 

 二枚の城壁に隠れるように、太陽が半分だけ顔を出していた。

 色とりどりの屋根が夕焼けに照らされ、きらきらとしている。

 強く風が吹き抜けて、私の青い髪が靡いた。


 いつも見ている太陽なのに、今日はいつも以上に輝いて見えた。


「綺麗ですね……」


 景色に見惚れながら、私は言った。


「そうだね」

 

 ルークも同じように、景色に見惚れていた。

 

 しばらく、私たちは静かに景色を見つめる。

 そんな時に思う。


 私は、この綺麗な景色を守るために、あの夜戦ったんだと。 

 もし、あのまま悪魔を逃がして、兵器を持っていかれていたら、この景色はなくなっていただろう。

 色々後悔はしたけど、それ以上に守れてよかったなって思った。


 そんなこと、思っていると、ふと思い出す。


「ルーク、あの本持ってますか?」


「一応持ってきてるよ」


 ルークは背負っていたバックパックから、本を取り出して、渡してくれる。

 

 この本は、商業都市ウェルトで購入した景色の絵がたくさん載っている。

 私は、パラパラとページを捲って、とあるページで手を止めた。


 そこには『未来へと繋ぐ夕日に輝く街』というタイトルの絵があった。


 私は、今見ている景色と、絵の景色を重ねてみた。


「これだ……」


 街並みは絵とは違うけど、この絵の面影が、今見ている景色に残っている。


 時間が経って、街は変化したんだ。

 この絵を描いた人もそれをわかっていたから、こんなタイトルにしたんだろう。


 絵に描いてある過去のピスタニア王国も好きだが、私は今見ているピスタニア王国の景色が好きだ。

 この絵のように何かに残したいと思ったが、私にはその手段がなかった。

 だから、私の記憶にこの景色を残しておこうと思った。


 どんなに変化しても、私がここに立てば、必ず今の景色を思い浮かべるだろう。


 この先、この国はどんなふうになるのかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。