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37話 銃使いの男は新しい居場所を見つける

 ルークが空から、落ちてくる。


「ルーク!」


 俺は急いで落下地点へと駆け込む。

 足元の剣を蹴り飛ばし、ルークを受け止めようとした。


 だけど、俺も体力的に限界が来ていたので、ただ下敷きになっただけだった。


「ぐはっ!!」


 腹に、勢いよくルークの頭突きが入る。


 しばらく地面の上をゴロゴロしながら、痛みに悶えて、立ち上がった。


「クッソ……こいつめっちゃいい顔で寝てやがる」


 気絶したルークの表情を見て、俺は微笑んだ。

 

 まあ……これで、長い夜の戦いは終わったか……。

 なんだか、心の底がすっきりしたような気もするし、まだ晴れない気持ちがあるような気もする。


 なんとも言葉で言い表せないような感情が俺を覆っていた。


 俺は、地面で気持ちよく気絶するルークを持ち上げて、森の中をゆっくりと歩き始めた。

 悪魔に負わされた傷が、体中で痛んでいる。

 それでも、自分の家の方へと向かう。


「帰ろう……きっとみんなが待ってるぜ……」


 乾いた笑いが漏れる。

 

 頭の中で、親父やお袋、じじいの顔が浮かぶ。

 みんなって誰だよ……。


 俺にはもう、家族はいない。

 みんな死んでしまった。そんな孤独な俺を、誰が待っているというのだろうか。


 視界が揺れていた。

 波のように、ゆらゆらとしていた。

 気づけば、俺は涙を流していた。


「なんで……なんで、俺は泣いてるんだよ……」


 親父が死んだ時も、お袋が国を追放された時も、俺は涙を流さなかった。

 それなのにどうして、今、泣いているのだろうか。


 ぽろぽろと頬を伝って、地面へと落ちていく雫を見つめた。


「あぁ……そうか……」


 足を止めて、夜空を見上げる。

 

 どうして、俺が泣いているのかわかった。

 答えは単純で、明確だ。


 俺は今、初めて家族を失うということが、悲しいことだと自覚したのだ。


 今まで、勝手に死んで、勝手に消えていく家族に怒りを感じていた。

 だけど、誰かに必要とされて気づいた。

 俺は、家族にもっと愛されていたかっただけの、ただの我儘な人間だった。


 答えがわかり、涙が決壊したように溢れてくる。


「もっと、親父やお袋、じじいと一緒に暮らしていたかった……」


 心の内に秘めていた言葉が、次々と出てくる。


「もっと、声を聞きたかった。もっと、家族で笑っていたかった。もっと、抱きしめてほしかった。もっと、もっと、もっと……」


 腕で涙を拭い。空に向かって、言葉を紡ぐ。


「――――生きて、今も笑って生きてほしかった」


 空虚に消えていく言葉の数々は、もう誰にも届かない。

 俺はそれを知っている。

 だけど、心の内を言わずにはいられなかった。

 

 ☾ ☾ ☾ ☾


 気づけば、俺はピスタニア王国の街の中を歩いていた。

 ふらふらとした足取りでゆっくりと、石畳の上を進む。


 商業区画を抜けて、居住区画を通っていく。

 そして、ようやく王宮区画に入る。


 ティアラはフィストを見つけて、城へと連れて行っている頃だろうか。

 

 俺は、頭の中でぼーっとそんなことを考えていた。

 すると、静かな街中から、声が響いてきた。


「グラット! ルーク!」


 石畳を見ていた視線はゆっくりと上げられ、声の正体を見つける。

 背中にフィストを背負ったティアラが手を振っていた。


 近づくと、ティアラは心配そうに聞いてきた。


「悪魔は倒しましたか? 兵器は取り返しましたか? ルークは大丈夫ですか?」


「いっぺんに聞かれても……」


 ティアラの質問の数々に、パンクしながら、ゆっくりと答える。


「悪魔は倒した。兵器も取り返した」


 ポケットの中にしまった白い球体を取り出し、ティアラに見せる。

 紫色の線が光る。


「これか?」


「そうです。これです」


「で、ルークは悪魔との戦いで気絶してる。傷はひどいが生きてるよ」


「はあ、良かった。グラットも大丈夫ですか?」


「あぁ……俺も平気だよ。体中痛いけどな」


 そう言うと、ティアラは安心したような表情で、息を吐いた。


「フィストも、気絶してるけど大丈夫だと思います」


 言って、ティアラは気絶したフィストを背負い直した。

 よいしょと言って、俺の方に振り向き、笑う。


「だったら、城に帰りましょう」


「そうだな……」


 俺の居場所は今、あのぼろくて居心地のいい工房じゃなくて、こっちなのかもしれないな。


「じじいを墓に埋めないとな……」


 気づけば、俺は明日やることを考えていた。

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