35話 とんがり帽子の魔法使い 対 影の悪魔 前編
「どうして、我の位置がわかったんだ」
荒い息を吐き、手負いの悪魔は僕に問う。
僕を睨む赤い瞳は、より一層鋭くなる。
「人間に、魔力の気配を追いかける能力はないはずだ。我の位置がわかるはずないだろ」
「僕には耳がよくなる特殊魔法があるんだ。それで、探したら簡単さ」
もっと言えば、ティアラが心臓部に矢を当てたと教えてくれたから、心臓の音と呼吸の荒さで、どれが逃げている悪魔なのかわかった。
悪魔は混乱していた。
それ以上に、その言動からは、僕たちを見下しているように感じた。
「そうか……そうなのか……そういうことか! 弱いくせに、さっきから人間はずっと我の邪魔ばかりしやがって! そんなに死にたいか!」
鋭い爪で、自分の顔を引っ掻いている。
悪魔の中で、積もりに積もった怒りが爆発したようだった。
「わかったよ。この国を滅ぼす前に、まずはお前からだ。お前からぶっ殺してやるよ。そしたら、あいつらと……」
森の中の影が、悪魔の動きによって反応する。
どうやら、この暗闇がすべて、悪魔の能力らしい。
影を操る能力か……ちょっと骨が折れそうだな。
「貴様……すでに、魔力が少ないな。そんなんで我に勝てるのか?」
見抜かれている。魔法を吸収する悪魔との戦闘もあり、僕の中に残された魔力は、残り僅かしかないだろう。
それでも、立ち向かわなければいけない。信じてくれている仲間が――――好きな人がいるから。
「ちょっと厄介な悪魔と戦った後だが、大丈夫さ。僕は一人じゃないから!」
「それは……」
目が大きく開き、赤い瞳が揺れた。
すぐに、悪魔の表情は戻り、叫ぶ。
「そんな甘いこと、いつまで言ってられるかなぁぁぁぁ!」
悪魔から感情の綻びが見えた気がした。
仲間がやられたことに察したのだろうか……。
悪魔にも、仲間意識があるのだろうか……。
そんな、考えが浮かんだところで、思考を止める。
剣の柄を強く握り、悪魔の動きを窺う。
周りの影が、僕を囲うように動く。
そして、影の中からたくさんの銀色に光る剣が出てきた。
「これから、貴様は串刺しになって死ぬ! そして、我がこの世界で最強の悪魔になるのだ!」
「させない。絶対にさせない。お前の目的がなんだろうが、僕たちは負けない」
なぜなら、僕は……いや、僕たちはみんなで戦っているんだ。
ここまで、この悪魔を追い詰められたのは、仲間のおかげだ。
繋いでくれた仲間がいるから、僕がどんなに魔力が少なくても、体力がなくても、勝たなきゃならない。
みんなとこの先の旅を笑顔で続けられるように、僕は戦う。
「ふう……やるぞ……」
僕は深呼吸をして、悪魔を捉える。
そんな僕の圧に、悪魔は気圧されるが、声を荒げる。
「我を殺せるなら、やってみろよ! 雑魚人間がぁぁぁ!」




