33話 少女は夜空に向かって、希望の光を放つ
私は、全力で階段を駆け上り、地下から飛び出す。
グラディオおじいさんの亡骸の横を通り抜けて、私は物で散らかった工房内を動き回る。
この建物には、上がある。
どこから、行けば……。
工房内の二階に上がり、一つ一つ扉を開けて、中を確認する。
寝室や食卓が、扉の向こうにはある。
ここで、グラットやグラディオおじいさんは、生活していたんだ。
なんだか、そんな情景が想像できて、胸が苦しくなる。
そして、最後に廊下の奥の扉を開くと外に設置された階段を発見した。
階段を登りながら、夜空を見上げる。
星が瞬き、月が優しい光で私を照らしていた。
「あぁ……私は、弱いな……」
奴隷だった過去を乗り越えても、私は弱い。
誰かに助けてもらわないと、何もできない。
私が、弱いからグラディオおじいさんは殺されてしまった。
もっと早く、駆けつけていれば、助かったかもしれないのに……。
グラディオおじいさんが殺された怒りよりも、自分の不甲斐なさに怒りが湧く。
グラットから離れ、一人になると自然と目が熱くなった。
泣いちゃダメだ。
まだ、戦いは終わってない。
グラディオおじいさんを殺し、この国の未来へ繋ぐ兵器を取り返さない限り、終わらない。
階段を登り切り、涙を拭い、私は月を睨む。
影に、隠れて逃げ切ろうとしているのかもしれないけど、そうはさせない。
この国の未来のために、何よりも、ここまで繋いできてくれたルークやフィスト、グラットのために、諦めない。
そう決意し、月に手を伸ばした。
体の内側から熱を感じる。
その熱は徐々に全身に広がり、月のような淡い光が私を包み始める。
魔力が体を巡り、力が湧いてくる。
私は空に向かって、弓を構え、頭の中で矢を想像する。
すると、私の魔力が弓に流れ、黄色い光を放つ矢を作った。
私は、一人じゃ何もできない。
誰かに助けられて、ここまで歩いてきた。
だから、今日も助けを求めたい。
私は空へと黄色い光の矢を放つ。
綺麗な弧を描き、光を放って空へ飛んでいく。
そして、その矢の飛んだ方に向かって、叫ぶ。
「ルーク! 助けて! 兵器を持って、悪魔が逃げた! だから、追いかけて!」
ルークは、僕を信じてと言っていた。それは、ルークが私を信頼しているからの言葉だ。
だったら、私も言われた通り、ルークを信じる。
魔法が効かない悪魔だって、ルークならもう倒しているはず。
だから、必ず助けてくれる。
私は、何度も空に向かって矢を放ち、叫び続ける。
すると、空に一つの光が上った。
迷子になった時のように、叫べばすぐに助けてくれる魔法使いの姿が脳裏に浮かんだ。
あれは……ルークだ!
魔法を使って、悪魔を探している。
私もそれに答えるように、様々な方向に光の矢を放ち、街を照らす。
悪魔の能力的に、光があれば隠れる場所はない。
だから、動き回って逃げ道を探すはずだ。
そうすれば、必ずルークが見つけてくれる。
私は、心からルークを信じて、矢を放ち続けた。




