↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
67/75

32話 銃使いの男と少女 対 影の悪魔 3

 突如として、俺とティアラを囲うように、影が襲いかかってくる。


「それじゃ、ティアラ任せたぞ」


「――――うん!」


 俺とティアラは二手に分かれる。

 悪魔の攻撃を分散させるためじゃない。


 単純に、ティアラが考えた作戦の役割があるからだ。


 そして、俺の役目は悪魔の気を引くことだ。


「おい! ガキ悪魔! こっちを見ろ! 俺はまだお前に殺されてないぞ!」


「あぁぁぁん? なら、殺してやるよ」


 やっぱりそうだ。

 あいつは、誰よりもプライドが高くて、すぐに頭に血が上るタイプだ。

 

 後ろへと下がるティアラに伸びていた黒い影が、次の瞬間、俺を狙い始めた。


 この量の攻撃、俺に捌けるか……。


「ふっ……」


「何を笑っているのだ?」


「ちょっとばかし、今の状況がおかしく思えただけさ」


「そうか……我も、貴様が死ぬ瞬間を見れることがとても嬉しいぞ! ギャハハハ!」


「そうかい……」


 ――――やれるな。


 今までにないぐらい、俺は冷静だった。

 攻撃がどこから飛んでくるのか、はっきりと見える。


 さっきと違い、視界が広く感じた。


 左の方から黒い影の刃が、飛んでくる。

 俺は、一歩後ろに下がって躱す。

 次に背後から、同じような刃が迫ってきていた。


 ――――まだ、行ける。


 俺は、わざと地面に仰向けで倒れる。

 悪魔の予測が外れたのか、俺の顔をすれすれに影の刃が通過していく。


「おい、それで全部躱したと思ったのか?」


 仰向けに倒れた俺が、素早く起き上がろうとしたその時、悪魔の笑い声が聞こえた。


「貴様はもう、逃げ道はないぞ」


 気づけば、俺は影の刃に囲まれていた。

 

 今、俺に向かって飛んできた刃は二本だけ、残りは全部、このために残してたのか。

 つまり、影は悪魔の予測で動いている。

 軌道を先に決めて、曲げたり動かすのは直前だから、真っ直ぐにしか飛んでこない。

 

 それが、わかったところで、これは躱せないんだが……。


 だけど――――


「じゃあ、死ね人間」


 悪魔が呟き、手で攻撃の合図をする。

 四方八方を囲む、影は真っ直ぐに俺の方に飛んでくる。


 そんな時だった。


 一つの小さな火が俺の前に落ちてきた。


「グラット! 見つけた!」


 ティアラの声に俺は、笑みを浮かべる。


「悪魔、どうやら俺はまだ、死なないようだぜ」


 小さな火の明かりが、俺を照らす。

 すると、真っ黒だった影が薄くなる。

 影の刃は、小さな火を目の前に、消えていく。


「な、なんだと……」


 赤い瞳を丸めて、悪魔は言葉を呟く。

 

 悪魔の能力の正体は簡単だ。

 ただの影と影の中にある空間を操っているのだ。


 それに、気づいたのはティアラだった。


 どうやら、俺がスタングレネードを使った時、一瞬、影が消えた瞬間を見たのだ。

 そこで、ティアラは能力の弱点に気が付いた。


 最初の作戦では、スタングレネードを使う予定だったが、それだと俺らも巻き込まれてしまう。だから俺は一つ提案した。


 それが、この小さな棒についた火である。


 影の攻撃から、この小さな明かりが、盾のように守ってくれている。


 これは頭薬が木の棒の先に付いた道具だ。摩擦で簡単に火がつく。

 この国から生まれた文明の一つである。


「グラット大丈夫ですか!」


 ティアラが急いで、近づいてくる。

 俺は苦笑いを浮かべて、答えた。


「あと少しでやばかったが、大丈夫だ」


「そっか、それならよかった」


「別によくはないよ。死にかけたし」


「貴様ら……」


 俺とティアラが、話していると、悪魔が怒り狂ったような顔でこちらを見ていた。


「絶対、殺す……殺す……殺す!」


 さっきの俺のように、殺すを何度も呟く悪魔。


 そんな悪魔に向かって、俺はいつも通りの軽口のつもりで言った。


「もう、お前じゃ俺たちは殺せないぜ」


 そう言いながら、俺は魔法で松明を出す。


 俺の魔法は武器を出すだけじゃない。周りの道具も出せるのだ。


 この能力が使いこなせるようになって、初めて触れた火付け棒もまた、魔法で出す。


 そして、近くの壁で棒の先を擦り火をつけた。

 その火を、片手に持った松明につけて、周りを照らす。


「ティアラ、準備はいいか?」


「いつでも大丈夫です。外しません」


 隣で悪魔に向かって、ティアラが弓を構える。


 確認した後、俺は松明を真上に向かって放り投げる。

 真っ暗だった地下室が、ぱっと明るくなる。

 

 すると、悪魔が纏っていたであろう影の鎧が、透けて、中が見えてくる。

 中には、もう一人の悪魔がいた。


 同じ見た目をした分身を、自分の体に纏っていたのか。

 

「なんだ……!?」


 悪魔の視線が、宙に舞う松明の方を向いている。

 

 気が、明かりの方にいってる間に、ティアラは矢を放つ。


 真っ直ぐとティアラの矢は、悪魔の胸に突き刺さる。


「――――がはッ!?」


「俺の……いや、俺たちの勝ちだ」


 松明は床に転がる。

 素早くティアラが魔法で火を消した。

 すぐに消さないと、周りに広がってしまうからだ。


 俺は、火付け棒に火を灯して、ゆっくりと悪魔に近づく。


「それじゃ、兵器を返してもらおうか。それは、俺の家族の物だ」


「まだ……まだ……まだ……」


 白い球体を握りしめて、悪魔は唇を強く噛み締めて、呟いている。


「我は……我は、悪魔の王になるんだ……だから、まだ、まだ、まだぁぁぁぁ!」


 悪魔が叫ぶのと同時に、影が周りの物を掴む。


「まだ、我は死んでたまるかぁぁぁ!」


 持ち上げられた数多くの物体が、俺とティアラに向かって放り投げられる。

 すぐに、頭を守り、俺はティアラの方に駆ける。


 体で、ティアラを投げられる物から守る。


 腕に背中に、雨のように落ちてくる物が、ぶつかる。

 

 地下室には、物が落ちる音がたくさん響き、ぴたりと止まった。

 

「はあ……はあ……大丈夫か……ティアラ」


「私は大丈夫です。そんなことより、グラット、あなたが」


「俺も、大丈夫だ……。頭は守ったからな……」


 俺は、笑ってみせる。

 被っていた帽子がぼろぼろになっていた。


「はあ、はあ……そんなことより、あの悪魔はどうした?」


「逃げてしまいました」


「そうか……兵器が持ってかれたか……」


 あれは、作っちゃダメなやつだ。

 未だに、なぜじじいが兵器を完成させたのかわからない。


 でも、あれは……。


 親父の言葉が脳裏で蘇る。


 ――――これはな! 俺たち家族がこれからも幸せに生きていくために必要な、武器なんだぜ!


 あの言葉は、多分、王から完成させれば、大量の硬貨を貰う約束をしていたのかもしれない。

 だけど、子供の俺にとっては、この先の未来を明るく想像できる言葉だった。


「グラット、諦めてるんですか?」


 ぼろぼろの俺をティアラが見上げていた。


「だって、逃げたらもう……」


「安心してください。私が取り返しに行きます」


 ティアラは、真剣な眼差しで、真っ直ぐに言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。