30話 銃使いの男と少女 対 影の悪魔 1
「殺す……殺す……殺す……殺す」
階段を一段一段下るたびに、俺は唱えるように呟く。
そんな俺に対して、ティアラは何も言わない。
もしかしたら、すでに俺という人間を見透かしているのかもしれない。
徐々に自分自身が闇の中へと沈んでいくような感じがする。
俺は、このままどこに行ってしまうのだろうか……。
ふと、そんなことを考えた時、暗闇の中で悪魔の背中が見えた。
反射的に銃を構えて、二発撃った。
二発の銃弾が、悪魔の顔を貫通した。
顔を貫通した穴はすぐに修復し、悪魔は俺の方を振り返った。
「あぁぁん? 誰だ貴様」
「俺は、お前を殺す者だ……」
真っ暗闇の地下で、悪魔の持つ兵器の光を頼りに銃を構える。
普段なら、この地下には壁に設置された蠟燭の明かりがあった。
「お前は、我を殺すというのか? ギャハハハ!」
「なら、やってやるよ……ぶっ殺してやる」
けど、今はそれを準備する余裕はなさそうだ。
引き金を引き、次は胸、足、手と狙いを定める。
――――パン、パンと銃声が響く。
やはり、銃弾が顔を貫通しているのに、効いている様子はない。
さっきの悪魔は、足を撃てば動きを止めることもできたが、この悪魔にはそれも通用しない。
「銃なんて我には、効かないぞ?」
余裕の表情を浮かべ、悪魔は笑っている。
その姿に、より怒りが湧いてくる。
「それでは、我の番だ」
暗闇の中で、何かが動いている。
周りの物を落としたり、壊したりして、俺の方に近づいてきている。
「なんだ……?」
四方八方に視線を向けるが、何が近づいてきているのかわからない。
その場を動けずにいると、突然、足が何かに掴まれる。
「いいか? 我の力はお前ごときに、負けない」
すると、掴まれた足が急に引っ張られる。
俺の体を軽々と引きずり始める。
「――――グラット!」
ティアラの叫びが聞こえた。
だが、それに反応している余裕はない。
地面に、壁に、何度も叩きつけられながら、俺の体は引きずられるように振り回される。
視界がぐるぐると回り、体が地面や壁に打ち付けられる。
どうにか、頭の衝撃を弱めるために、腕で守る。
このままじゃ、死ぬな……。
脳裏には、この世界に受けてきた、たくさんの怒りが浮かび上がってくる。
まだ、ダメだ……。
俺は、暗闇の中でもはっきりと見える悪魔の赤い眼光を睨む。
絶対に、あいつだけは俺が殺す。
振り回される中、俺は力を振り絞り、魔法を発動した。
「ティアラ! 目と耳を閉じろ!」
暗闇に向かって、俺は叫ぶ。
俺も、同時に目と耳を塞ぐ。
その時、大きな音とともに瞼を閉じていても感じるほどの閃光が走る。
「な、なんだ! この光と音は!」
すると、掴まれた足が放され、放り投げられる。
頭を守り、地面に転がった。
俺は、すぐに立ち上がり、ふらついた足取りで、悪魔に近づく。
魔法で銃を作り、その場で頭と目を押さえる悪魔を蹴り倒し、俺はその上に跨った。
銃口を顔に向けて、俺は言った。
「死ね。くそ野郎」
だが、銃口を目の前にしても、悪魔は怯えるわけもなく、笑っていた。
「ギャハハハ! それで、我を殺せると思っているのか? 甘いねぇぇぇ!」
「うるせぇぇぇぇ!」
そうして、俺は悪魔の顔に向かって、銃を連射した。
顔の形がわからなくなるまで、銃を連射し続ける。
弾を魔法で作り、装填しては、何度も何度も、撃ち続けた。
「グラット、危ない!」
「は?」
声の方に視線を向けると、ティアラが、俺に向かって飛んできていた。
気づけば、俺の背後には真っ暗な刃が突き立てられていた。
「死ぬのはお前だ。人間」




