28話 とんがり帽子の魔法使い 対 吸収の悪魔 3
「よし、決着はついた。シャグラット様に合流しよう」
「何を言ってるんだ?」
「――――は!?」
悪魔が振り向こうとした瞬間、僕は引き金を引く。
――――パンと乾いた音が響く。
片手で持った銃を撃った。
狙いは胸の辺りだったが、銃の反動でズレてしまい、コウモリのような羽の膜の部分を貫通した。
「銃って使いにくいな。グラットはいつもこんなのを使っているのか」
「貴様、撃ったな――――ん!?」
体が痺れているのだろうか、悪魔は羽を硬直させた。
銃で撃たれていない方の羽を動かし、ゆっくりと降下していく。
僕もゆっくりと、それに合わせて石畳の上に着地する。
「何をした貴様!」
「知ってるか? この国の銃は魔力を込められるって」
「どういうことだ? 魔力なんて一切感じなかった」
「僕は銃の弾に魔力を込めてから撃ったんだ。魔力なんて感じるはずない」
僕は、あらかじめ雷の魔法を銃弾に付与したのだ。
だから、羽が痺れたのは僕が大量に流した魔法の力によるものだ。
念のため、たくさん流しといてよかった。
ちょっと貫通しただけで、羽が動かせなくなるとは、驚いた。
さっきと違い、痺れに魔力の力が残っているわけでもないから、悪魔は力を吸えないはずだ。
「それじゃあ、決着をつけようか」
僕は銃をその場に落として、まるで剣士のように、腰に差した剣を鞘から抜いた。
剣先を悪魔に向ける。
久しぶりだな、この感じ……。
昔はよく遊びで振っていた木の枝とは違い、握るとしっかり重みを感じることができる。
昔は剣士を目指していたけど、今は魔法使いだ。
だから、剣を握った魔法使い。
つまり、魔法剣士だ。
「魔法使いが剣を使えるわけがない」
「それは、どうかな」
僕は悪魔の言葉に、笑みを浮かべて返す。
魔法使いだからと言って、僕は別に長距離で魔法を放つだけじゃない。
近距離でも、戦える魔法使いなんだ。
「行くよ……悪魔」
僕は地を蹴るように、足から炎の魔法を出し、飛ぶ。
地面にすれすれな位置から、一直線に悪魔に向かう。
同じく剣にも、炎の魔法を付与した。
この剣も、魔法使いのために作られているのだ。
片手で剣を横に薙ぐ。
炎の波が宙を舞って、散っていく。
「くっ……!」
間一髪で羽の痺れが治ったのか、空へと悪魔は上昇し躱す。
すぐに、僕はそれに反応し、体の向きを上に向けて悪魔に向かって一直線に上昇する。
「逃がさないよ」
もう一度、剣を構える。
次はさっきよりも柄に力を入れる。
空へと上昇する速さは、明らかにこちらの方が速い。
力を込めて、僕は横に薙ぐ。
悪魔は、躱そうと反応するが遅い。
胴体の部分は避けられるが、片方の羽を焼き斬った。
悪魔とすれ違い、雲一つない空には月が静かに見下ろしていた。
月を見ると、脳裏でティアラの笑顔が浮かぶ。
信じてるよティアラ、君ならきっと大丈夫。
ビスタリア大森国で悪魔と戦った時、君は強かった。
だから、今回も信じているよ。
――――この悪魔を倒して、すぐに助けに向かう。
だから、それまで耐えてくれ。
僕は旋回して、体の向きを下に向ける。
羽を斬られて、落ちていく悪魔に向かって、宙を蹴る。
下に向かって、僕は悪魔の胸の辺りを剣で突き刺す。
「貴様あああああ!」
「悪魔の心臓はここだろ」
今まで、悪魔に弱点はないと思っていたが、しっかりあるじゃないか。
僕の耳が最初から、悪魔の心音を捉えていた。
僕は悪魔と一緒に、石畳へと落ちていく。
ばっと風が舞い上がり、僕は着地した。
気づけば、悪魔は黒い靄となり消えていた。
☾ ☾ ☾ ☾
「よし、こっちの悪魔は倒した。後は……」
剣を握った女の悪魔が頭に浮かべる。
あの悪魔は確か、フィストが戦っていたはず。
僕は耳で、周りの音を確認する。
近くで戦っているような音は聞こえてこない。
僕は、すぐに辺りを探し回る。
すると、道の真ん中で倒れるフィストを見つける。
素早く近寄って、フィストの状態を確認する。
心臓は動いてる。
どうやら、気絶しているようだ。
石畳の上に転がる、真っ二つになった剣を見つける。
これはフィストの剣じゃないな。
そして同時に、鞘に収まったフィストの剣を見て、思う。
どうやら、あの悪魔も倒したようだね。
なら、後はティアラたちだけだ。
僕はフィストを道の端っこに移動させて、グラディオの工房に駆け出す。
その時だった。空に流れ星のように、きらきらと黄色の光が飛び、足を止める。
そして、耳に声が届いてきた。
――――ルーク助けて!
僕はティアラの声にすぐに動き出した。




