26話 とんがり帽子の魔法使い 対 吸収の悪魔 1
空から見たピスタニア王国は、夜でも月に照らされた色とりどりの屋根に彩られていた。
そんな屋根の上を、魔法の力で飛び回っていた
「いつまで、逃げるつもりだ」
別に逃げてるつもりは、ないのだけど……。
羽を生やし、凶暴な牙をむき出しに僕を追いかけてくるのは、悪魔である。
未だに、能力がわからない。
僕の魔法を食らっても、着ていたマントが燃えるぐらいで、無傷だ。
どういう、理屈なのだろうか。
「いくら追いかけても、きりがないな。魔法使いは近距離で戦うのがいいと思ったが、そろそろ相手にするのも面倒になってきた」
ずっと、背後を追いかけてきた悪魔の音がなくなる。
それに気づき、僕も飛び回るのをやめる。
「別に僕は、逃げてるつもりはないよ」
「そうか、でも面倒なのは変わらん。貴様から吸った魔力の力もある」
吸った魔力……。
「この魔法を躱せることはできるか?」
鋭い爪が生えた悪魔の指が僕をさした。
禍々しい紫色の光が指先に集まり、徐々に球体へ形を作っていく。
あれ……。
大きくない球体は、ただ小さいってわけじゃなく、僕には力を小さく圧縮されたように見えた。
「死ぬがいい」
悪魔がそう呟いた時、音もなく、紫色の光線が僕の頬を掠めた。
そして、背後で爆発音が響いた。
血が、口の中へと流れてきた。
なんだ、あの力は。
さらに、続けて二発目と三発目が放たれ、僕はすぐに上の方に加速する。
風を切るような音だけが、聞こえてくる。
飛行進路を変えて、回り込むように飛びながら、次々に放たれる紫の光線を躱し続ける。
僕は、光線を躱しながら、悪魔を魔法で狙いやすい位置へと動いていた。
そして、掌を悪魔に重ねる。
その瞬間、僕は炎の魔法を放つ。
――――ファイアーボール。
炎の球は、光線を放つ悪魔に直撃し、爆発する。
光線の攻撃は止まり、僕は一度爆煙を見た。
黒煙の中から、徐々に影の輪郭を作っていく。
そうして、中から悪魔は無傷で飛んでいた。
どうやら、片手で僕の魔法を抑えたらしい。
「こんな、魔法じゃ効かない」
「まあ、そうだよね」
僕は、苦い気持ちを噛みしめて、笑みを浮かべる。
この感じじゃ、魔法は効かないのか。
相性が悪すぎる。
その時、僕はあることに気づく。
僕の魔法を受けた悪魔の手が、黒く焦げていた。
魔法は効かないはずじゃなかったのか……。
顎に手を置き、思考する。
「考える暇はない」
思考の邪魔をするように、紫の光線がまた僕に向かって飛んでくる。
攻撃に気づき、僕は素早く躱すために、動く。
爆発音が何度も響き、爆風がとんがり帽子を揺らした
魔法は効かないのに、僕の魔法を食らった跡が手に残っている。
そして、悪魔は言った。魔力を吸っていると……。
頭の中でたくさんの可能性が浮かび、やがて一つの答えにたどり着いた。
「そういうことか……」
悪魔の力の正体にようやく、気づく。
確信はない。だけど、これから僕がする作戦が通用するなら、確定する。
魔法が効かないって、言ってられるのも今の内だぞ。
ここから、形勢逆転だ。




