23話 猫耳少女 対 剣士の悪魔 1
体が重い……。
私は、何をされた?
体中に激痛が走っている。
ゆっくりと起き上がろうと動き出す。
体にのしかかる瓦礫の下から、無理やり立ち上がった。
瓦礫で頭を切ったようだ。血が額から流れて、視界が真っ赤になっていた。
そんな視界の中で、ティアラとグラットが女の悪魔と戦っていた。
「わ、私にも何か……」
落ちた剣を拾い、私も戦おうとした。
けど、足が動かなかった。
傷もない。
足を斬られて、なくなったわけでもない。
それなのに、どうして……?
「はあ、はあ……」
息が上がって、足が震えていた。
そうか……私は、恐怖している。
あの鋭く、純粋な殺意がこもった赤い瞳が怖い。
あの悪魔の圧倒的力から繰り出される一振りが怖い。
私をここまで蹴り飛ばした悪魔の身体能力が怖い。
私じゃ、あんな敵に勝てるわけがない。
力もなく、ティアラのような勇気もない。
そんな私が、戦っても負けるだけだ。
だから……私は……。
――――いつも、ダメなんだ。
その時、目の前ではティアラが矢を放ち悪魔の足を刺していた
どうして、ティアラはいつも恐怖を感じずに戦えるの?
私は、怖くて一人じゃ動けないのに……。
足の震えだけではなく、剣を握る手も震えていた。
そんな時、私はいつかのティアラを思い出す。
私の国を取り戻すために戦ってくれたティアラは、戦う前、私と同じように震えていた。
それでも、笑って、私の背中を押してくれた。
「一緒なんだ……」
ティアラも私と同じように、恐怖心を持っている。
それでも、何かのために戦ってるんだ。
だったら、私だって戦う。
誰かのためにじゃなくていい。恐怖の底にいた私に手を伸ばしてくれたティアラのために、私は動く。
戦う理由は、それだけでいい。
だって、ティアラは私の大切な友達で、旅仲間だから!
ティアラとグラットが悪魔の横を通って、大通りを走り抜けていく。
その時、上から雷が悪魔を直撃した。
ルークが別の悪魔と戦いながら放った魔法のようだ。
その魔法によって、女の悪魔は動きが止まる。
「ティアラ、先へ行け!」
ルークの叫び声が、響いた。
そんな声に、私は安心する。
「なんで……私、安心してるんだろ……」
みんな戦ってるのに、どうして、私はいつもダメなんだろう。
目の奥が熱くなっていくような気がした。
あまりにも弱い自分に、嫌気がさす。
その時だった。全身が震えるような感覚に襲われる。
ふと、動かなくなったはずの悪魔を見た。
すると、ぴくりと手が動いた。
今の攻撃を受けても、まだ、動くの。
地面に膝をついていた悪魔は徐々に立ち上がり、また剣を握ってティアラの方を睨んでいた。
ティアラを狙っている。
私は反射的に、剣を握り直し動こうとする。
だけど、足はまだ震えてる。
「どうして、動かないの!」
必死に動こうとするが、足が言うことを聞かない。
どうして、どうして、どうして!
早くしないと、ティアラがやられてしまう。
私は、何にそんな恐怖をしているの?
そうか……私は、敗北を恐れている。
負けたら、死んでしまう。そんな恐怖がいつも私に纏わりついている。
いつも、お父様が剣を教える時に、敗北は死であると教わっていたからだ。
だけど、今はそんなこと言ってられない。
目の前で、仲間が、友達が、ピンチなんだ!
「動けぇぇぇぇ!」
その時、私は強く地面を踏み切った。
さっきまで動かなかった足が、嘘のように動く。
自分でも感じたことのない速さで動いていた。
敵の動きがゆっくりと見える。
なんだろうこれ?
とても不思議な感覚だ。
剣を横薙ぎで、悪魔はティアラとグラットを同時に斬ろうとしていた。
私は回り込むように、走るティアラと剣を振る悪魔の間に入った。
両手で剣を握りしめ、横から流れるように振られた剣を私は止めた。
金属の鋭い音が鳴り響いた。
悪魔の剣を止めながら、私は叫ぶように言った。
「させない!」
私は、目の前の圧倒的力を持った悪魔を睨んだ。
「フィスト!」
「ティアラ、こいつは私が何とかするから、先に行って!」
「うん!」
背中でティアラが頷いた。
私を信じているようなティアラの声に、勇気をもらった。
大丈夫、この悪魔は私が絶対に倒して勝利する。
怖くないと言えば嘘になる。
だけど、今は怖いけど怖くない!
「はあああああ!」
強く押される剣を押し返す。
私の力によって、悪魔は弾かれ、後ろに飛ばされる。
空中で後転して体勢を立て直し、着地した。
「私の剣を押し返しましたか。なかなか、やるようで」
「さっきと同じようには、ならない。必ずお前に勝つ」
剣身を悪魔に向けて、私は言い放った。
「やれるものなら、やってみなさい。へなちょこ獣人剣士さん」




