20話 少女たちは悪魔と戦う
ルークは、剣身をこちらに向ける女の悪魔と距離を取り様子をうかがっている悪魔に、両手の掌を向ける。
いつでも魔法を放つ準備ができているようだ。
グラットも、魔法で銃を出し、女の悪魔に銃口を向けた。
私も、今日作って貰った弓を構える。
矢の数が十本、足りるだろうか……。
「それでは、行きます」
呟くように小さな声だが、ここにいる全員が聞こえた。
次の瞬間、女の悪魔は砂塵を巻き上げながら地面を蹴った。
踏み込みの瞬間を捉えられなかった。
気づけば、敵は私の目の前で剣を横薙ぎに振ろうとしていた。
「ティアラ!」
ルークの叫びが街に響く。
その刹那、私は少しでも後ろに下がろうと一歩動こうとする。
同時に、横薙ぎに振られた剣と私が握る弓がぶつかる。
――――キンッと音が鳴る。
私は、敵の力に耐えきれず、後ろに押し飛ばされる。
なんとか力を後ろに逃がしたおかげで、私は地面に足を滑らせ、建物の壁の前で止まることができた。
「はあ……」
上がった息を整えようとするが、敵はすぐさま追撃してくる。
つ、次はまずい。
そう思った時、銃声が二発響く。
すると、私に向いていた体の方向が、一瞬でグラットの方を向いた。
とんでもない速さで、剣を振った。一回火花が散る。
もう一発は、女の悪魔の足を貫通していた。
銃弾が貫通した穴が足に開いているのに、血は流れない。
「まじかよ……」
グラットが苦虫を噛むような表情を浮かべた。
なぜなら、穴が開いた悪魔の足がみるみる治っていくのだ。
「その程度のへっぽこな攻撃、私に効きませんよ」
この悪魔を倒して、どうやって工房に行けば……。
私がそんな思考をしていると、次にルークと向き合っていた悪魔が静かに動き出す。
私はそれに気づき、叫ぶ。
「ルーク!」
焦る私と裏腹にルークは落ち着いたように、対応する。
私を安心させるためかこっちに、笑みを向ける余裕すらある。
「ティアラ、大丈夫。わかってるよ」
黒いマントの中から鋭い爪が光った。
爪の先が、ルークの顔を狙っていた。
その時、ルークは足から魔法を発動し、空へと飛び、敵の攻撃を躱す。
さらに、掌を真下に向け、敵へと魔法を放つ。
魔法陣が浮かび、そこから、炎の魔法ファイヤーボールが放たれる。
魔法は敵に直撃し、爆発する。
「……やったか」
爆煙が舞う。しばらくすると、その中から影が見えてくる。
「こんな攻撃で、倒せたと思ったか?」
「そんな簡単にいかないか……」
ルークは苦笑いを浮かべた。
その理由は、倒せていないからではないだろう。ルークが苦笑いを浮かべているのは、攻撃が直撃したのに、ほぼ無傷というところに驚いているのだ。
「これは、厄介な敵だな」
「貴様の魔法なんて、通用しない」
マントは焼き消えて、姿を見せる。
鋭く長い爪に、細身の肢体に、口からは鋭い牙が伸びていた。
「魔法使い、空にいれば安全だと思ったか?」
不敵な笑みを浮かべて、ルークを睨んだ。
すると、背中の服が破れ、黒い羽が生えてくる。
「行くぞ、魔法使い」
風塵を舞い上げて、悪魔は一直線にルークに向かって飛来する。
すぐさま、壁を蹴るように体の向きを横にして、悪魔の攻撃を避けた。
「不意打ちだと思ったんだがな。やるな、魔法使い」
「そちらこそ、飛んでくるなんて思いもよらなかったよ」
空を飛び魔法の攻撃すら通用しない悪魔に、目に見えぬ速さで追撃してくる剣を握った悪魔。
二人の悪魔の圧倒的な力の前に、私は思考をやめてしまう。
こんな奴ら、どうやって倒せば……。
私じゃ足手まといでしかないし、ルークは一人の悪魔に苦戦してるし、グラットもさっきからずっと女の悪魔がこっちに注意を引かないように戦っている。
フィストも気絶しているのか、動かない。
二人の悪魔を倒す方法が全く見当たらず、圧倒的強さの前に、私は絶望した。
このままじゃ……間に合わない。




