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19話 少女たちは悪魔と対峙する

 私たちは、静かに城を抜けてグラディオおじいさんの工房に向かって走った。


「おい! ちょっと待て!」


 少し走ったところで、グラットが肩を上下にして足を止めた。

 ぜえぜえと荒い呼吸をするグラット。


「今から、どこに向かうんだ?」


 無理やり部屋からグラットを引っ張ってきて、まだ、訳を説明していなかった。

 私たちは一旦、足を止めるが、ここで話している余裕はない。

 

 だから、私はグラットに焦りつつも、落ち着いて言った。


「今から、グラディオおじいさんの工房に行きます。訳は走りながら説明します」


 そう言うと、グラットは私たちの顔を一人一人見ていき、頭をかいて気まずそうに返す。


「お、おう。わかったよ」


 あまりにも私たちが真剣だったからか、グラットは大人しく走り出した。


 そして、私たちはグラットに事情を説明しながら、工房に行くための大通りを突っ切っていく。


 ある程度の説明を終えた頃、グラットの表情は普段見ないような、真剣な表情に変わっていた。


 グラディオおじいさんが危ないと知ったからだろうか。


「それなら、この先に近道がある。そこを抜けよう」


 グラッドは、眉をひそめて、真っ直ぐ前しか見ていない。

 その姿を見るだけで、どれだけグラッドが今、真剣なのか分かった。


 私は、わかりましたとだけ頷いた。

 

「そこの貴様ら止まれ」


 突然、道の真ん中に黒いマントに身を包んだ男に足を止められる。


「こっちは急いでるんだ。道を塞がないでくれ」


 ルークが前に出て、必死にそう伝えると黒服の男はこちらを睨んだ。

 

 赤い眼光がこちらを鋭く捉える。


「どこに向かって急いでいるんだ?」


「工房だ」


「どこの、工房だ?」


「グラディオっていう老人が営んでる工房だよ」


「そうか……ヴェレット好きなようにやってしまえ」


 男が呟いた時だった。


 私の前を進んでいたフィストが、何かを察知した。


 猫耳がピクリと動く。


 剣を鞘から抜いて、ルークの方に素早く移動した。

 その瞬間、剣と剣がぶつかる音が響く。


「私の攻撃に反応したか」


「見え見えの奇襲に意味はない」


 どこから現れたのかわからない、黒いマントに身を包んだ女の剣をフィストが受け止める。

 

「獣人か、面白い。だが、あなたは私に生物として負けている」


 女はそんなことを言って、しなやかに体を動かし、剣を受け止めるフィストの脇腹に、蹴りを入れた。


「ぐは……!」


 反応が遅れたフィストは大通りを囲む建物に飛んで行った。


 建物の壁に穴が開き、砂ぼこりが舞う。

 フィストは、飴細工のように崩れた瓦礫の下だった。


「フィスト!」


 私の声に、反応がなかった。


 なんなんだこの人たち、私たちになんの……。

 まさか……この強さ……。


 私はこの二人が何者なのか、気づいてしまう。

 赤い瞳に、頭に生やした黒い角、そして圧倒的な力……。

 

「僕らになんの用があるんだ!」


 飛ばされたフィストを見て、怒りをあらわにするルークが叫ぶように言った。


 すると、男はただただ淡々と告げる。


「僕らは、シャグラット様に付く悪魔、貴様らをこれから殺す者だ」


 まさか、本当に……私の予測が当たってしまった。


「この先にある工房には通さない」


 二人の赤い瞳が、殺意を宿してこちらを睨んでいた。

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