15話 少女たちは城へ行く
「ただいまあ~!」
ルークの肩を借りて、ふらふらとした足取りでグラットが工房の中へ入ってくる。
「ど、どうしたんですか?」
一目散に私が、ルークに駆けつけた。
グラットから酒の臭いがして、鼻をつまむ。
「グラットがいきなり、酒を飲みに行こうって言うから、酒屋に行ってたんだよ」
「それは、大変でしたね……」
私は、苦笑いを浮かべた。
私が、武器が完成するの待っている間、ヘロヘロになるまで飲んでたんだ。
後から近づいてきたフィストが、ルークに話しかける。
「ルーク、一つ話があるんだけど」
「ん?」
フィストは、私に目配せする。
あ、そっか、武器のことで忘れてたけど、ピスタール王から城に泊まらないかって、招待されてたんだ。
思い出し、私は普段通りの声色で言う。
「あの、この国の王のピスタール王から城で泊まらないかって話が来てて、どうします?」
「なるほどって、てか、王に会ったの?」
驚きというよりも、疑問が多そうな顔でルークが聞き返してきた。
私とフィストは二人で、ルークがいなかった時に起きたことを話した。
もちろん、ピスタール王に他言無用と言われた兵器のことも、全部説明した。
本当は話したらダメだけど、ルークは一緒に旅をする仲間だし、他の人には話しちゃダメって言えばルークは何も言わないだろう。
「僕がいない間にそんなことがあったのか、確かに王宮区画には魔法武器って物が置いてあったり、魔石が高く売れたりしたから、不思議に思ってたけど、その説明聞くと全部が繋がったよ」
どうやら今日、ルークは王宮区画を歩き回り、一人で冒険をしていたらしい。
私が武器を待っている間、一人で楽しんで羨ましい。ずるい!
「そうだ。ティアラ、今日すごいところを見つけたから、明日一緒に行ってみよう」
「はい! 行きたいです!」
それなら、今日のことは何も言わないであげよう。
「後、その弓かっこいいね!」
「でしょ! これで魔物と戦う時、後ろから全員倒しちゃうんだから!」
「それは、すごく楽しみだよ!」
ルークに、簡単に乗せられ、私は嬉しくて、話したいことが次から次へと浮かんでくる。
そんな会話をしていると、やれやれと肩をすくめたフィストが口を開く。
「そういうのは、いいですけど、早く質問に答えてください」
「あ、忘れた……」
「私も……」
あははと照れ隠しをしながら、私は呟いた。ルークも忘れていたらしい。
「そんなすぐ、忘れないでくださいよ」
「ごめん」
「ごめんなさい」
「で、どうするんですかルーク?」
少し、感情を出して言うフィストに私とルークは同時に謝る。
そして、フィストは改めて、ルークに問う。
「そうだな……城、面白そうだし行ってみよ! 王様も話を聞いてる感じ悪い人じゃなさそうだしね」
子供のような無邪気な笑みを浮かべて、ルークは答えた。
「いこぉ~う!」
酔いながら、グラットもルークの言葉に反応した。
☾ ☾ ☾ ☾
その後、泊まるはずだった宿から荷物を持って、私たち四人は城の前に立っていた。
酔ったグラットをルークが抱えている。重くて大変そうだ。
大きな門構えの向こう側に、青いとんがり屋根と石造りの大きな建物が私たちを見下ろしていた。
本当にいいのかな。
すごく場違いな気がして、足元がすくむ。
「おい、貴様らここになんの用だ!」
びくっと肩が震えた。
怪訝な顔をした兵士が、私たちを睨む。
ルークが慌てた様子で、説明する。
「い、いや、あの、ピスタール王に招待されたというか、呼ばれたというか、なんというか……」
すると、フィストがルークの横に出てきて、びしっとした口調でフィストが言い放つ。
「ピスタール王に、招待されたので、来ました」
フィストの堂々とした佇まいに、怯えたのか、獣人族の圧力に押されたのか、兵士の人が慌てて城の方へ駆けていく。
「い、今、確認してきまーす」
「ふう……これで、大丈夫かな」
「フィストって……怖いね」
「確かに、一番怒らせたらまずいかもしれない」
私とルークがこそこそ話していると、フィストが近づいてくる。
「ティアラとルーク……」
「は、はい……」
「ど、どうしたの?」
震えながら反応すると、フィストは両手を腰に据えて、私たちを上から笑顔で見下ろしていた。
「何をコソコソ話してるのかな?」
その時、かばっとフィストは私を捕まえた。
いたずらな笑みを浮かべて、フィストは指を細かく動かかす。
「私は怒ると、我慢できないタイプなんだよね。だから……こちょこちょこちょこちょ!」
「あははははは」
脇下やわき腹をくすぐられ、私は笑い声が漏れてしまう。
「や、やめて! もう、ダメだから! はあはあ」
「ダメよ。ピスタール王が来るまでは続けるからね」
どんどん笑い疲れて、私は吐息のような小さな息で反応した。
「二人とも仲良くなったね」
ルークが私たちを眺めている。
それに気づいたフィストは拳を握り、ルークを笑顔で睨む。
「ルークは後でこれだから」
「本当にごめんよ……怖かったから……」
「あ?」
「ごめん」
ルークが申し訳なさそうにしている横で、私はぐったりとその場で倒れた。
「も、もう無理ぃ……」
「来たか! 豪勢な料理を用意してある!」
城の方から声が響いてきた。
その声の正体はすぐにピスタール王だとわかった。
フィストの指の動きが止まり、私はその場で動けずに痙攣した。
「はあはあ……」
すると、目の前にピスタール王が歩いてきて、はっきりと私たちに告げた。
「我の城に、入ってこい。旅人よ!」
門が開き、そわそわとおぼつかない足取りで私たちは城の中へと入って行った。




