14話 少女の武器完成
地下から戻って来た私とフィストは、ピスタール王を見送るために、出入口の前に立っていた。
「いいか。今日、我が話したことは他言無用で頼むぞ」
真面目な顔でピスタール王が忠告する。
この忠告も、心配性からきてるなら面白い。
私は、真面目なピスタール王とは裏腹に、笑いながら頷く。
「わかってます! 私もこの国が好きだから大丈夫です!」
「そうか……気に入ってくれて、国の王として我は嬉しいぞ」
すると、調子を乗ったように笑みを浮かべて、ピスタール王は言った。
「今日、泊まるところは決まってるか?」
そんな質問に、私とフィストは不思議になりながら答える。
「一応、昨日泊まった部屋があるので。ね、フィスト」
「そうだね。だから、困ったりはしてないです」
「そんな宿より、硬貨なしで豪勢なご飯を食べ、ふかふかな広い寝床で、寝れる場所で、泊まってみないか!」
はっきりと、大きな声でピスタール王は言う。
私たちは何か、騙されようとしているのだろうか……。
「ちなみに、その宿ってどこですか?」
恐れも知らずフィストは、聞き返す。
「国の中心地、我の城だ!」
「え、ええええ!」
私は叫び、フィストは静かに目を丸くした。
☾ ☾ ☾ ☾
ピスタール王の提案は、ルークとグラットがいないので「考えておきます」とだけ言って、一旦、頭の隅に置いた。
その後も、出かけたままのルークと出て行ったままのグラットを待ちながら、私とフィストはグラディオおじいさんが作っている私の武器の完成を待った。
どれくらい待っただろうか、空の色が気づけば茜色に染まっている。
フィストがいたから、退屈はしないけど、そろそろお腹が空いてきたな……。
ぐうっと腹の虫が鳴った。
「そろそろ、クレープが恋しくなってきた」
「昨日、あれだけ食べて、何言ってるの」
「えーだって、クレープ美味しいじゃん」
「それは、そうだけど、ティアラは食べすぎ」
そんな、お母さんみたいなことを言うフィストに、私は笑みを浮かべた。
「えへへ……」
「別に褒めてないわ。なにその反応」
「だって、なんか懐かしい気がしたから」
何年も前に、お母さんに叱られたあの頃を思い出すと、寂しい気持ちになるのと同時に、なぜか、嬉しくなるのだ。
「おい」
工房の奥からグラディオおじいさんの呼び声が聞こえた。
「は、はい」
私は突然、呼びつけられて少し驚く。
グラディオおじいさんの声、慣れないな。怖い人じゃないってわかってるけど、ちょっとびっくりしちゃう。
「武器が完成したぞ」
「え!」
その言葉だけで、一気に元気が湧いてきて、すぐに工房の奥へと向かった。
奥に行くと、すぐに視線はこれから自分の武器になる物を捉えていた。
夕日に照らされた弓は、銀色に光を反射していた。
「これじゃ、ちょっと持ってみな」
「わかりました」
弓柄を握り、持ち上げる。
鉄を使って作ったとは思えないぐらい軽い。
一度、弓の弦を引く。
私は、今ホーンラビットを目の前にしていると想像する。
狙いを定めて、私は弦を放して、弓を打つ。
ホーンラビットの弱点である心臓部に、矢が刺さり一撃で倒す。
私は、ゆっくりと目を開きグラディオおじいさんに笑顔を向けた。
「すごく使いやすいです。これなら、どんな魔物も簡単に仕留められると思います!」
「そうか、それはよかった。後その弓には、もう一つ特徴がある」
「なんですか?」
「お主は魔法を使えるのか?」
「はい。まだ、見習い中ですけど」
「そうか。その弓はな、魔法を纏った矢を放つことができるんじゃ」
「え! そうなんですか?」
「そうじゃ、その弓の持ち手の部分に魔石が入ってる。だから、魔力を流すことができるんじゃ」
私は持ち手の部分をじっと見るが、よくわからない。
お父さんが持っていた弓が丈夫そうに見えるくらいしか、わからなかった。
「ありがとうございます! ちなみに、硬貨はいくらですか?」
感謝を口にした後、恐る恐る尋ねる。
だって、こんなすごい弓が高いわけがない。予想では金貨五枚くらいはするんじゃないかな。
すると、ぶっきらぼうな声でグラディオおじいさんが言った。
「いらん」
「え?」
「だから、硬貨はいらん」
「な、なんでですか?」
「この店はもう閉まってる。だから、人に武器を作るなんて仕事はやってないんじゃ。だから、受け取れん」
「で、でも、硬貨は私からの感謝の気持ちなんです。だから……」
言い切る前に、グラディオおじいさんが笑みを浮かべて、私に言った。
「さっきのありがとうで、感謝は伝わった。だから、いらん。わしは少しでも魔法使いとこの国が良好な関係になることを願ってるんじゃ」
夕日に照らされ、グラディオおじいさんの目はどこか遠くを見ているように感じた。それは、どこなのか私にはわからなかった。
グラットならわかったかもしれないと私は思った。
「わかりました」
私は頷き、自分のポッケから二枚の金貨を出す。
朝、ルークから受け取った金貨である。
それを、グラディオおじいさんの真後ろにある机の上に置いた。
「感謝の気持ちの金貨を二枚置いていきますね」
「頑固じゃのう。いらんと言ってるのに」
「これは、違います。魔法使いとしての感謝の気持ちです」
笑顔を浮かべて、私はグラディオおじいさんを見つめた。
「そうか……」
そう呟いて、グラディオおじいさんは金貨を受け取った。
まだ、見習いではあるけど、これで魔法使いとしての感謝はできたかな。
改めて感謝を伝えて、私はフィストの方へと戻った。




