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13話 銃使いの男は怒っている

 工房を飛び出し、俺は家の前でしゃがんだ。

 未だに収まらない怒りに、頭の中が支配される。


「俺は、どうしちまったんだ」


 頭を冷やそうと思ったが、どうしようもないマグマのような怒りが上がってくる。

 

 どうして、じじいは親父がない方がいいと言っていた兵器を完成させたんだ。

 親父は戦争なんてない方がいいって言って、じじいもそれに頷いてた。

 

「なのに、どうしてだよ……意味が分かんねーよ」


 思いっきり、拳を壁にぶつけた。

 ただ、虚しさだけが残る痛みが響いただけだった。


 俺は、空を見上げてため息を吐いた。


「この国も変わっちまったな……」


 昔は、魔法使いなんて歩いてなかったのに、今は普通に歩いてるし、街並みも、昔と違って、俺が知らない建物ばかりだ。

 ここだけが、何も変わってないと思っていたのに……。


「おーい! グラット!」


 そんな時、俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。

 声の方に視線を向けると、とんがり帽子の魔法使いルークが手を振っていた。


「家の前で、元気なさそうにしてどうしたの?」


 何も知らないルークが、不思議そうに俺を眺めていた。


「お前こそ、何してたんだ?」


 自分のことから、目をそらすように、ルークに尋ねる。


「僕は今、昨日できなかった魔物の魔石や素材を売りに行ってたんだ。魔石が結構高く売れて驚いたよ」


「そんな物まで売れるようになったのか……」


 俺は、小さな声で呟いた。


 昔のこの国なら、魔石なんて売れなかったのに。

 そういうところまで変わってきてるのか……。


「で、グラットはどうしたの?」


「そうだな……なんだか、頭の中が色んな事で混乱してるんだ」


「そっか、なんかあったなら話、聞いてあげようか?」


「まあ……話すか……」


 少し、悩んで俺は話すことにした。

 胸の奥に詰まった感情を吐き出したいような気分だった。

 話せば楽になるなんて、思わない。


 だけど、ルークなら、俺が今感じているこのどうしようもない感情に答えをくれるかもしれない。

 

 俺は、ゆっくりと話し始めた。


☾ ☾ ☾ ☾


「なるほどね……グラットも色々大変な思いしてきたんだ」


 俺は、ルークに家族のことや今起こったことを全部話した。

 話してる時、ルークは頷くことしかしなかった。


「俺はさ、今、なんでこんなに怒ってるのかもわからないんだ。全部が嫌いなはずなのに、どうして、俺はこんなに熱くなってるんだろうな」


 誤魔化すような、乾いた笑い声が出た。

 

 俺は本当はどうして欲しくて、どうありたかったんだ?

 

 そんな、昔から胸にあった疑問が、また浮かんだ。

 この国にいると、ずっとそんなことばかり考えてる気がする。


「はあ……ありがとなルーク、話聞いてくれて」


 そう言って、俺は俯せて、地面を眺めた。


「なあ、グラット」


「ん?」


「僕はさ、今の話を聞いてても思ったけど、グラットは全部が嫌いじゃないんだよ」


「今の話で、どうしてそう思うんだよ」


「何が好きなのか知らないけどさ、僕はグラットがこの国の歴史を楽しく話す姿を知ってるから思うんだ。なにか大事な物があるから、怒れるし、楽しめるんじゃないかなってね」


「それは……」


 俺は、ずっと勝手に死んだり、勝手にどっかに行ったり、勝手に変わったりする全部が嫌いだった。

 だけど……。


 そっか……俺は、ずっと家族のことを大切に思っていたんだ……。


 だから、ビスタリア大森国が悪魔に乗っ取られて戦争を起こすかもしれないって、話を傍から聞いていた俺は、自分の国が危ないかもしれないって思ったから、動いたんだ。


 そっか、そうだったんだ。俺は昔からずっと短かったけど、楽しかったあの家族と一緒にいる時間が好きだったんだ。


「ルーク……」


「ん?」


「ありがとな、やっとわかったよ」


 立ち上がり、俺は雲一つない空を見上げる。


「そっか、それならよかったよ!」


 ルークは満面の笑顔で笑う。


「後で、じじいと二人の時に話してみるよ。ちゃんと理由を聞く」


 ずっしりと重かった感情がすっきりとして、今ならどこへでも行けてしまいそうだ。


「よし、ルーク。飲みに行こう!」


「え……」


「そんな、嫌な顔すんなよ。一杯だけグイっていきたい気分なんだ。付き合えよ!」


「はあ……わかったよ。一杯だけね」


 やれやれと肩をすくめて、ルークは頷く。

 

 俺はルークの肩に手を回して、気分良く、酒屋へ向かった。

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