10話 少女たちは銃使いの男の家に訪れる
商業区画を後にして、私たちは居住区画を通り過ぎ、王宮区画に来ていた。 王でも王族でもない私たちが、王宮区画に入っていいのか、戸惑った。
けど、グラットが区画とかあんまり関係ないと言っていた。
王宮区画にも、普通に王族じゃない人も出入りできるらしい。
昔はそうじゃなかったらしいが。王が変わって、そうなったらしい。
グラットについて歩きながら、王宮区画を回り、最終的に赤い錆が付いた家の前にやってきていた。
「ここが、グラットの家?」
私が、首を傾げて聞くとグラットは頷き、扉を開く。
耳障りな音が響いた。
「ここは、俺の家であり、武器を作る工房だぜ」
だから、さっき作ってくれるかもしれないって言ってたのか。
内装も外と同じで、ぼろぼろで埃となんだかあまり嗅ぎなれない臭いがした。
焦げたような臭いかな?
「じじい! 俺と一緒に旅した仲間連れてきたぜ! 武器作ってほしいってよ!」
グラットが大声で呼びかけると、家の奥から背丈が小さいおじさんが出てきた。
皺が顔の中心に集まっているような感じで、顔がむすっとして、少し怖い。
青色のエプロンに、手には白い軍手をつけて、まさに職人って感じだ。
この人は、グラットのおじいちゃんか。
どことなく、似ているような、似ていないような……面影は感じる。
「なんじゃ?」
「あ、あの、その、弓を武器として私が使いたくて、作ってください!」
私は、びしっと礼儀正しく、頭を下げて頼む。
「弓か……」
「やっぱり、素材がなくて作れないですか?」
「いや、そうじゃない。鉄の材料だけで作れるかなと考えていただけじゃ」
「それじゃ……」
私は、ゆっくりとグラットのおじいちゃんの顔を見上げる。
すると、腕を組み、口角を上げて、私に言ってみせた。
「これでも職人じゃ、作ってみせる。任せな」
「え! やったー!」
「なんで、喜ぶと私に飛びついてくるのよ」
私は、我慢できなくて、気づけばフィストに抱き着いていた。
フィストは、つんとした表情でそうは言うが、別に私を嫌がっていないようだ。
「よかったね。ティアラ」
「うん!」
微笑むルークの声にも私は頷く。
これで、私もみんなの戦力になれる。みんなの助けになれる。 そんな、心の奥にあった喜びが全面に出てしまった。
☾ ☾ ☾ ☾
グラットのおじいちゃん、グラディオが言うには、一日あればできるという。
流石というべきだろう。驚きのスピードである。
想像では、二日ぐらいかかると思ってたけど。
それまで、やることもないので、私たちはしばらく武器屋の中にいることにした。
ルークは、外を回りたいと言って、行ってしまった。自由な人である。
「フィストの剣って、どこで手に入るの?」
私は、純粋に疑問に思った。
だって、ビスタリア大森国のどこで、そんな剣の素材を手に入れて、作るというのだろうか。
すると、フィストは腰に下ろした剣に優しく触れて、話す。
「これは、私が剣士になるって決めた時に、お父様が持ってきてくれたんだ。どこから、買ってきたのか、はたまた、作って貰ったのかわからないけどね」
「そうなんだ。でも、大切なんだね」
「うん……」
優しい笑みを浮かべて、フィストは剣を見つめた。
もしかしたら、お父さんを思い出しているのかもしれない。
「おい、フィスト。ちょっとその剣見せてくれよ」
グラットが私たちの話を聞いて、気になったようにそう言った。
「ん? どうしてだ?」
「もしかしたら、どこで手に入れたかわかるかもしれねーぞ」
そうグラットが説得すると、フィストは鞘から剣を抜き手渡す。
片手で、グラットは持ち上げて、柄の部分を見る。
「うーん……この剣、もしかして……」
「何か、わかったのか?」
剣を丁寧にフィストに返してから、グラットは驚いたような声で答える。
「この剣はこの国で一番の剣を売っていた男、ジースリンが作った剣だ。俺も初めて見たから驚いた」
「へえーそうなんだ」
「フィスト、お前反応が薄いぞ。この国一番の鍛冶師だぞ。王族でも大金を積まないと作ってくれないような人が作った剣だぞ?」
「いや、なんだか実感がなくて」
「ま、それもそうか、でもその剣は多分、お前の親が金貨をたくさん積んで作って貰ったものだろうよ」
「そうなの?」
首を傾げて、グラットを見上げる。
「そうだぜ。その柄の部分にお前の名前が小さく入ってる。つまり、お前の親は自分の娘のためにジースリンに剣を作らせたんだろうな」
「そうなんだ……それは……」
今までに見たこともない笑みを浮かべて、フィストは微笑む。
「大切にしないとね」
その時だった。
重たい扉が勢いよく開かれた。
私は驚きながら、出入り口に視線を向ける。
数人の兵士と高貴な服を着た男が入って来た。
「我は、この国の王ピスタールだ! グラディオに用があって来た!」
「え、王様がなんで……」
私は、思わず驚きながらそんなことを口にしていた。




