表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
40/55

5話 銃使いの男は迷っている

 俺は、この世界に望まれて生まれてこなかった。

 

 ☾ ☾ ☾ ☾


 ルークたちと別れた後、俺は二つの区画を通り、王宮区画に来ていた。


 王宮区画には、高貴な服を着る人や旅人だったりが普通に歩いている。

 景色は、特に商業区画や居住区画と大きくは変わりない。

 

 この区画には、王族以外にも、街を発展させるための職人が住む区画でもある。

 それは、この国の王であるピーランド王の命でそうなっていた。

 理由は簡単である。職人が近くにいた方が仕事をすぐに伝えることができるからだ。昔なら武器の製造を任せていた。


 でも、時代的にもう武器は売れない。

 だから、今は工芸とかそっちの方がこの国に住む人には人気だ。


「じじい、元気にしてるかな……」


 俺は、空虚に青い空に向かって呟いた。

 

 しばらく王宮区画を歩き、とある鍛冶屋の前で足を止めた。

 

 大きく建てられた建物は、昔と比べて明らかに、錆びついている。

 黒く錆びついた看板には、何を書いてあるのかさっぱりわからないが、俺にはわかる。


『ピスタニア王国一の鍛冶屋』と書いてあるのだ。


 それも昔の話で、今じゃおんぼろ屋敷である。


 俺は、建付けの悪い扉をゆっくりと開いた。

 耳に響く不快な、音が反響する。


「誰だ?」


 ゆっくりと扉を閉めて、俺は奥から聞こえてきたじじいの声に返事を返した。


「俺だよじじい。久しぶりな」


「なんじゃ、グラットか……旅に出たんじゃなかったのか? 何しに帰ってきた」


 昔は、肉付きの良い筋肉で年をとっても元気だった姿は、今じゃ猫背の老人だ。

 久しぶりに帰ってきた孫に対して、喜ぶわけでもなければ、嬉しくて泣くわけでもない。

 ただただ、気難しい顔をして、疑問を投げてきた。


 その質問に、俺はすぐに答えることができなかった。

 

 だから、少し砕けた感じでふざけて返す。


「寂しくなって、じじいに会いに帰ってきてやったんだぜ。少しは喜べよ!」


「お前が、そんな気を遣えるわけないだろ。あいつの子なんだから」


 その言葉に、俺は苦笑いを浮かべながら、近くの椅子に腰を下ろす。

 かぶっていた帽子を、床に置いた。


 何で帰ってきたんだろ……。

 寂しくなった? じじいの顔が見たかった? それとも故郷が恋しかったか?

 多分、どれも違う。

 

 だって、俺はこの国も、親も目の前のじじいも嫌いなのだ。


「まあ、あれだよ。今、一緒に旅してるやつらが、この国に寄ったからここに来ただけだ」


「そうか、それは良かったな。また、旅に出るのか?」


「……どうだろうな」


 俺が、旅に出た理由、それは目の前のじじいがそう促したからだ。

 何も、やりたいと思うことがなく、何も夢がなかった俺に旅に出ろとそれだけ言ったのだ。


 旅に出れば、何かが変わるとじじいは言った。


 でも結局、旅に出ても、俺の中は何も変わらなかった。


 ちょっとした面倒に巻き込まれて、一緒に旅するやつらができただけで、俺は何も変わってない。


 俺の人生はやっぱり、生まれた時から何もないまま、終わるんだろうな。


 そんな、物心ついた時から感じていたこの虚無感に包まれ、小さいころから変わらないじじいの背中を静かに見つめた。


 火花だけが静かな、工房の中に散った。

 未だに、じじいは武器を作り続けていた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ