5話 銃使いの男は迷っている
俺は、この世界に望まれて生まれてこなかった。
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ルークたちと別れた後、俺は二つの区画を通り、王宮区画に来ていた。
王宮区画には、高貴な服を着る人や旅人だったりが普通に歩いている。
景色は、特に商業区画や居住区画と大きくは変わりない。
この区画には、王族以外にも、街を発展させるための職人が住む区画でもある。
それは、この国の王であるピーランド王の命でそうなっていた。
理由は簡単である。職人が近くにいた方が仕事をすぐに伝えることができるからだ。昔なら武器の製造を任せていた。
でも、時代的にもう武器は売れない。
だから、今は工芸とかそっちの方がこの国に住む人には人気だ。
「じじい、元気にしてるかな……」
俺は、空虚に青い空に向かって呟いた。
しばらく王宮区画を歩き、とある鍛冶屋の前で足を止めた。
大きく建てられた建物は、昔と比べて明らかに、錆びついている。
黒く錆びついた看板には、何を書いてあるのかさっぱりわからないが、俺にはわかる。
『ピスタニア王国一の鍛冶屋』と書いてあるのだ。
それも昔の話で、今じゃおんぼろ屋敷である。
俺は、建付けの悪い扉をゆっくりと開いた。
耳に響く不快な、音が反響する。
「誰だ?」
ゆっくりと扉を閉めて、俺は奥から聞こえてきたじじいの声に返事を返した。
「俺だよじじい。久しぶりな」
「なんじゃ、グラットか……旅に出たんじゃなかったのか? 何しに帰ってきた」
昔は、肉付きの良い筋肉で年をとっても元気だった姿は、今じゃ猫背の老人だ。
久しぶりに帰ってきた孫に対して、喜ぶわけでもなければ、嬉しくて泣くわけでもない。
ただただ、気難しい顔をして、疑問を投げてきた。
その質問に、俺はすぐに答えることができなかった。
だから、少し砕けた感じでふざけて返す。
「寂しくなって、じじいに会いに帰ってきてやったんだぜ。少しは喜べよ!」
「お前が、そんな気を遣えるわけないだろ。あいつの子なんだから」
その言葉に、俺は苦笑いを浮かべながら、近くの椅子に腰を下ろす。
かぶっていた帽子を、床に置いた。
何で帰ってきたんだろ……。
寂しくなった? じじいの顔が見たかった? それとも故郷が恋しかったか?
多分、どれも違う。
だって、俺はこの国も、親も目の前のじじいも嫌いなのだ。
「まあ、あれだよ。今、一緒に旅してるやつらが、この国に寄ったからここに来ただけだ」
「そうか、それは良かったな。また、旅に出るのか?」
「……どうだろうな」
俺が、旅に出た理由、それは目の前のじじいがそう促したからだ。
何も、やりたいと思うことがなく、何も夢がなかった俺に旅に出ろとそれだけ言ったのだ。
旅に出れば、何かが変わるとじじいは言った。
でも結局、旅に出ても、俺の中は何も変わらなかった。
ちょっとした面倒に巻き込まれて、一緒に旅するやつらができただけで、俺は何も変わってない。
俺の人生はやっぱり、生まれた時から何もないまま、終わるんだろうな。
そんな、物心ついた時から感じていたこの虚無感に包まれ、小さいころから変わらないじじいの背中を静かに見つめた。
火花だけが静かな、工房の中に散った。
未だに、じじいは武器を作り続けていた。




