4話 少女と猫耳少女は楽しむ
武器やら、食べ物、道具を売っている店が並ぶ、街中を走り抜ける。
私とフィストは手を繋ぎ一緒に走って、人がたくさん集まっている場所を見つけて足を止める。
ガラス張りの天井と赤いレンガで建てられた建物に、たくさんの人が入って行く。
何があるのか、少し離れた距離から出入口付近を眺めるが、人の流れが多くて中がうまく見れない。
「なんだろう、ここ……? フィスト知ってる?」
「私もわからない」
後からルークがゆっくり走ってやってくる。
「どうしたの?」
「あそこの建物に人がたくさん入って行くので、気になってました」
「あれは……あ! もしかしたら」
「何か、知ってるんですかルーク?」
「僕も詳しくは知らないけど、一つ心あたりがあるから見に行ってみよう」
「はい!」
行ってみようと言われて、弾むような返事を返す。
手を繋ぐフィストの表情が、わくわくを隠しきれていない。
「楽しみだね!」
フィストに囁くように言うと、フィストははにかんだような笑顔で頷いた。
「そうだね。私も楽しみ」
私たちは、人の流れに従って中に入っていく。フィストと手を繋ぎながら一緒に。
レンガで塗装された通路を進み、ガラス張りの天井から差す太陽の光に目を細めながら、中へ進む。
そうして、見えてきたのはグラットが持ってい銃のように黒い何かだった。
「なんですかこれ?」
私は、後ろをついてくるルークに首をかしげながら、聞く。
「始めて見たから確信はないけど、これは汽車ってやつだよ」
「汽車?」
「僕も、師匠からしか聞いたことないけど、人を乗せて遠くまで連れて行ってくれる乗り物らしいよ。馬より早いって」
そんな、説明を聞いても全く想像がつかない。
馬より早いってどういうことだ。
その時、プシューと何かが噴き出るような音が鳴る。
音の方を見ると、汽車が黒い煙を出していた。
「今、動こうとしてるんだと思う」
ルークが優しく教えてくれる。
もしかして、この汽車が動くところ見れる!
私は、興奮しながら待っていると、シュッシュっと音が鳴り始める。
「おぉ~!」
下の歯車みたいなのが回り、黒い煙を出しながらゆっくりと動き始める。
徐々に早くなる。
「な、なんだこれ、動いてる!」
この国の人からしたら当然のことが目の前で起こり、私は目を輝かせる。
グラットが言うには、この国の人は魔法を使えない。
つまり、汽車は魔法の力ではなく、人の力で生み出したものなんだ!
汽車はやがて建物の中から出ていき、地平線の方に走っていく。
そんな背中を見て、心の奥そこが熱くなった。
横で見ていたフィストも、目を見開いて、呟く。
「す、すごい。これが、私の国に走ってくれたらビスタリア大森林を突っ切って、一直線に通って国に行けてしまう……」
「すごいよねフィスト!」
興奮が冷めないまま、私はフィストに抱き着く。
すると、フィストは恥ずかしさを隠すように取り繕い、私に返事を返す。
「確かに、すごいね。私も見たことなかったから、つい興奮してしまった……」
「ねえ」
私はじとっとした目でフィストを見る。
「な、なに?」
「フィストはまだ固いよ。もっと砕けなくちゃ」
「でも、私は一応ビスタリア大森国の王女だからちゃんとしなきゃいけないでしょう」
「今は、王女じゃないよ。私と一緒に旅をする一人の女の子だよ!」
「そ、それは……」
「だからさ、もっと表情に出して楽しも! それに、私、知ってるよ。フィストが旅を始めてから、ずっとわくわく楽しそうにしてるの。隠しきれてないからね」
「え……そ、そうだったの?」
恥ずかしそうに頬を赤く染める。
ずっと、フィストは新しい物を見つけた時、顔が明らかに明るくなる。
それを、ずっと知っているから私は隠さなくていいと言った。
「ものすごく、可愛い顔してたよ」
とからかうように言うと、フィストは真っ赤になってそっぽを向く。
「し、仕方がないでしょ! 私だって楽しいんだから!」
そう照れながら言うフィストを見て、つい笑い声が漏れる。
「ふふ、やっぱ可愛いよフィスト」
「う、うるさい!」




