1話 新しい国への始まり
ビスタリア大森国から旅を再出発して、数日。
魔法使いルークと獣人の剣士フィスト、銃使いのグラット。
そして、魔法はまだ見習いで、ちょっとした神の力を持った私たちは、今、ビスタリア大森林を抜けて、とある平原の真ん中を歩いていた。
「みんな止まって、目の前にゴブリンの群れがいる」
ルークの言葉に従い、みんなが足を止めて、目の前の魔物の存在を捉えた。
数は全部で二十から三十くらいだろうか。結構多い。
草原に身を隠し、私たちは準備を始めた。
「いつも通りの陣形で戦うよ」
「了解だぜ」
「行きましょう」
「わかりました!」
三人がそれぞれ返事をし、次の瞬間にはグラットが魔法で銃を生成し、ゴブリンの群れに銃口を向けた。
「撃ったら、フィストは走ってゴブリンを蹴散らせよ」
「言われなくても、わかってるよ」
グラットとフィストが目と目を合わせて、笑う。
「それじゃ、行くぞ!」
掛け声のように、グラットが言って引き金を引いた。
――――パン、パンと銃声が鳴り響く。
それを合図に、フィストは草陰から飛び出し、剣を握りゴブリンの方へと走り出した。
数匹が銃によって倒され、ゴブリンが混乱している間にフィストが切り込んだ。
容赦のないフィストの剣術にゴブリンが数を減らしていく。
そして、私とルークも飛び出し、ゴブリンの群れに突撃する。
ルークは炎と土の魔法で蹴散らし、私はフィストの援護をする。
その時、フィストの後ろに一匹のゴブリンが回り込んだ。
それに私が気づき、すぐさま詠唱する。
「ウォーターボール!」
ゴブリンに、水の魔法をぶつける。
すると、フィストはすぐにそれに気づき、水の魔法で動きが止まったゴブリンに一刺しした。
気づけば、ルークの魔法とフィストの剣術で、ゴブリンは全滅していた。
「おーい、周りにほかの魔物の姿はないぜ!」
周りを見ていたグラットが大きな声で遠くから私たちに伝えた。
「ふう……これで、一息つけるね」
「ですね。数が多くて、私も疲れました」
ルークが汗を拭い、フィストは剣を鞘に納めて一息ついた。
「私も歩きすぎて、疲れました」
今日で新しい国に入れるということで、休みなく歩いてきたが、流石にきつい。まだ、体力が少ないのだ。
一日元気に歩く体力が私も欲しい。
ルークはふふっと微笑みながら言った。
「なら一旦、休んでいいよ。倒したゴブリンから素材集めるから」
「わかりました。ルークは大丈夫ですか?」
「うん。僕は疲れたって言ってもまだ動けるからね! ゆっくり休んでいいよティアラ」
ルークは、すごいな……どんだけ体力があり余っているのだろうか。
「私も、素材採取手伝います」
フィストもルークの背中を追いかけていった。
ゴブリン退治に一番体力使ってるフィストもすごいな……。
ゴブリンの素材を取りに行ったルークとフィストの背中を見届けて、私はふんわりした草むらの上にドカッと腰を下ろした。
「はあ……」
青い空に雲がゆっくりと流れて、そよ風が草原の草を揺らし、太陽の温かい日差しが私に眠気を誘う。
このまま、寝てちゃおうかな……。
うとうとしていると、グラットが私の横に、同じようにドカッと座る。
「ふう……俺も疲れたぜ」
「遠くから銃撃っただけじゃないですか?」
「いやいや、魔法で銃出すの結構大変だし、周囲の警戒するのも集中力が必要だから、疲れるんだぜ」
「そうなんだ……」
まあ、確かに狙って撃つのは集中力がいるよね。
私も、しっかりそれを経験してるからなんとなく、共感はできる。
それでも、体力少ないのはグラットも私と同じじゃん。
そんなこと考えていたら、ふと疑問がわく。
「グラット、腰の銃は使わないの?」
「ああ……これな」
どこか遠くを見つめるグラットは、優しく答えてくれる。
「この腰の銃は死んだ父さんの形見だから、使いたくないんだ」
「なんか、ごめんなさい」
「良いんだよ。俺が勝手にこうしてるだけだから、疑問になるのは当然さ」
「大切なんですね……」
「そうかもな……」
「お父さん好きですか?」
「うーん……それは、どうかな……」
呟くように言って、グラットからその先の答えは返ってこなかった。
☾ ☾ ☾ ☾
しばらくの休憩を終えて、私たちはまた歩き始めた。
すると、大きな壁が見えてきた。
「あれは、なんですか?」
私が指をさしながら、疑問気に聞くとグラットがすぐに答えた。
「あれは国境だな」
「なら、もうすぐ国に到着するね」
「やった! 旅を始めて最初の国だ!」
安心したようにルークが笑い、小さく小躍りするようにフィストが喜んだ。
旅を始めて数日、フィストはいつも冷静を装っているが、内心の楽しいや嬉しいが隠しきれていない。可愛い。
「てか、グラット詳しいね」
「そりゃぁ、だってこれから行くピスミニア王国は俺の故郷だし」
さらっとグラットはルークの疑問に答えた。




