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34話 少女と魔法使いは見つける

 私とルークはビスタリア大森国を歩き回った。


 大きな大樹が立ち並び、その大樹にくっついているかのように、建物が上の方にたくさん立ち並んでいる。

 私はあの家の入口ってどこなんだろうとこの国の人にとってはどうでもいいことを考えてしまう。


 太陽は出ているのに森に遮られてあまり明るさを感じない。

 それでも、街の賑やかさがまるで、太陽のように国を明るくした。


 歩いているだけで、色々と発見できて楽しい。


 そんな時、私の鼻に空腹を誘わせる匂いが鼻腔を撫でる。


「くんくん……美味しそうな匂いがする」


「本当だ。これはなんだろうね」


 どこかで、嗅いだことある気がする……どこだろう?

 匂いの方にふらふらと近づくと、私はまた出会ってしまう。

 いつぞや、手持ちの金貨がなくて食べることをあきらめた物。


「これは! 肉の串焼きだぁぁ!」


「ティアラ、これ食べ……」


「食べます!」


 食い気味に答えるとルークはすぐに店の前に進む。


「四本ください」


「串焼き四本、まいどあり!」


 銀貨を四枚、ルークが定員に渡すと四本の串刺しを渡され、ルークが戻ってくる。


「はい、二本上げる」


「ありがとうございます!」


 私はルークの顔も見ず、湯気を立て焼き焦げがつくお肉に夢中になる。

 一本の串に四つの四角く切られたお肉が刺さっていた。

 両手に串刺しのお肉を持ち、くんくんと匂いを堪能した後、一番上のお肉にかぶりつく。


「あーん」


 もぐもぐと私は口の中でお肉を噛み。飲み込む。


 ――ん!


「美味しい!」


 噛めば噛むほど、肉汁がじゅわっと溢れてお肉のうま味が口の中に広がる!

 それでいて、少しピリッとした辛味がある。これは、塩をかけているのだろうか。


 私が食べたのを見て、ルークも一口食べる。


「一口大きいですね」


「ん? あ、うん」


 ルークは一口で、上からお肉を二つペロっと入れてしまったのだ。


「もぐもぐ、これおいひいな」


「ふ、ふふ」


 口いっぱいにもぐもぐと食べるルークを見て吹き出してしまう。

 ごくりと口に入れた分を飲み込んだルークは、首を傾げる。


「なんで笑ってるのティアラ?」


「だ、だってなんか、どんぐりかじるリスみたいに食べるから、可愛いと思って」


「か、可愛い!? 僕が!?」


 自分に指を差し、ルークは顔を染めて聞いてきたから、私は首を縦に振る。


「可愛かったですよ」


「そ、そっか……ありがとう」


 恥ずかしく思ったのか、ルークは片手で顔を覆って、なにか呟いている。その声はとても小さく、なにをいっているのかわからない。


 てか、なんで照れているんだろう。


 私は疑問に思いながら、串刺しの肉をかじる。

 普段通りに戻り、ルークは思い出したように、言う。


「ティアラ、見てほしい景色があるからついてきてくれる?」


「いいですよ。ちなみに、その景色ってなんですか?」


「見てからのお楽しみ」


 次はルークが私の手を引いて、その景色の場所に向かって歩いた。


☾ ☾ ☾ ☾

 

 私たちは会話をしながら、国の賑やかさに染まるように楽しく歩いた。


 一本の大樹に登り、そこに建てられた建物の横を通る。

 ルークはその間、この国のお肉がなぜこんなに美味しいのかということを話していた。


 どうやら、森に生息する動物たちを狩りして、新鮮なまま調理しているかららしい。

 だから、スリグラ村のハンバーグも王宮の夜のご飯に並んだお肉もさっきの串焼きも美味しいのかと納得した。


 このちょっとした時間が好きだなと思う。


 ほとんど世間知らずの私が、こうやって教えてもらうことも好きだけど、それ以上に、ただ隣にルークがいるのが良いと思った。


「あ、そろそろ見えてくるよ」


 会話を止めて、ルークはほらと言って、私の視線を誘導する。


 時間は夕方、枝葉の隙間から見える空に色はすでに、茜色に染まっている。

 私は、目を見開いた。


「うわぁ……綺麗……」


 大樹から見下ろす国の景色、それはまるで、絵の世界に入り込んでしまったんじゃないかと思ってしまうほどの絶景だった。


 大樹の上に暮らす人も下に暮らす人も、夜の準備しているのか所々で、明かりがつく。

 そこに、大樹から生える枝葉の隙間から夕日の木漏れ日が零れている。

 木々覆われた日当たり悪いこの国唯一のオレンジ色の輝きが、そこら中に光っていた。


 女神の梯子が国全体に降りてきているかのような光景に恍惚とした。


「ティアラ、これ見て」


 ルークはバックパックから、商業都市ウェルトで買った本を取り出す。

 ぺらぺらとページをルークが捲り、とあるページで手が止まる。


 そのページに描かれていた絵の題名が『森の中の宝箱の中身』という。


「この絵、似てる」


 私は、ルークの手から本を取り、景色と重ねる。

 似てるんじゃない。同じなんだ。


「もしかして、この絵って……」


「そうだと思うよ」


 ルークの頷きに私は、確信する。


「つまり、この絵に描かれた場所は必ずあるってことですよね!」


「そうだね。このありえないと思うような景色があるってことは、きっとどこかに存在しているよ」


 つまり、私が旅の目標にしている場所、月が手に届きそうになるぐらい大きな塔もあるってことになる。

 夢に思っていた場所に、今ほんの少しだけ近づけたような気がして私は小躍りする。


「やった! やった! あるんだ。本当にあるんだ!」


 今、私はすぐに覚める夢を見ているわけでも、長い夢を見ているわけでもない。

 夢は夢のまま、終わってしまうのだろうと絶望していたあの時と違う。

 確かな希望が私を照らしていた。


 私とルークは太陽が落ちきるまで、景色を眺め続けた。

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