少女は魔法使いに怒っている
その後、私が悪魔を倒したことにより、操られた兵は自我を戻した。
王宮の中にいた魔物たちは、自我を戻した獣人の兵士とルークの魔法によって片づけられた。
取り憑いた悪魔は消えて、本体のベルガンドも他と同じように本来の自我に戻ったが、怒ったフィストがぼこぼこに殴り、顔を腫らしてそのまま気絶してしまった。
フィストは最後に、言葉を吐いていた。
「私はあなたと同じような手を使わない」
これは、父を殺し王の地位を奪ったベルガンドに向けて、私は違うと言いたかったのかもしれないと私は勝手に思った。
そして、牢に閉じ込められた元王であるフィストの父の派閥の人が解放され、次の日には、ベルガンドが支配した国はあっという間に本来の姿を取り戻した。
静かだった国が、一気に賑やかになった。
私はというと、神の力を使った反動で気絶するように眠り、起きると見たこともない部屋のベッドから起きた。
そこは王宮の一室で、私は数日そこで獣人メイドさんに看病されながら、過ごした。
特に傷はないが、神の力を使うと魔力が無限になると思いきや、力がなくなると私の体は動かなくなってしまった。
もしかしたら、神の力は月が出ている内は無限に魔法を放つことができるのかもしれないが、夜が明けると使った魔力分の負担が体にくるのかもしれない。
これは、使う場面をしっかり考えないとダメな力なのかもしれない……。
そんなことより、その日から豪勢な朝昼晩のご飯とふかふかなベッドのおかげで、とても快適な一日を過ごしていた。
そして今、私は体の調子が戻ってきて、王宮の外にルークと一緒に出ることになった。
久しぶりに外に出る気がする。
ずっとベッドの上で動けなかったからな。
初めて来た時とは見違えるほど、国の雰囲気は賑やかだ。
多くの獣人が外を楽しそうに笑顔で歩いている。
これが、ビスタリア大森国本来の姿なのかもしれない。
フィストが大切にしていたお父さんの作った国なんだ。
「賑やかですね!」
「うん。そうだね」
ルークが微笑みまじりの笑みを浮かべる。
「あ、そういえば……」
「ティアラ、どうしたの?」
ふと思い出し私は、少し怪訝な表情でルークを見上げた。
「どうして、ルークは勝手に行ってしまったんですか?」
「え……?」
「だから、ギルガッドに簡単に連れ去られてしまいましたよね?」
「あぁ……あれは、作戦だったんだけど……」
「知ってます」
ルークがギルガッドの提案に乗った理由は私でもわかった。
誰より先にルークはマジックアイテム魔法封じの目の発動条件に気づいたのだろう。
発動条件は、その対象を捉えていないと意味がない。
だから、ルークは考えた。
その提案に乗ることで、自分は必ずベルガンドの目に入るところに捕らえられ、そして、助けに来た私たちと一緒に奇襲を仕掛ける作戦だったのだろう。
それを理解したから私は、作戦を実行したのだ。
「そのルークが考える作戦に私たちが気づかなかったらどうしてたんですか?」
「僕はわかってくれるって、信じてたよ。だって、フィストと一緒に作戦立てて、敵を一人倒したでしょ?」
「な、なんで知ってるんですか?」
それは、まだ話してないのに……。
「言ったはずだよ。僕の特殊魔法は耳がよくなることって」
「そうでした……」
とはいっても、結構距離あったのに聞いてたんだ。
「まあ、あそこで、ティアラとフィストがその敵に勝つなんて、わからなかったけど、僕が助けに行かなくても勝つことができたから、信じてみようって思ったんだよ」
「で、でも、私はそれでも許せません!」
ルークの優しい声に、私の怒りは静まりそうになるが、それでも、残っていた怒りを振り絞って叫ぶように言う。
「だって、だって、ルークはわかっていたはずなに、痛い方を選ぶなんて、私は理解できません! たとえ、作戦だとしてもです!」
攫われたルークは、ギルガッドの拷問を受けたのだろう。
いや、拷問ですらない。ただの発散でしかない暴力を受けたのだ。
「拷問の痛みを知ってるから、ルークの痛みもわかります。だからこそ、私は自分を痛みつける道を簡単に選んでほしくないです……」
目頭が熱くなってくる。
私は心からルークを心配していたのだ。
もしかしたら、昔の私と同じような思いを受けているかもしれない。
もしかしたら、死んでしまうかもしれない。
もしかしたら……。
たくさんの心配が頭の中にあった。
それでも、ルークの姿を見ただけで、安心できたのは、私の中でルークの存在が一番大切だからだ。
流れる涙を拭い、私はルークを睨む。
すると、ぽんっと頭に手が置かれる。
「心配させてごめんね」
「……いいですよ。次はないですからね」
「うん。わかった。次は必ずティアラを大切にできる選択をする」
「そ、そういうことじゃ……」
簡単にそんなことを言うルークに顔が熱くなる。
「私は、自分を大切にしてくださいって」
「知ってるよ。だから、ティアラのことを思ったら自分も大切にできるでしょ」
「まったく、意味が分からないですよ……」
私はぷいっとそっぽを向いて、言った。
「でもね。怖くはなかったよ。特殊魔法のおかげで、ティアラたちが助けにくるってわかってたから、痛かったけど、寂しさとか全く感じなかった。ティアラ、ありがとう僕を信じてくれて」
この人は本当にわかっているのだろうか。
でも、その感謝の言葉は、心から嬉しかったから小さな声で返す。
「どういたしまして……」
「ふふ」
「あ、笑った!」
「ご、ごめん」
頬を掻きながら視線を逸らすルーク。
「つ、つい、ティアラが、か、可愛いかったから……」
ドクンと胸が弾んだ。
なぜか、私まで恥ずかしくなってくる。
「な、なんですか、それ! 私は怒ってるんですよ!」
「ほ、本当にごめん」
怒っているはずなのに、どこか照れ隠しをしているような気持なる。
な、なんだろう……この感情。
私は、ルークから視線を切る。
「い、行きましょう。今日は国の中を回るの付き合ってもらいます! そしたら、許します!」
「あれ、許してくれたんじゃないの?」
「許してません!」
「そ、そうなんだ。まあ、良いよ」
ルークの手を握り、無理やり私は引っ張る。
「だったら、早く回りましょう!」




