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奴隷少女は諦めない

 気づくと、後ろから追いかけてきていたオークの姿はなくなり、目の前には、ベルガンドが待つ王の間があった。


 私とグラットで両開きの扉を開いた。


「王宮に入って、ずいぶん時間をかけて上ってきたじゃないかティアラ」


 月明かりが照らす王の間には、赤い絨毯がひかれ、その奥にベルガンドを中から操るギルガッドが木彫りされた玉座に座っていた。すぐ横には、マジックアイテムも置いてあった。


 ルークがいない……。


 フィストはぼろぼろでも、剣を握り、グラットも銃を構える。


「なにをしに来たのかな?」


「倒しにきました」


「倒す? どうやって? そんな満身創痍な剣士を連れてどうやって勝つんだ? お前の魔法使いだって、ぼろぼろだっていうのに。ほら、上を見てごらん」

 

 がはははと嘲笑をするギルガッドの言う通りに、見上げる。


 私は目を大きく開く。


 壊れた天井から枝葉の影を作っていた月明かりが、人影を作る。

 大樹の枝葉の中から、人影が出てきた。

 

 蔓状の植物に手足を縛られたルークがいた。


「え、なんで……」


「生きてはいる。たくさんいたぶってやったけどな! がははは!」


 着ている服はそこら中が破れ、体からはぽたぽたと血を流していた。

 この悪魔の本質は、人を痛めつけて、その苦痛に苦しむ顔を見て楽しむことだ。ルイスに憑いていた時となにも変わっていない。


「お前はルークに会いに来たんだろ? 会えてよかったじゃないか……それにしても最高だな! その絶望に染めた顔!」


 ――パン! とみんなの視線が、ルークへと集まっているとさらに銃声が響く。


「いっ……!」


 音の方に視線を向けた。

 ギルガッドが握る銃の先から、硝煙が出ている。

 グラットがその場にしゃがみ、足を抑えた。


「あーあ、よそ見しちゃうから撃たれちゃうんだよ。がははは!」


「て、てめえ、よくも」


 グラットは銃をベルガンドに向け、引き金を引こうとする。

 が、遅かった。


 気づかない間に、グラットを植物が縛り上げたのだ。


「くっそ」


 さらに、その植物は次にフィストを狙う。


「私は簡単に――」


 フィストは的確に剣を振り、植物を切っていく。

 だが、傷でぼろぼろの体に、すべての植物を捌くことは不可能だった。

 足を植物に取られ、フィストも簡単に縛り上げられる。


「あが……」


 体に傷があるフィストは縛られ、顔を歪ませる。


「で、後はティアラだけだが、どうする? 私の言うことを聞くなら、みんなを助けてやってもいいんだぞ?」


「私は……私はまだ……」


「諦めないとか言うのか? 君はもう積みだよ。だって後ろを見てごらん」


 そうやって、ギルガッドは私の視線を背後に向けさせる。


 どすどすと足音が聞こえてきて、なにが近づいてきているのかすぐに理解する。

 さっき、倒しきれなかったオークだ。


 扉を壊し、真後ろにオークが立っていた。


 挟まれた……。


「がはははは!」


 不快な笑い声が響いてくる。


「ティアラ、私に力をくれるなら、そいつらを助けてやってもいいんだぞ?」


「……」


「お前が俺に、力をくれるならそいつらを助けてやるって言ってるんだ。迷うことはないだろ」


「てぃ……あら……」


 今にも消えてしまいそうな弱々しいルークの枯れた声が聞こえてくる。


「ま、だ……まけてないよな」


 声の方に視線を向けて頷くとルークの口角が上がった。


 そして、私はベルガンドを視界に捉える。

 バックパックを下ろしながら、私はベルガンドの提案にはっきりと答える。


「私は、その提案には乗らない」


「なら、そこにいる魔法使いも、女剣士も、銃使いも死ぬだけだぞ? それでいいのか?」


「いいよ。そんな提案に乗る必要がないから……」


 私は、深呼吸をしてギルガッドを睨む。


「――――だって、まだ、負けてない!」


 バックパックから、二つのグレネードを掴み取る。

 即座に、留め具を外し、私はギルガッドの横に置いてあるマジックアイテムに向けてスタングレネードを投げる。


 投げると同時に、私はオークの方に走り出した。


 手を向けて、私は唱える。


「ウォーターボール!」


 オークは手に持った棒を振りかぶるが、それよりも早く、私の魔法がオークの顔に衝突する。

 それと同時に、背中の方では閃光が走った。


「その手がなんども通ると思うなよ!」


 ギルガッドの怒声が聞こえてくる。


 横に大振りされたオークの棒を私はしゃがんで躱し、そのタイミングでスモークグレネードの留め具を外し、転がすように投げた。


 周りの植物が私の方に伸びてきて、掴まれそうになった時だった。


「はあはあ……間に合った!」


 次の瞬間、私を囲い込む蔓状の植物が燃え、爆発音が響いた。


 そして、スモークグレネードの中から出てきたのは、とんがり帽子を被り、少し破れた白いマントを靡かせた魔法使いだった。


 赤い火の玉がオークの顔付近で、轟音を響かせて爆発する。

 オークが倒れた。


 そして、私の目の前に堂々と立ち、微笑む。


「ティアラ、ここから反撃だ!」


「はい!」

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