奴隷少女は城に潜入する
私たちの作戦は王宮に侵入し、王の間でギルガッドと戦うことだ。
だから、それまでは絶対に見つかってはならない。
正面から戦えば確実に勝つ方法がこっちにはある。
あと、一つ確信していることがあった。
それは、ギルガッドの近くにルークがいるということだ。
じゃないと、檻に入れても、ルークは必ず魔法で脱出するから、マジックアイテムを使うギルガッドの近くに必ずいる。
一本の太い大樹の前で、私たちは足を止めた。
建物に身を隠し、様子を見る。
王宮の入り口の前には二人の獣人の兵が立っている。
「やっぱり、正面から入るのは難しいね」
だからと言って、他に入り口があるのかと言えばそれも難しそうだ。
王宮が立つ大樹の周りには、建物しか建っていない。他に大きな大樹が何本も生えているが、そこから、飛び移るのも無理だ。
だから、正面から無理やり入るしかないのだ。
「よし、俺の出番だな」
グラットはにっと笑い魔法を発動させる。
魔法陣から生成されたのは、スタングレネードと同じ見た目をしたなにかだ。
「ちょっとばかし、周りの兵に気づかれるかもしれんが、行くぞ!」
「グラット、頼みます!」
「おう! 任せろ!」
グラットは、留め具を抜き振りかぶってそれを投げる。
その瞬間、私たちは背を向けて目を閉じた。
しゅーっと音がして、私は目を開けた。
投げたものから、煙が舞って兵の視界を奪っている。
「スタングレネードじゃねーぞ。今のは、スモークグレネードだ。さっき説明したろ」
「そういえば、さっき言ってましたね」
「まあいい、もう一回説明する暇はないぞ。先を急ごう」
グラットのその言葉で、私たちは急いで、入り口の前まで走った。
どうやら、二人の兵は咳をするだけで、こちらに気づいていないらしい。
気づかないうちに、フィストが二人の兵を剣の柄で殴り気絶させる。
重そうな両開き扉を三人で力いっぱい押して、中に入ろうとすると、気絶させた獣人はすぐにゆっくりと立ち上がった。
気づかれないうちに、扉を閉じた。
「はあ……はあ……」
閉めた扉に、寄りかかるように私は尻をつく。
周りの建物とは違い、石造りで立てらた王宮は、内装が大きくて広い。
少し声を出すだけで、響いてしまう。
ひんやりと冷たい空気と床に引いてある赤い絨毯を見ると、オルランド邸を思い出す。
「すう……はあ……」
ゆっくりと吸って吐いて繰り返し、落ち着かせていく。
こんなところで、止まってる暇はない。
自分を鼓舞するように私はそう思う。
「ティアラ大丈夫?」
フィストが心配そうな目で私を見つめた。
私はすぐに頷き、答える。
「うん。大丈夫」
言って、私は立ち上がろうとすると、フィストが手を貸してくれた。
「ありがとう。フィスト」
「これぐらい普通だよ。私たち友達だし」
ほんの少し、恥ずかしそうに顔を染めるフィストに私も照れてしまう。
その時だった――ドスン、ドスンと地を揺らすような足音が聞こえてきたのは。
その足音は、こちらに近づいてきて、姿を現す。
王宮の中から姿を見せたのは、オークだった。




