表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
20/31

奴隷少女は猫耳少女と似ている

 スリグラ村から出て、一日が経過した。


 私たちは今、険しい森の中を歩いている。

 太い木の幹が道を邪魔していたり、大きな岩を登ったりと、とにかく大変な道のりだ。

 

 どうやら、スリグラ村からビスタリア大森国までは三日かかるらしい。

 

 距離だけなら、二日で到着できるのだが、いかんせんたくさんの魔物が存在する危険な森と、険しいこの道のりのせいで、時間がかかってしまうのだ。


 多分、今日の夜までには着くことができるだろう。

 

 ここまで、私たちは陣形を組んで歩いた。

 先頭にあらゆる不意打ちも対応ができる剣士のフィスト。

 その後ろに、魔法でサポートができるルーク。

 さらにその後ろに、水魔法しか使えない私。

 そして、一番後ろにあらゆる角度からの攻撃を銃で対応できるグラット。


 この順番で、私たちはビスタリア大森林の中を進んでいた。


「ストップ」


 フィストが、突然足を止めて、指を差す。

 その方向には、ゴブリンの群れがたむろしていた。

 ざっと見た感じでも、十匹ぐらいだろうか。

 

「私が、突っ込むからサポート頼む」


 それだけ言って、フィストは群れの中へと突っ込んでいく。


「おい、ちょっと待て!」

 

 グラットの呼びかけにも、振り返らない。

 

「仕方ない、僕たちはサポートしよう。ティアラはグラットの横にいて」


「わかりました」


 フィストの背中を見ながら、私は頷いた。

 

 なんだか、昨日からフィストが焦っているように見える。


 四足歩行で走り、腰に下ろした鞘から剣を抜き、風を切るように近くのゴブリン二匹の首を同時に飛ばす。

 そこで、ゴブリンがフィストの存在に気づいた。

 

 遅れて、飛び出したルークが数多くの石の礫を魔法で放ち、弓を構えるゴブリンに当てる。

 的確に頭を狙い貫通していくその魔法に、私は驚く。


「やっぱ、ルークの魔法はすごい……」


 小さい魔法のはずなのに、威力が高いし、その上それを数多く操っている。

 私のウォーターボールももしかしたら、そういう工夫ができるのかもしれない。

 

 それにしても、やっぱりフィストも強い。

 知ってはいたけど、十体近くいたゴブリンが一瞬で全滅している。


「俺の出番はないな、まあ、温存できるしいいか」


 周りのゴブリンが倒れているのを確認して、私とグラットは二人の方に近づいた。


 剣を鞘に戻し、フィストは息を吐いた。


「ふう……では、先を急ぎましょう」


「あの……少し、休憩しませんか」


 時間帯的には昼だ。

 朝起きてから、ここまでノンストップで歩いてきて私は疲れたのだ。

 

「でも、先を……いや、そうしましょう」

 

 どうやら、わかってくれたらしい。

 私は、その場に座り込んだ。


「ティアラ、大丈夫?」


「はい、少し疲れただけなので」


「そっか、なら僕はあたりを警戒しておくから、みんな休憩しといて、呼べば戻るから」


「俺も、一緒に警戒するぜ」


 そう言って、ルークとグラットは行ってしまった。そして、二人の背中が見えなくなって気づく。


 フィストと二人きりだ……気まずい。


 別に仲が悪いわけではないはず。

 向こうが私をどう思ってるか知らないけど……もしかしたら、行く前にあんな質問したせいで、厄介に思われているのだろうか。

 

 元奴隷だった私と現在王女のフィスト、身分が違いすぎてなにを話していいのか、わからないのも、気まずい理由の一つである。

 

「そ、そいえばグラットって酒場の美人なお姉さんに振られたから、可愛い獣人の女の子もとめて、こっちに来たんだって、面白いですよね。あははは……」


 ちらりと、フィストの方を見るが一切笑っていない。

 昨日の夜、落ち込んで話していたグラットが、笑い話にしてくれと言ってたから話してみたけど、効果なし。


 どうしよう……私、仲良くしたいんだけどな、歳近そうだし。


「ねえ、ティアラ、あなたって夢ってある?」


「え?」


 フィストからの突然の問いに固まってしまう。


「夢?」


「うん」


 なんで、いきなりそんなこと聞いてきたんだろう。

 少し、考えそうになるが思考を止めて、夢の質問に答える。


「えっと、今の私の夢はたくさんあるけど、まずは月に手が届くぐらい高い塔に登ることと、後は、世界をたくさん旅して、色んな景色見たりするとかかな」


「……良いね」


 ほんのわずか、フィストの口角が上がったような気がした。


「じゃあ、私も聞いていい?」


「うん、いいよ」


「フィストも夢ある?」


 私がそう聞くと、フィストは寂しそうな顔をしながら、言う。


「あるよ……私の夢はティアラと同じ」


「え、そうなの?」


「そうだよ。私も世界を旅したい。けど、ダメなんだ」


「ダメって、どうして?」


「……私かグレイスト兄様どっちかが王を引き継がなきゃいけないのに、片方が夢のためにそこから逃げ出せないでしょ。兄様も旅したいって言ってるのに、私だけ行けるわけないよ」


 その理由を聞いて、どこか似ていると私は思ってしまった。


 まるでそれは、小さな牢の中で毎日、夢を見続ける私と似ている気がする。


「ティアラはいいな」


 その言葉は心の底から、フィストが私を羨ましいと感じていることがわかった。


「なら、私たちが国を助けたらフィストは自由になれるんじゃない?」


「それでもダメ。グレイスト兄様が王になるなら、私も一緒に残らないと」


 そっか、フィストのお父さんは死んでいる。だから、今はベルガンドが王を引き継いでいるが、もし、私たちがベルガルドから国を助ければ、確実に王になるのはフィストの兄になる。


 多分、フィストは同じ夢を追っている兄を気にしているんだ。


「大切なんだね。フィストは、家族が」


「うん……。だから、早くベルガンドから助けないと」


 その言葉を聞いて、私はフィストが焦っていた理由がなんとなく想像がついた。

 私も同じ立場なら、焦っていただろうと思う。

 

「大丈夫、必ず私たちが助けるよ」


「うん……」


 私は、フィストの震える手にそっと触れようと手を近づける。

 フィストも私と同じ、夢を追いかける一人の女の子なんだ。


 そう考えると、なんだか、心と心の距離が近づくような気がいた。

 

 フィストの手に、もう少しで触れられそうになった時だった。


 ――バンっと銃声が響いたのは。


 フィストはすぐに立ち上がり、音の方向に走って行く。

 私もすぐに、その後を追いかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ