奴隷少女は猫耳少女に出会う
襤褸を纏う人に連れられて、酒屋に入った。
まだ夜ではないからなのか、人は少ない。
昨日座ったカウンター席にふと視線を向けると、見覚えのある人が座っていた。
「おばさん、もう一杯!」
「あんた、昼から飲みすぎだよ」
ダリルお母さんに叱られているのは、昨日、銃を使って戦っていたおじさんだ。
あの人、昼から飲んでいるのか。
「ここに、座ってください」
「わ、わかりました」
私は促されるままに、椅子に座る。
机を挟み向かいの椅子に座ると、突然、襤褸を脱ぎ顔を見せた。
一番に私が目に留まったのは、頭の上についている猫耳のような耳だった。
「私は、ビスタリア大森国の元王、テルニア・バイスと女王テルニア・ヒストの娘、テルニア・フィストです」
「は、はあ……」
今、女王の娘って言った?
肩まで伸びた赤髪に、刺すように鋭い赤い瞳がこちらを窺っていた。
私は、頭をくるくるしながら整理していく。
「つまり……王と女王の娘だから、もしかして……」
「はい。私はビスタリア大森国の王女です」
え……今王女って言った?
強烈すぎる衝撃に私は言葉も出ない。
そ、そんなすごい人が私に話したいことってなに?
緊張で委縮してしまう私に王女様は、はっきりと言う。
「先に言っとくけど、私、様とか付けて呼ばれるの苦手だから、フィストと普通に呼んでください」
「はい……なら、私もティアラとお呼びください」
「あまり固くならないでください。私そんなにすごい人じゃないから……」
す、すごい人ですよ⁉
どうして、そこまでフィストが自分を謙遜するのか私にはわからない。
「とりあえず、本題に入りますね」
「は、はい」
私が頷くと、フィストは思いっきり頭を下げた。
「お願いします。私の国、ビスタリア大森国を助けてください」
「え、助けるってどういう……」
「ビスタリア大森国は人族に戦争を仕掛けようとしているのです。だから、それを一緒に阻止してほしいのです。あなたのあの魔法の力で、お願いします」
顔を上げないまま、フィストは私に頼み込んでくる。
「そ、その、ちょっと待ってほしいです」
今の言葉だけじゃ、話は見えてこないけど、これは一人で決めることはできないと思った。
なぜなら、私は一人で旅をしていない。
とりあえず、気持ちよく寝ているルークには、心苦しいが一旦起こしに戻ろう。
「私には旅をする仲間がいて、一人では決めることが難しいので、呼んできます」
「わかりました」
私は、席を立ち、一旦店を出てルークを呼びに、走って戻った。
国を助けるとか、戦争を止めるだとか、実際に私たちが
できることなのだろうか……。
私は、持ちかけられた話に頭をぐるぐる回しながら、宿へと向かった。




