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夢見る少女は世界を旅する  作者: フォッツ
一章 奴隷少女
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奴隷少女は村を守るために戦う 2

 木壁の上から見える夜のビスタリア大森林は深い暗闇だ。

 

 冷たい風が肌を撫でて、私は震えるわけでもなく、ただ固まってしまった。

 暗闇の中から、ギラギラと眼光を光らせる魔物の姿が見えて、驚いたからだ。


「あ、あんなにいっぱい……」

 

 鋭い角を持つホーンラビット。

 様々な武器を装備し戦うことができるゴブリン。

 二本足で立ち長い爪と鋭い牙を光らせるベアウルフ。

 巨体な体に木の棒を握るオーク。


 それらの魔物の大群が、村を囲っていた。

 

 目に見える魔物の数だけで、百以上の数はいるだろう。

 

「おかしい……」


 ルークがその光景を見て、言葉を呟く。


「なにが、おかしいのですか?」


「魔物たちに統率するぐらいの知性はないはず。それなのに、どうして」


 言われてみればそうだ。魔物たちそれぞれが、群れを作っている光景は異様だ。

 群れを作り、仲間意識があるのは同じ種族同士だけのはずだ。

 それなのに、村を囲っている魔物たちはまるで、仲間意識があるように統率を組んでいる。


「これは、どういうことなんですか」


「僕にもわからない。だけど、僕が感じていた森の異変がこういうことだったのだとしたら、納得はできる」


「魔法使いの兄ちゃん、考える余裕はないぜ」


 後ろから、声をかけてきたのはさっき、酒屋で酔っぱらっていたおじさんだ。


「そうですね。考えるのは村を守り抜いてからにしよう」


「俺も、夜遅くに無理やり起こされて腹が立ってんだ。頭が痛いぜクッソ」


 頭を軽く自分の手で叩き、おじさんは魔物の群れの方に見て、笑みを浮かべる。


「このイラ立ちは、ぶつけさせてもらうぜ」

 

 長い銃を構え、険しい顔でおじさんは魔物の群れを捉える。

 

 あれ……? 

 おじさん腰に下げた銃は使わないのかな?

 

 そんな疑問を浮かべるが、周りの静かな空気に思考はすぐに魔物の方に向かう。


 木壁の上から、みんな弓や銃を持ち、それぞれが、位置につく。

 魔物を迎え撃つ準備は完璧だった。

 

「構え!」

 

 その時、かけ声が響きそれぞれが、木壁の上で銃か弓を構えた。


 張り詰める静かな空気の中、私の心臓の音が耳元で鳴り響く。

 

 魔物の多いからこそ、引き付けて一斉攻撃を喰らわせる作戦だ。

 この村は森に囲まれているとはいえ、こういう時のため、村の周りはひらけているのだ。

 

 だんだんと、森から魔物がひらけた場所に出てくる。


 それぞれが息を飲み、攻撃するタイミングを待っていた。


 ――――その時だった。


「ん……?」

 

 森の中から突然、空にいくつもの赤い小さな光が舞った。

 

 空を見上げた村の人たちは、疑問の声を上げる。


「あれ、なんだ?」

「赤い光?」

「こっちに飛んできてないか?」


 それは、放物線を描きこちらに飛んできていた。


 これは、矢?


 それが魔物の攻撃だと気づく頃には、火矢は木壁に着弾していた。

 

 火矢が木壁に刺さり、火がっていく。

 

「敵の攻撃だぁ!」

「ま、まずい。このままだと木壁に火が」


 そんな、みんなの焦りの声が聞こえてくる。


 その瞬間だった。

 歩いてこちらにじわじわと歩いてきていた魔物たちが、一斉に走り出した。

 まさに、狙っていたような動きで、魔物が攻めてくる。

 

「う、撃て!」


 慌てているような、かけ声が響き、火なんて気にする余裕もなく、それぞれがばらばらに、弓が放たれ、銃声が鳴る。


 ホーンラビットとゴブリンに向かって放たれた攻撃が数匹の魔物に当たっていく。


 完全に、こっちの作戦が魔物によって、崩されてしまった。

 

 私は、考えるよりも先に叫び、動いていた。

 みんなが、集中的に敵を攻撃するために、私ができることは、これだ。


「皆さん! 攻撃に集中してください! 私が火を消します!」


 私は手に魔力を込めて、詠唱する。


「ウォーターボール!」


 木壁から身を乗り出して、私は木壁の燃えている部分を狙って、魔法を放つ。

 火の勢いは弱まるが、完全に火は消えてくれない。


 ダメだ。私の魔法の力じゃまだ足りない。

 それでも、私は何度も魔法を放つ。


 そんな時だった。

 空から、雨のように木壁に向かって、水の球体が降ってきたのは。


 こ、これは……。


 空を見上げると、とんがり帽子を揺らし、足から火を出して飛んでいる魔法使いの姿があった。


「ルーク!」


 私が呼びかけると、ルークは真剣な表情で言う。

 

「ティアラ! まだ火矢は飛んできてる! その消化は任せた!」


「わかりました!」


「俺は、上から魔物を攻撃する!」


 そして、上からルークは魔法を放つ。

 閃光が走り、ドカンと地を揺らすような轟音が響き、爆風が髪を揺らした。


「す、すごいな、あの魔法使い」


 銃を撃ち、近づいた魔物を一体ずつ確実に仕留めていく酔っ払いおじさんがルークの魔法に唖然とする。


「でも、俺も負けてられねーな。みんな、あの魔法使いに続いて攻撃しろ!」


「「「「「おおおおおおお!」」」」」


 ルークの力によって、みんなの指揮が一気に上がる。

 私も魔法使いとして、ルークはすごいと知っていたが、ここまですごいとは思わなかった。


 その後も、何度も何度も容赦なく炎魔法の爆発を魔物に降らせ、魔物たちに銃弾と矢の雨を浴びせ続ける。

 

 だが、こっちの銃弾と矢の撃つ勢いが落ちた頃、そこを、突くように数匹の魔物が村の入り口、門の前に辿り着いてしまう。


「チッ、まずいな……このタイミングで、オークとベアウルフが動き出したな」


 ずっと森の中から、様子を窺うように待機していたオークとベアウルフが森から顔を出す。

 ベアウルフは弓と銃の弾を縫うように躱し村に直進してきた。

 オークは矢も弾も当たるが動きを止められずに、ゆっくりと村に近づいてくる。

 ルークの魔法で数匹のベアウルフとオークが倒れるが、手数が足りず、目と鼻の先に魔物がいる。


 このままじゃ、まずい。


 その時、門が開いた。


「いけー!」

「俺たちの村を守れぇ!」


 威勢よく、武器を持った人たちが一斉に村から出てきて、ホーンラビットとゴブリンを切っていく。


 これも、作戦の一つである。

 上からの遠距離攻撃で削り、近づいてきた魔物を切り捌く。

 少し、作戦を狂わされつつあったが、何とか下で戦う人達に繋ぐことができた。


 私は変わらず、火矢の対処をする。

 そんな中で、四足歩行で迷いなく前進していく襤褸で顔を隠す剣士に目が留まる。

 風を切るようなスピードで、後に続くベアウルフを切っていく。


 それを見た、人が続けぇと叫ぶ。


 さらに、その剣士は勢いのまま走り、銃と矢で攻撃するオークに突っ込んでいく。

 そして、高く飛躍し、首を切り落とした。

 

 あの人すごい……何者?


 そんな私の横で、おじさんは長い銃から小さい銃に持ち替える。

 

「よし、俺も下に行く。こっからだと人に当たる可能性があるからな」


「え、大丈夫なんですか?」


「おう! 嬢ちゃんのその心配の言葉だけでやる気が出るぜ!」


 銃に弾を装填し、おじさんは木壁を飛び降りた。


「ひゃっほー! やってやるぜ!」


「え、え……?」


 驚く私なんて、よそ目におじさんは、草むらに着地すると、銃を向かってくるベアウルフに向けて、一発放つ。

 一体が頭を撃たれ、倒れる。

 さらに、背後に回ったベアウルフをおじさんは振り向かないまま、銃口だけ向けて撃つ。


「あの人もすごいんだ……そ、そんなことより早く火を消さないと」


 ルークの容赦のない、炎魔法のおかげで、飛んでくる火矢の数は減ってきた。

 それでも、飛んでくる火矢に私は対応する。

 繰り返し、魔法を発動したせいで私はだんだん疲れが出てきた。


 けど、まだ倒れちゃダメだ。みんなが頑張っているんだから!


「ウォーターボール!」


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