奴隷少女は村を守るために戦う 1
今回はルークとは、部屋が別になった。
ベッドと窓だけがある小さな部屋。これだけで、私はありがたいと思う。
心の中で宿の人に感謝しながら、私はベッドに横になる。
掛け布団の中から、少し顔を出し、夜空を見る。
静かな夜に、鳥と虫の鳴き声がリズムよく聞こえた。
綺麗に澄んで見える夜空には星と月がキラキラと光っている。
なんだか、ここ最近、奴隷の時の記憶がだんだん薄れていくように感じる。
夜空を見上げるたび、ここまでの道のりを思い出し、気づくと奴隷の頃の私が遠くにいる。
いつも見上げる月、だけど、見上げている場所が違う。
結構、遠くまで来たのかな。
いや……。
私は、前に進んだんだ。
たくさん歩き、たくさん見て、たくさん食べた。
私は、旅に出てたくさんのことを知って記憶した。
だからだと思う。
奴隷だった時の色のない日常が、すべて新しい記憶に塗りつぶされているから、そう感じるのかもしれない。
明日の私はどこにいるのかなと想像しながら、私は目を閉じた。
☾ ☾ ☾ ☾
――カンカンカンカン。
キーンと耳に響く音が聞こえて、目が覚める。
「な……なに?」
ぼーっとする寝起きの頭じゃ、今の状況が把握できなかった。
布団から出て、身を乗り出すように窓の外を眺める。
「東に魔物の大群を発見! 戦える者は東の木壁に来てくれ!」
そんな、叫び声が何度も何度も繰り返される。
村の東に魔物の大群……。
冷たい風が、胸の奥を撫でた。
今の状況がどれだけ危険な状態なのか、容易に想像できた。
魔物の大群が迫ってきているということは、逃げ場所がないということだ。
この木壁の向こうは、魔物たちが存在する危険地帯。
村に魔物が入ってきたら……まずい。
そんな、嫌な想像をしているとコンコンと部屋のドアがノックされる。
急いで開けると、そこにはルークが普段通りの優しい表情を浮かべて立っていた。
不安が少し、薄れる。
「僕はこれから、この村を守るために魔物たちと戦う、ティアラはどこかに……」
「私も行きます」
私は、食い気味にはっきり言う。
ルークは、どこかに隠れてとか言おうとしたのだろう。
だけど、それじゃダメだ。
「私も、この村を守りたいです。できることは少ないかもですけど……」
ルークみたいに魔法をうまく使えるわけじゃないけど、私にだって、できることはあるはずだ。
私だって、弱いなりに戦いたい。
美味しい食べ物を食べさせてくれたこの村を私は守りたい。
真剣な表情で私はルークの顔を見つめる。
「わかった。ティアラも連れて行く。だけど、無茶はしちゃダメだよ」
「わかりました!」
そして、私は寝るために脱いだ冒険着を着て急いで、宿からルークと飛び出すように外へと駆けた。
村は夜なのに、騒がしく、村の人たちが武器を持ち木壁の方に向かって行く。
銃や弓、剣を握りしめる人の中には、震えている人もいた。
私も怖くないと言えば噓になる。
だけど、ルークがいるだけで心強い。
大丈夫、絶対に明日は来る。




