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夢見る少女は世界を旅する  作者: フォッツ
一章 奴隷少女
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11/18

奴隷少女は魔法を実践する

 魔物とは、悪魔が人間に害を与えるために作った生物だと、この森に入る前にルークが豆知識として教えてくれた。


 ここは、ビスタリア大森林。危険な魔物たちが巣を作り、人を襲う危ない森の中である。

 

 私たちは、そんな森の中を七日間歩き進んでいた。


 目指すは、獣人族の国、ビスタリア大森国だ。


 そして――今、私はその森の中を駆けていた。狙った獲物を追いかけて。


 ウェルトで買った自分にぴったりの服を着て、全力で走る。

 脳裏で教えられた魔法のことを思い浮かべた。

 魔法は想像力が重要。


 ルークに言われた言葉を何度も反芻する。


 ぴょんぴょんと素早い逃げ足で飛ぶ、鋭い角を生やしたホーンラビットを追いかける。


 まだ、魔法を撃つタイミングじゃない。

 ホーンラビットは魔物の中でも比較的、弱い方だ。


 けど……油断したら――


 ぴょんと逃げている時より力の入った足で、地面を蹴った。


 ――くる。


 体を回転し、私の方にホーンラビットの角が向けられ、赤い眼光がこちらを捉えている。


 突然、木の側面に着地するように足を置き、ぴょんっと私の方に突進してきた。


 今だ!


 私は、向かってくる魔物に掌を向けて叫ぶ。


「ウォーターボール!」


 魔法陣が光、水の球体を作り出す。


 狙い通りのタイミングで、ホーンラビットと同じくらいの大きさの水の球体を飛ばす。

 すると、突進してくるホーンラビットに当たり、突進してくる勢いが落ちる。

 私の顔のすぐ横を通り過ぎていく。

 ホーンラビットが地面に着地すると、ぶるぶると毛に着いた水を弾く。

 その隙を狙い、私がルークから渡されたナイフで一刺しに、決着をつけた。


「やったー! ホーンラビットを倒した!」


「おー、初めて一人で倒すことができたね」


 草むらに隠れて見守っていたルークが顔を出す。


「でも、まだまだだね」


「え?」


 ルークが頬に手をかざし、回復魔法をかけた。

 どうやら、さっきホーンラビットが私のすぐ横を突き抜けた時、角が頬に掠めたらしい。


 温かい緑の光が頬の傷を癒していく。

 ルークは想像だけで魔法を発動する極致に達しているから、無詠唱でさらっと回復魔法を発動する。


「かわしたと思ったんですけど」


「油断しちゃダメってことだね。まあ、とりあえず魔石回収しようか」


 魔法を使い始めているからわかる。ルークは本当にすごい魔法使いなのだ。

 今なら、最初の方に話していた全属性魔法を全部使える話も、驚くことができそうだ。

 

「私、水魔法以外にも使えるように本当になるのかな?」


 ホーンラビットの体の中から魔石を取り、魔物の消滅を確認してから、村がある方向に向かって歩いていた。


「ティアラは魔法を僕が想像するよりも早く、使えるようになってるから他の属性魔法もそのうち使えるようになるさ」


 私は、水以外にも魔法を試したが、炎は小さな火が数秒つくだけだし、風は微風が吹くだけ、雷も静電気で髪が立つだけだった。

 ルークは、他の属性の魔法を出せるだけですごいと言ってくれたが、ちょっぴり不安である。

 

「なんで私、水魔法なんだろうな……」


「魔法は、一番触れることが多かった属性が自分の得意な魔法になるんだ。僕で言えば炎かな、小さいころ、毎日風呂沸かしたりして火を見てたから魔法でも炎が得意になったよ」


「そうなんですね。私はなんで……」


 水魔法が得意な理由があるとすれば、奴隷生活で毎日ずっと水仕事をしていたからだろうか。

 最初は使えて嬉しかった魔法が、今は得意な理由が、なんか嫌だなと思う。


「ティアラは魔法をすぐに使えるようになったし、他の魔法もすぐおぼえちゃうんじゃないかな」


「頑張ります」


「もうすぐ村だし、ゆっくり今日は休もう」


「ですね。久しぶりに布団で寝れますね」


 ここ七日間は、ずっと外で野宿をしていたから、久しぶりの村に少し感動に似た感情を覚える。


 最近はずっと、川魚を焼いて食べたり、ウェルトで買ったパンをかじったり、木の実を取ったりで、ちゃんと食べていなかったから、余計にそう感じる。


「お腹すいたし、村でたくさん食べたいな! ふんふん」


「まだ、着いてないんだから油断しちゃだめだよ」


「知ってますよ。大丈夫です。だって、ルーク師匠がいるから安全安心です」


「わかってないじゃん。後、師匠はやめてよ。呼び捨てでいいよ」


 師匠と言うと、ルークはなぜか難しい顔をする。


「師匠呼び、いいじゃないですか」


「僕は、ティアラと対等な関係なんだよ。魔法も僕が教えたくて教えてる。だから、呼び捨てでいいよ」


「でも、魔法は教わりたくて、教わってるんですよ」


「それでも、師匠呼びは流石に、僕とティアラの関係に合わないよ。だから、呼び捨てがいい。僕たち、友達だろ……」


 少し、言いにくそうにしながら言葉を紡ぐルークに首を傾げる。


 ルークと私の関係って、友達なのかな?


 疑問に思いながらも、今はなんとなく納得して私は頷いた。


「それにしても、思った以上に静かだな」


 ルークが顎に手を当て、考える。


「どうしたんですか?」


「この森、聞くには危ない魔物がたくさん潜んでるらしいんだけど、今のところホーンラビットとゴブリンしか見てないからね」


 確かに、私が見た魔物もその二体だけだ。

 ゴブリンは、まだ私には早いとルークが簡単に倒してしまったが。


「もっと、ベアウルフとかゴブリンの群れがあるとか聞いてたんだけどな」


「そこまで強くない魔物しかいなくて、よかったじゃないですか」


「それも、そうだよな……まあ、村までもう少しだし深く考える必要はないか」


 村を囲う木壁が見えてきて、私は一安心する。

 これで、ようやくゆっくり休める。今日はいっぱい食べて、いっぱい寝よう。

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