第18話:『逃げ場なしの24時間』
【学校・教室】
授業中。つばさとひなたは離れた席に座っているが、二人の頭の中は「秘密の回線」で繋がっていた。
(……つばさくん、さっきから先生の話聞いてないでしょ。私のこと見てるのバレバレだよ)
ひなたがノートを取りながら、心の中でクスリと笑う。
(っ!? ……うるせーよ。お前こそ、髪いじってただろ。……似合ってんよ、そのピン)
(え、気づいてくれたの? 嬉しい……)
つばさは思わず顔を伏せた。
声に出さずに会話できるのは便利だが、「可愛い」「好き」といった感情が、鮮明な映像や体温のような感覚と共に流れ込んでくるのが一番の曲倒だ。
隣の席の親友が「つばさ、熱でもあんのか?」と心配そうに覗き込んでくるが、つばさは(今、ひなたとイチャついてるんだよ!)と心の中で叫びそうになるのを必死でこらえていた。
【夜・自宅・ひなたの部屋】
放課後、家族との夕食を終えて、二人は「勉強会」という名目でひなたの部屋にいた。
親への手前、ドアは少しだけ開けてあるが、二人の距離は教科書一冊分もない。
(……やべえ。部屋、いい匂いする)
つばさの無防備な本音が、ひなたの脳内にダイレクトに響く。
「……つばさくん、本音が漏れすぎ」
ひなたが赤くなって指摘すると、つばさは「確信犯」のような顔でひなたを見つめた。
「隠したって無駄なんだろ? だったら、全部伝えてやるよ」
つばさは教科書を閉じ、ひなたの手を握った。
その瞬間、テレパシーの精度が跳ね上がる。
言葉にする前の、もっと深く、熱い「渇望」のような感情がひなたの中に流れ込んできた。
(抱きしめたい。……ずっと、こうしてたい)
ひなたは目を見開いた。
声で聞くよりもずっと切実で、重い、つばさの独占欲。
それは「入れ替わり」を経験して、お互いの弱さを知ったからこそ生まれた、深い絆の形だった。
「……私だって、同じだよ。つばさくん」
ひなたは自らつばさの胸に飛び込んだ。
(ドクン、ドクン)と重なり合う鼓動。
テレパシーを通して、二人の心は完全に一つに溶け合っていく。
「……もう、元に戻っても離れられない体になっちゃったね」
「ああ。……一生、この声を聞き続けてやるよ」
少し開いたドアの向こうで親たちの足音が聞こえる中、二人は誰にも聞こえない「二人だけの声」で、何度も愛を囁き合った。




