恐怖の始まり。
眩しく美しいものも、美しすぎれば不気味である。
私の価値観。世界の認識が壊れたのは、八歳の誕生日を祝うパーティーでのこと。
あの日、私は鏡に映る自分の姿に心底満足していた。周囲から褒められるこの容姿に誇りを持ち、世話をしてくれた侍女たちを「完璧よ」と大人のマネをして褒め称え笑い合う。屋敷の使用人たちとの関係も良好。私は意気揚々と何の不安もなくパーティー会場へ向かった。
だって誕生日のパーティーなんて自分にとって嬉しい事しか起こらないのだから。
会場は、目も眩まんばかりの光に溢れていた。クリスタルのシャンデリアが輝き、訪れた貴族たちは美しく着飾っている。美しい楽器の音色は私の気持ちを代弁するかのよう。
キラキラとした光景を純粋に「美しい」と思い、幸福を噛み締めていた。
幸せで、楽しくて、パーティーが終わらなければいいと思った。宴も終盤に差し掛かった頃。悪戯好きの叔父様が、一人の美しい少女を抱きかかえて現れたのだ。
「ロザリアナ、誕生日おめでとう。プレゼントだよ」
叔父様の抱きかかえる少女は、整った容姿をしていた。珍しい髪色も、その美しさからとても似合っている。この世で美しいとされる特徴を全て持っていた。
けれど同時に、どこか妙な違和感があった。
視線は合わず、どこか遠くを見つめているようで、叔父様にもたれかかるようにしている。
足が悪いお方なのかしら?と、呑気に考えた。
「さあ、挨拶を。彼女と握手しておくれ」
叔父様に促され、私はなんの疑いもなく、少女の差し出された白い手を握った。
その瞬間
ゴトンッ!!
重苦しい音が響いた。
美しかったはずの少女の頭が、そして肩から先までの腕が、床に落ちたのだ。
私が握っていたはずの手は、私の手に握られたまま力なくダラリと下がる。
「きゃあぁぁぁ―――!!!!」
悲鳴を上げる私をよそに、叔父様は呑気に笑っていた。
「驚いたかい? これは本物の人間と見間違えるほどの人形なのだよ。美しいだろう?この国で一番美しい容姿にしてくれと注文したんだ。ほら、手足もこうしてすぐに直せる。君へのプレゼントだよ。」
叔父様の声は、どこか遠くの出来事のように聞こえた。
恐怖で震えながら助けを求めて周囲を見渡せば、そこには「美しく着飾った人々」が溢れている。
――まるで、今ここで壊れたお人形みたい。
それは、先ほどまで生きていると思い込んでいたそれと重なった。当時の私は、まるで人形に囲まれたような感覚に陥っていたのだ。一度芽生えた不信感は、パニックとなって私を襲った。
◇ ◇ ◇




