第37話 写真
「え?
お婆様達の昔の写真を見たいって?」
「はい。
できないでしょうか?」
「構わないけど、事件と関わりあるの?」
「あるかも知れないし、ないかも知れない。
でも、ハルトマン財閥の創設者ゴンゾウについて知りたいんだ」
「ゴンゾウ様ね。
まあいいわ。
事件解決に役立つのならね」
「ありがとうございます」
「付いて来て」
ミレイが案内したのは私室だった。
私室は広々としていて、
高価な家具も置かれていた。
「ふふーん、私達ハルトマン財閥が入る部屋だから特別よ」
「いい感じの部屋!
素敵!」
「そうでしょ?
結構気に入ってるのよね〜」
ミレイは本棚から本を指して探す。
「あっ、あったあった!
アルバムよ。
カコお婆様やゴンゾウ様が写っている写真がある筈よ!」
ミレイがアルバムを開くと、
昔ながらのモノクロ写真が次々と出てくる。
「へぇ〜
結構あるのね、写真」
「昔はエーマンのところで写真を撮っていたらしいのよ。
お婆様は【カイシシティ】にいたんだって」
「カイシシティ?
何か聞き覚えがあるような?」
「まあ、最近はあるでしょうね。
だって、カイシシティって、
サトシ・ボーマンが隠れていた場所なんだから」
「……えっ?
サトシ・ボーマンもカイシシティにいたのですか!?」
「あら、知らなかった?
そっか、新聞にも小さく載ってたからな〜」
「そ、そ、そ、それじゃ、
メラカ・エーマンの死体が発見された場所も」
「……カイシシティよ」
カナイチの頭はまるで鈍器で殴られたように、
ぐわんぐわんとしていた。
「でも、お婆様が住んでいた場所に居座るなんて……
サトシ・ボーマンも大胆不敵って言うか……
灯台下暗しってよく言ったものね!」
「うん。
怖くなかったのかな?
私だったら、被害者家族から遠く離れておきたいと思うな。
だって、自分の顔、よく覚えられているって思うじゃない」
「ゴンゾウ様がいきなり亡くなったからね。
犯人探すよりも、
財閥を建て直すことに時間を注いだようよ。
ゴンゾウ様が築き上げたものを、
いきなり相続されたようなものだし……
女性で若かったからみんな大丈夫なのかって、
不安な目で見られていたらしいよ。
でも、周囲の目を実力で納得させて、
今日まで財閥を繁栄させたから凄いのよ、お婆様!
今はもうお母様に全権を任せているけどね」
「そっか。
財閥から身を引いたんだって」
「ええ。
もう時代は新しくなった。
財閥も自分のような古い考え方を固執するよりも、
新しい考え方ができる人物に任せる。
抜擢されたのが私のお母様なのよ。
だから、少しプレッシャーを感じているようだけど、
お婆様から励まされているのよ。
貴方なら大丈夫だって」
「本当に素敵ね、カコ様」
「うん」
「ミライさんが財閥を引き継いだのっていつだったっけ?」
「二年前の二月一日よ」
「へ〜」
「おっ、あったあった!
カナイチくんが見たがっていたものよ」
「見つかったのですか?」
「うん。
見て見て」
ミレイは写真を広げて見えやすくした。
「着物を着た綺麗な女性いるでしょ?
彼女が若かりし頃のカコお婆様なのよ」
「わっ!
ミレイ先輩にそっくり!」
「でしょ!
カコお婆様も喜んでくれたのよ!
若かりし頃の自分にそっくりで期待できるって!」
「髪はミレイ先輩の方が短いけど」
「い、いいじゃない。
まだ長髪にするつもりはないのよ……
それに短髪もいいじゃない」
「……え?」
「どうしたの、カナイチ?」
「髭の男性は誰だろうって……」
「ん?
ああ、彼がハルトマン財閥の創設者。
ゴンゾウ様よ」
「う〜ん。
結構体格はいいのね」
「ええ。
昔は冒険者をしていてね、
資金を稼ぎながら、体も鍛えていたんだって」
「へぇ〜
髭といい体格といい……
まさにワイルドな冒険者って感じね!」
「そうなのよ!
冒険者ギルドにもいそうじゃない?
ワイルドな戦士って感じの」
「メルヴィンさんみたいね。
そうでしょ、カナ……
イチ……?」
しかし、カナイチの顔は優れていなかった。
カナイチはゴンゾウの顔写真を見て、
段々と青くなっていた。
まるで、写真に潜む闇を、
カナイチ自身の目で見つけたように。




