第32話 第一の事件
カナイチ達は問題とされる土砂崩れが起きた現場に向かった。
「どひゃ〜!
こいつはすげえな」
ゾウゴは呟いて驚き、興味深そうに見ていた。
「どうですか?」
「カナイチか。
ああ、見ての通りさ」
アルベルトは困ったような感じでため息を吐いた。
「山の向こうから土砂が流れたらしい」
「原因は?」
「今のところはまだなんとも言えないが、雷が落ちる大雨だ。
土砂崩れが起きても不思議はないさ」
「そうですか……
復旧には時間が掛かりますか?」
「……大雨が上がってからだな。
そうじゃないとまた土砂崩れが起きて大変なことになるからな。
でも、まあ大丈夫さ。
こっちにはゴーレム使いの冒険者もいるし、救助要請もしている。
そっちの食料が持つのなら一日から二日で開通できるさ」
「ミライさんは一週間は保つと言ってましたね」
「一週間保つのならありがたい。
なら、大雨が上がり次第すぐに取り掛かればすぐだ」
「お願いします」
「なんだ〜
一日、二日か」
ゾウゴは残念そうに呟いて雨が本格的に降り注いできたため馬車に乗った。
「……なんだ、あいつ?」
「もう一人の男が彼をゾウゴと呼んでいるようでしたけど」
「ゾウゴね」
他にも何人かの野次馬が興味深そうに土砂崩れを眺めていた。
「……彼には気をつけた方がいいですよ」
「え?」
「もしかしたら彼があの予告状を出した張本人かも知れません」
「何?
張本人っては根拠はあるのか、カナイチ?」
「実はーー」
カナイチがアルベルトに話している間、馬車が離れた時だった。
ゾウゴが乗った馬車が爆発したのだ。
車部分が爆破によって膨れ弾く。
「なっ!
何!?」
「ぎゃあああああ!」
爆発によってゾウゴは火だるまになって苦しんでいた。
しかも、指などがところどころ吹っ飛ばされて欠損している。
馬も爆発に巻き込まれ即死。
「た、助けてくれ〜!」
「きゃああああ!」
「うわああああ!」
ゾウゴの凄惨な場面を見た野次馬は驚き、恐怖を抱いていた。
目の前で人が爆発し、燃え上がっている。
恐怖するなと言う方が無理だ。
「た、助け……」
助けを求める言葉を呟いてゾウゴは丸こげになってバタリと倒れた。
雨によって多少は鎮火しているが、ゾウゴの体には小火はまだ残っている。
「お、おい!」
「……だめだ。
もう息がねえ」
「馬、馬車が爆発した〜!」
「ま、まさか俺達の馬車も〜!?」
「ひいいいい!」
「お、落ち着いてください!
大丈夫です!
我々がいますので!
馬車には乗らないで私達の誘導に従ってください!」
「先輩」
「……わかっている。
予告状は爆発を示していたんだ……
サトシ・ボーマン本人か……
サトシ・ボーマンを名乗る人物がやったことかわからないが……
予告状が出た以上ーー」
「……殺人事件」
「そう言うことになるな……
しかも、目の前で爆発したってことは犯人はこの中……
もし、爆弾が時限式ならば……
屋敷にいる誰かが……」
「殺人犯になる」
ゴクリとアルベルトは息をのんだ。
「……先輩、とりあえず他の馬車も調べましょう。
野次馬が言ったように他にも爆弾が仕掛けられているかも知れませんし」
「そうだな……
カナイチ、手伝ってくれ」
「わかりました。
罠を仕掛けるのは盗賊の得意分野ですから」
「おい、こっちを手伝ってくれ!
ただし、爆破した馬車がある以上、いきなりの可能性もある。
慎重に、いつでも逃げられるように調べてくれ」
そう言ってカナイチ達は手袋をはめて残った馬車を調べた。
だが、カナイチ達が危惧していたようなことはなかった。
少なくとも、カナイチが見たところでは爆弾は仕掛けられていなかった。
「こっちはありません」
「こっちもだ」
「……爆弾はあの馬車に仕掛けられていたらしいな」
「……爆破された馬車にゾウゴと呼ばれた男が乗ると決まっていたのなら」
「それなら、ゾウゴを狙った殺人かも知れない……
か」
「そういうことです……
……急いで戻りますよ」
「戻るって……
おい、カナイチ!」
カナイチは汗をかいて戻った。
もし、ゾウゴを狙って爆殺したのなら……
もう一人も狙われている可能性が浮上してきた。
その方法が爆破だった。
ならばアドランがいる場所にも爆弾で爆破される可能性があることになる。
不安がカナイチを支配していた。
「はぁはぁ!」
爆発をしないにしても、少なくとも急がないとその男が殺される可能性が高い。
最悪な出来事を脳裏に浮かんでカナイチは走る。




