第31話 土砂崩れ
「ま、マリナさん」
「どうかしましたか?」
「いえ、大きな声で言えないのですが……
先ほどの雷の影響でしょうか、ここを繋ぐ唯一のトンネルが土砂によって通れなくなりました」
「……!
それは本当ですか?」
「はい。
幸いなことに音から危険を察した者のおかげで被害は出ませんでしたが……
この雨です……
復旧するのにどのくらい時間が掛かるのか」
「そうですか……
わかりました。
私の方でミライ会長の意見を伺おうと思います。
貴方は他の冒険者と連携をとって事態の収束を図りなさい。
難しければ近くのギルドに協力要請を」
「はっ!」
そして、命令を受けた冒険者は急いで走って行った。
「申し訳ございません、ミライ会長。
少々時間よろしいでしょうか?」
「はい、何でしょう?
例の脅迫文のことでしょうか?」
「いえ、それとは別のことでしょうが……
実は落雷が原因でここを繋ぐトンネルが埋もれてしまい」
「そうなのですか?」
流石のミライもそのことには驚きを隠せないでいる。
「はい。
我々の方でも復旧作業を取り組んでいますが……
この雨です。
再びトンネルが使えるようになるまでにはどのくらい時間が掛かるか」
「……わかりました。
ご安心なさい。
ここには食料も豊富にあります。
緊急事態用の非常食も完備。
最低でも一週間は保つでしょう。
この会場に全員を留めるのは難しいとは言えません」
「わかりました。
一週間以内に通れるようにしておきます」
「それでは、私は念の為にお母様にも報告しておきますわね」
「はい」
そして、その会話を聞いていたカナイチ達。
「大変なことになってきたわね、カナイチ……
でも、私達にできることはないからここは先輩に任せようっか」
「うーん」
「……?
どうしたの、カナイチ」
「脅迫文が送られた後に土砂によってトンネルが通れなくなった……
偶然……
なのかな?」
「え?」
「爆弾で土砂を起こすことは可能だし」
「……まさか、ここにいるサトシ・ボーマンが爆弾を使って土砂を起こしたって?」
「それはまだわからないよ。
けど、あの文には悲劇が起きると明言していたんだ。
犯人がそれを起こす気なら、僕達を簡単に出られないようにする必要があった……
そう考えてもちっとも不思議じゃないよね」
「……ここを出入りした人が犯人?
冒険者なら爆弾の知識もあるし、ここを出たり入ったりしてタイミングを測るのも可能よね」
「……時限爆弾の可能性だってある。
まだ、ここにいる人達が犯人ではない訳ではないよ」
すると、ミライが戻ってきて少しだけマリナと相談。
マリナは顎を指して考えるが首を縦に振った。
「パーティーを盛り上がっているところを申し訳ございません。
実は先ほど雷の影響でトンネルが埋もれてしまいました」
それを聞いた人は不安を口にしてざわつく。
「大丈夫です。
この場には優秀な冒険者もいます。
その冒険者達が復旧作業を手伝ってくれています。
すぐに繋がるでしょう。
その間、この会場で皆様をもてなします。
今回に限っては宿泊費は免除で部屋に泊まって休んでくれても構いません。
どうかパニックにならずに、このパーティーを楽しんでください」
そうミライが説明することでなんとか落ち着きを取り戻した。
「……へぇ、そいつは面白そうだな」
そう呟いたのは【ゾウゴ】と呼ばれた人物だった。
カナイチも覚えがある。
怪し気な言動をした男の一人だった。
「ちょっと見てくるわ」
「お、おい、正気か?
危ないぞ」
「平気だって。
冒険者だっているし、少し見てくるだけだ。
この距離なら馬車で行っても楽勝だしな」
「……俺も行こうかな?
気になるし」
そう言って何人かが野次馬根性で会場を出た。
「行っちゃった……」
「アドラン、ここは任せたよ!」
「カナイチ?」
カナイチの目は鋭くなって、まるで警戒しているような感じになっていた。
「やっぱり、気になるし……
ミレイさんとか気にしてあげて!」
「わ、わかった……
気をつけてね、カナイチ」
「ああ!」
そして、カナイチは嫌な予感がして走っていく。
カナイチは一つの考えを脳裏に浮かんだのだ。
爆弾魔の名を出すことで周囲の人間の警戒をそっちに向けさせる。
土砂など起こればさらに警戒と注意がそっちに向けられる。
その間に準備をしてミレイに何かをしでかすと……
それを妨害するためにカナイチは走った。




