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カナイチ・ホームズの好奇心ー冒険者ギルドの小さな名探偵ー  作者: 才練人
〜令嬢婚約パーティー殺人事件〜 第2章 第一の事件

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第30話 雨と音

「ヒィ!」

 パーティーの途中でずぶ濡れになっている冒険者がいた。

「どうかしましたか?」

「外、凄い雨が降っているのですよ!

 だから、見回りをしている奴らも急いで帰ってきたのです」

「そうなのですか。

 ちなみに怪しい人物とかが来た様子はありますか?」

「いえ、それはありません。

 会場を見回りをした時もそうですし受付もそうですがそのような人物はいません。

 雇った者の中には魔獣使いもいて、犬型魔獣を使役している人もいます。

 火薬の匂いを覚えさせた犬型魔獣を使って調べましたが、所持品にそのような物もありません」

「なるほど。

 今は?」

「この雨ですからね。

 冒険者は順番に雨具を取りに来てますよ。

 この雨では犬型魔獣も殆ど役に立ちませんし、今は休ませています。

 休憩時間になった冒険者はシャワーを浴びたりして各々好きに過ごしています」

「わかりました。

 引き続き警戒を持って警護なさい。

 あのような物が送られたのです。

 何が起きてもいいように心して掛かりなさい」

「了解しました!」

 敬礼した後、その冒険者は引っ込んだ。

「うわ……

 本当に凄い雨」

「そうだね……

 山の天気は変わりやすいって言うし……

 それに来た時も微妙に雲が大きかったような」

「ついてないわね」

「まあ、雨が降りやすい時期にしてもいいようにしたけどね」

「え?」

「ほ、ほら。

 もし、爆弾が爆発して会場が火の海に包まれたとしても鎮火できそうじゃない?」

「それは誰が?」

「カコお婆様よ。

 ひい爺様が殺されたの相当堪えたようで……」

「へぇ〜」

「……それはいつ頃くらいから?」

「え?

 そうね。

 そりゃ、晴れの日の方が映えるイベントもあるから毎回じゃないわ。

 でも、その時も爆弾とか犯罪者対策はしっかりしてるわよ」

「……ふむ」

「どうしたの?」

「……やっぱり妙なんだよな、あの予告」

「え?」

「あれを出した犯人はわざわざ昔の爆弾魔の名前を使って出したんだ。

 その爆弾魔のことや脅迫状を出す家のことを調べなかったのかな?

 調べたら余計にハルトマン財閥が主催のイベントにあんなことを書かないと思うんだ。

 さっき、ミレイさんが言ったように爆弾などの犯罪対策をバッチリ取られている。

 それが今回だけじゃない。

 それはしっかり調べれば誰でもわかることの筈なんだ。

 どんなに凄い爆弾も爆発する前に対処されたら意味がない。

 それをわかった上で出したことになる」

「……確かに妙わね」

「それに脅迫状の内容は“ 今宵、再び会場に悲劇を起こるであろう……”とわざわざ書いてある。

 目的は何?

 金?

 人の命?

 過去の再現?」

「それは……」

「金はいくら出せとも書いてませんね。

 仮にそうであって、今爆発させて火事場泥棒してもギルドは逃さない」

「過去の再現もどうだと思う。

 過去の事件は開始とともに起きたのだから今も続けている時点でそれはないわ」

「そうなると……

 人の命?

 誰の?」

 そして、全員がうーんと唸ってしまう。

 議論をしようにも、これ以上は手掛かりはないのでどうしようもない。

「あれ?

 どうかしましたか?」

 ハルヒコは不思議そうにこちらに来た。

「あ、いえ……」

 マリナが目で語っている。

 何も起きていない以上、混乱を起こさせないためにも今は秘密にするようにと。

「次の依頼はどうしようかなと思いまして」

「依頼?

 ああ、カナイチくんは冒険者だからね。

 考えるのは普通か」

「ハルヒコさん、そりゃ冒険者が依頼を受けるのは普通ですけど、カナイチは普通じゃないんですよ」

「え?」

「グラットン・ベアの事件の時から変わってないのよ。

 普通の冒険者は魔獣を討伐する依頼を好んで受けるけど、カナイチはその真逆。

 誰も受けないようなもの探しの依頼が殆どなのよ」

「それで食っていけるし、お金にも困ってないんだけどな」

「それは私が偶に討伐依頼を一緒に受けているからじゃない。

 戦うのは基本私だし」

「あ、あはは……

 ギルドとしては塩漬け依頼を消化してくれるのはありがたいのですけどね。

 その点では確かに珍しいのですよ」

「カナイチくんは強いの?」

「ゴブリンのような低級の魔獣や人相手には強いですけど、それ以上の敵は厳しいわね。

 カナイチは賢いから罠とか探索とか盗賊らしいこともするけど、その分攻撃の威力も低いのよ」

「盗賊といえば盗みだけど」

「確かにカナイチは盗賊ですし、手先もいいけどそう言うことはしないわ」

「手先いいの?」

「まあ、そうですね。

 簡単な手品ならできますよ」

「へぇ」

 その時、雷が落ちた。

「キャッ!」

 その後で「ドンッ!」と言うような轟音が遠くで響いた。

「雷だ」

 アドランが驚きカナイチは平然と雷を見ていた。

「アドランって強いけど相変わらず雷とか怖がるわね」

「し、仕方がないでしょ!

 こ、怖いもん!」

「あれ?

 遠くで煙が?」

 黒い煙が一筋に空に上がっているのが見えた。

「なんだろう?」

「雷が当たったんじゃない?

 この雨なら小火なら消してくれるわよ」

「そうだけど……」

 そして、再び雷が落ちた。

 この時、カナイチ達は知らなかった。

 闇が悲劇を運んでいることを……

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