第27話 ハルトマン財閥
「へ〜、グラットンベアの事件、
改めて聞くと悲しい事件だったんだ」
ハルヒコは驚いたようにカナイチの話を聞いていた。
「ミレイ。
あら、アドランちゃん。
お久しぶりね」
「あ、お久しぶりです」
アドランが頭を下げた相手は【ミライ・ハルトマン】。
ミレイの母親で年齢は四十八歳。
「お久しぶりです」
「カナイチくんもお久しぶり。
楽しんでいってくださいね」
「はい」
「お婆様、行きましょう」
「ええ……
行きましょうか、セバスチャン」
「はっ!」
お婆さんの名前は【カコ・ハルトマン】。
既に身を引いた身だが、ハルトマン財閥を取り仕切り、
今日まで発展させた人物でもある。
年齢は六十六歳。
後ろに従っているのは、
セバスチャンと呼ばれる執事で、
長年ハルトマン財閥を支えてきた。
「本当にすごいのよ、お婆様」
とキラキラした目でカコ・ハルトマンを見るミレイ。
「確か、財閥の立役者だったのでしょ?」
「うん。
創設者である【ゴンゾウ・ハルトマン】が亡くなっても、
たった一人になったとしても財閥を建て直して、
今日まで発展させたのよ」
「ああ、ゴンゾウ・ハルトマンって、
確かテロに巻き込まれて死んだって」
「ええ、そうよ。
しかも、その一人が最近老衰で病院で亡くなったらしいのよ」
「確か【サトシ・ボーマン】だっけ?」
「そうらしいのよ。
亡くなる直前まで偽名で通していて、
誰も気づかなかったのよ。
しかも、驚いたことに逃亡生活中に、
一人を殺して埋めたらしくってさ」
「そうなの?」
「ええ。
その爆弾魔が言った場所を掘っていたら、
言った通り白骨化した遺体も見つかって……
つまり、二度の事件を迷宮入りにさせたことになるのよ」
「そう言えば、会場に入る時、
結構チェックが厳しかったよな」
「そりゃそうよ。
事件が起きた時は、
ハルトマン財閥の記念式で盛り上がっての犯行だもの。
しかも、大勢の死者を出したから、
二度目は起こさせないつもりで、
チェックも厳しくしているし」
「怖いよね。
その埋められた死体も、
自分を見つけられたから口封じに殺したのかな?」
「かもね。
逃亡犯は逮捕されないために色々やるらしいし」
「……てか、パーティーの時にやる話でもないわね。
とにかく、私もお婆様のように、
一族を引っ張る後継者を目指しているのよ」
「ミレイさん、いつもその話ばっかりで」
とハルヒコは少しだけ笑っていた。
カコも古い付き合いの老人達と話し込んでいる。
「カコ様と話をしている人達は?」
「ゴンゾウ爺様が創設した時の社員で、
亡くなって以降はカコお婆様と一緒に頑張ってきたのよ」
「へ〜」
「何だ、ハルヒコ。
ミレイの近くにいたのか?」
「あっ、アキト兄さん」
「ハルヒコさんのお兄さん?」
「そうだ。
俺は【アキト・ノーマン】。
まあ、ノーマン財閥の後継者だな」
「油断しないでよね、アナタ。
栄枯盛衰って言葉もあるくらいだから」
「それを言うなよな、【ミリィ】」
「ま、まあまあ、お姉様」
ミレイの姉の【ミリィ・ノーマン】。
旧姓はハルトマンでノーマン家に嫁いだ。
「ナツメさんは元気ですか?」
「ああ。
母さんは相変わらずの元気だよ」
「でも、お兄さんもここに来ていたのですね」
「当たり前よ。
ハルトマン財閥はノーマン家に関わりのある財閥だし、
人脈もすげえからな。
俺も若輩ながら顔を覚えてもらおうって魂胆だ」
「あ、私はアドラン・ナナリンと申します」
「僕はカナイチ・ホームズ」
「兄さん、彼は冒険者だけど探偵でもあるんだ。
カナイチくんが解決してきた事件も聞いたけどすごいんだ」
「へぇ。
冒険者でありながら探偵か。
面白いな!」
「いえいえ……」
「……貴方達って付き合ってるの?」
そうミリィは率直に聞いてきた。
「「えっ」」
「ち、違いますよ!
カナイチとは確かに幼馴染で学校も同じでしたけど、
ミリィさんが言うような関係じゃありませんって!」
「はいはい、いつも通り。
お姉様、二人にそういうといつも違うって言うから、
言っても無駄ですよ」
「あら?
こう言うことは早めに結論付けた方が良いのでは?」
「いや、そこは本人達に任せようぜ。
全く、ミリィは相変わらずの合理主義で、
そそかしいんだから。
俺との結婚もスピード婚だったしな」
「幼い頃から決まっているから駆け引きは意味ないじゃない」
「そういう駆け引きがいいだろ」
「ミレイさんも許嫁がいたのですか?」
「ううん。
ハルヒコさんとは恋愛結婚よ。
だけど、そう言うのはカコお婆様がきちんと判断してくれるのよ。
私のお母様もミリィお姉様も全てカコお婆様が決めて、
バッチしなの!」
「僕の場合は、結構根掘り葉掘り聞かれたんだけどね」
「なんだったっけ?」
「確か男女の交友関係はどうとか、
将来の夢とか……
全部答えてしばらくして、
やっと結婚の許可を貰えたんだ」
「へ〜」
「まあ、彼は意外と女性関係はしっかりしているから」
「意外とって、おい」
「まあ、あんた達も早く素直になりなさいよ」
「だから、違うって!」
「あ、あはは……」
カナイチは恥ずかしそうに、
頬を赤くして掻きながら料理を食べる。




