第2話 別世界のような朝
『エルニア冒険者ギルド』。
そこには、昨日のヴェン音楽隊による賑やかさが残っているのか、朝になっているのに机の上で腕を枕にして眠りこけている冒険者達がいた。
ギルドの職員達や受付嬢までも眠たそうに大きな欠伸を出していた。
そんな時、暗い顔になっていたアルベルト達がギルドに帰って来た。
「お帰りなさい。
……あの、どうなさいましたか?」
【マリナ】受付嬢は早朝のアルベルト達を知っていたから、あまりの変わりように心配し、聞いてみた。
「……グラットンベア二体を討伐した」
最初に重たい口を開いたのはメルヴィンだった。
「それは、討伐ご苦労様です」
「……ただ、男の人が食い殺された」
「えっ……」
「……アタシ達、できるだけ早くグラットンベアを倒したんだけど……」
「……すまない。
……間に合わなかった」
「……そうですか。
……それは残念でした」
マリナは静かに黙祷した。
「ただ、人肉を食べた魔獣はとても危険です。
放っておけば、必ず被害は広がります。
救えなかったことに関してあなた達が悔やむ気持ちはわかります。
けど、あなた達が討伐してくれたことで未来の被害を未然に防いでくれました。
町に住む者の代表として、あなた達の活躍に深く感謝します。
ありがとうございました」
そして、マリナは深々と頭を下げてお礼の言葉を口にした。
「……こちらこそ、その言葉で多少救われる」
アルベルトは静かに頷いた。
「……それでは、男性の検分に行きます。
よろしければ、案内をお願いできますか?」
「はい」
マリナはギルドの奥の部屋に入り、アルベルト達はギルドの扉前まで行った。
アルベルト達が外に出ると、エルニアの町は朝の活気で満ちていた。
欠伸をしながら店を開いている人、友達と遊びに出掛ける子ども、主婦達が井戸端会議を開いたりなど。
「……まるで朝に起きたあの出来事が夢のようね」
ティーナがそう呟く。
だが、彼らはわかっている。
早朝に起きたあの凄惨な出来事は決して夢ではなく現実に起きたことを。
一台の馬車が通り過ぎる。
馭者は眠たそうに欠伸をして、アルベルト達に目を向けると、ぺこりと頭を下げた。
それをティーナは一礼し返した。
「お待たせしました。
それでは行きましょうか」
マリナを筆頭に多くの職員がやってくる。
「それではお乗り下さい」
ギルドが用意した馬車に乗ってアルベルト達はあの場所へ戻った。




