11 城門前の邂逅
アイルは宿舎で朝食を終えた後、義勇兵団の詰所に向かった。
首都からの指令は伝書鳩でとうに届いていた。彼には新しい名前と義勇兵の身分が与えられた。団章にはアインという名前と団員番号が彫られていた。
「ここから北の砦ブリスコーへ向かえ。城門の前で仲間と合流しろ」兵団長のゲルという男はそう命じた。北部人らしい彫りの深いいかつい顔をした男だった。
指令通り城門前へ向かうと、二人の女が待っていた。一人はさっきのエルフだった。もう一人は、長い金髪をした、僧服を着た女だった。彼女は子供達とお遊戯ごっこをしていた。
「こどもたちを心配させないよう、はやくかえってくるんですよ~」女の子が抱き着きながら言った。
「ままのいいつけ、たしかにまもりましゅよ~」僧服の女が言った。
アイルは黙ってみていた。エルフの女がニヤついた目で無遠慮にアイルを眺めてきた。視線が上から下まで体全体を舐りまわした後、股間の一点を見つめてさらにニヤつきだした。
アイルは彼女を無視した。僧服の女が子供たちとの挨拶を終えてこちらに向き直った。三人の間に多少の沈黙が流れた。
「イケメン」エルフの女がアイルを指さして口を開いた
「は?」アイルが言った。
「君イケメンじゃん」エルフの女にやつきながらいった。「あたしイケメンだ~いすき」
「はあ…」アイルは横目で僧侶の女を見た。僧侶は首をかしげてあらぬ方向を向いていた。
「ミランダはイケメン好きじゃないの」エルフは訊いた。
「ははは」ミランダと呼ばれた僧侶は、首を傾げて困った顔をしていた。
アイルはなんと答えてよいかわからなかった。また多少の沈黙が流れた。
「とりあえず自己紹介したいんだけど」
「あたしエイミー」エルフの女はいった。「弓使いの狩人よ。ひとはわたしを死線の鷹の目と呼ぶわ。きらーん」
アイルは胡乱な目でエイミーをみた。さすがに恥ずかしくなったのか尖った耳の先が赤くなった。ミランダが苦笑いしていった。
「あたしはミランダ。僧侶で回復魔法が使えます。よろしくね、アイン君」
「それなんだけど」アイルは少しためらってから続けた。「俺の本名はアイルなんだ。アインは偽名なんだ。俺のことはアイルと呼んでくれ」
エイミーとミランダは二人で顔を見合わせた。そして言った。
「わかった。よろしくね、アイル君」エイミーが言った。
「よろしくアイル君」ミランダが続けた。
三人は互いにうなずいた。そして城門から旅立った。




