エミリ、美少年を説得する。
よろしくお願いします。
今までの人生、凶器を他人から向けられたことがないわたしは、とりあえず彼を刺激せずに、震える声を隠して、声をかけて見ることにした。
「ええと、大丈夫?」
「あ、あの時の天使か。ここは死後の世界か?」
少年から殺気は消えた。
しかし、短剣をわたしに向けていることを忘れているのか、短剣はそのままだった。
お願いだから、まず短剣を先に下げてほしい。そして、あの時の天使とは??そんなに透き通ったアメジストのような瞳も持っているし、あなたの方こそ天使なのでは??
わたしは、場違いにもそんなことを心の中でツッコミを入れていた。
「ううん。違うよ。あなたはまだ生きているよ。こんな怪我と熱だから、まだ、安静にしないといけないけど……
あと、短剣を下ろしてもらえたらありがたいな。」
「ご、ごめん。」
少年はやっと短剣をわたしに向けていることに気づいたようだった。
慌てて短剣を下ろし、こう言った。
「おれはまだ生きているのか。恩人に向かってこのような行動を取ってしまって申し訳ない。」
少年は、無表情で感情がわかりにくかったが、生きていることを喜んでいるようには見えなかった。
わたしの体感温度が下がった気がするのだが、まあそれは置いておこう。
少年は、わたしの家を観察するように家中を見回した後、目的を達成し終えたように、こう続けた。
「看病をしてくれて、ありがとう。もう大丈夫だ。
何も持っていないが、これを受け取ってほしい。」
それは、少年にとって、なけなしのお金に見える1000ゼッタだった。
わたしが、お金を断ろうとすると、少年はそれを押し付けて、家からフラフラとして出て行こうとした。
「待って。」
わたしは慌てて、少年を引き止めようと手首を掴んだ。
「触るな!!」
そう言われて、わたしの手は振り払われ、警戒心を剥き出しにされた。
気軽に触ってしまって気分を害させて、申し訳ないな。反省しよう。あ!だけど、少年はどうやってこのベッドまで来たと思っているんだろう??この反応からすると、自分が触れられた、しかもお姫様抱っこされた、と知られれば、なんか色々まずいのでは。これは、言わないでおこう。でも、見るからに、まだ歩けなさそうだし、なんとか、ここに残るよう説得しよう。
わたしはそう、脳内で結論づけた。
わたしは急な出来事で驚きながらも、頭をフル回転させて、今考えたことを加味し、ゆっくり言葉を選んで、紡いでいった。
「急に触れて、ごめんなさい。でも、あなたはこの体だから、今、外に出ても危ないと思うの。」
少年の警戒心がほんの少し和らいだのを見て、さらに言葉を続けた。
「わたしは、この広い家で1人ぼっちだから、あなたがここで休む事は大歓迎なの。
だから、ここで体力回復するまで休むのはどう?」
そういうと、少年は、また警戒を強めて
「見返りのない優しさや親切ほど恐ろしいものはない。
後でおれが払い切れないような見返りが要求されるんだ。」
と言った。
わたしは、こんなに幼い少年がこのように考えることが悲しかった。
わたしがこの子と同じ歳くらいの時は、たくさんの人に親切にしてもらったし、助けてもらった。
だから、わたしは、少年の力になりたいと思ったので、改めて、少年が気楽に家で休めるように、条件を提示した。
「それじゃあ、わたしは 1人で寂しいから、おしゃべり相手をしてくれない?
そして、もし、あなたがすぐに行かなければならない場所が無いんだったら、わたしは、やりたいことが多いから、怪我が治った後に、その手伝いをしてくれない?」
少年はまだ訝しげに
「だが…それだけでは足りないと思う…」
と言った。
だけど、少年の反論はそこで終わった。 少年は体力の限界を迎えたようだった。
フラフラとして、冷や汗がふきだしていた。
とりあえず、まずは、早く、休ませてあげようと思い、わたしは、少年を安心させるために、笑顔で先ほどの言葉に返事をした。
「それだけで、十分だよ。
あなたが、 早く休んで治してくれることが、わたしが今、1番嬉しいことだよ。」
少年は、目を見開いていたが、限界だったからだろう。どうにか自力でベッドに向かい、横になった。
途中、手を貸そうとしたが、さっきのように、触れらたくない様子だったので、見守ることに徹した。
改めて、少年の看病を続けたが、こんな幼い子が、辛い目にあっていることに胸が張り裂けそうだった。
これも何かのご縁だ。わたしは弟も妹もいなかったから、弟や妹に憧れがあった。だから、彼がわたしの家にいる間、弟だと思って大事に接したいとおもった。だから、彼に優しくして、彼にとっての脅威から、少しでもいいから守ってあげようと決心した。
そういう思いで、少年の看病を続けて、少年はまるまる一日眠り続けた。
これが、わたしには予想がつかなかったほど今後長く続く少年との生活の幕開けだった。
10話まで読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
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