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捏造された終末

温泉スパで「最強のポーション肌」を手に入れたものの、ベレッタの過剰な収集癖とアルフレッドの「沸騰湖入浴」による湯気で、私の精神的疲労はもはや限界に達していた。


「……少し静かな場所へ行きましょう。歴史の重みに触れれば、この騒がしい精神の鼓動も少しは鎮まるかしら」


私は、温泉街の裏山にある古代遺跡「エターナル・レリック」へと一行を向けた。苔むした石柱と、静寂に包まれた地下回廊。ここなら、私の高貴な精神も癒やされるはずだった。


最深部の石壁に、ひときわ巨大で禍々しい壁画が彫られていた。そこには、数千年の時を経て語り継がれる「終末の予言」が記されていた。


「……見ろ、この壁画を。恐ろしい……!」


アルフレッドが、戦慄した面持ちで壁画を指差した。

 そこには、『あらゆる美食を独占し、鋼の筋肉を持つ漢と、影に潜む死神を従え、世界を飢餓と毒舌で支配する傲慢なる影』が描かれていた。


「……この、食べ物を独占し、騎士と暗殺者を従える傲慢な影……。まさか、伝説の魔王とは……セレスティーヌ様のことだったのですか!?」


「ちょっと、失礼ね。誰が魔王よ」


私は壁画をじっくりと観察した。確かに、中央に座る影のシルエットは、今の私の立ち姿に酷似している。……が、納得がいかない。


「……何よ、この鼻のライン。低すぎるわ。あと、この手に持っている禍々しい杖は何? 趣味が悪いわね。ここは杖じゃなくて『黄金のカトラリー(フォーク)』に変えなさい。あと、背景の炎は邪魔よ。もっと高級感のある『フォアグラのソテー』の絵にしなさい」


「御意。迅速に、歴史をリフォーム(修正)いたしますわ」


ベレッタが短刀を振るい、壁画の魔王を「セレスティーヌ様万歳」という、もはや宗教画に近い構図へと書き換えていった。魔王の影は、優雅にステーキを嗜む「至高の王女」へと変貌を遂げた。


「おおお……! 予言すらも自分好みに書き換えてしまう、セレスティーヌ様の圧倒的な正義! 運命すらもパッキングするその力、まさに私が仕えるに相応しいお方だ!!」


アルフレッドは、正義の魔王の再来が確定した(と勝手に解釈した)ことに深く納得し、壁画の前で「正義の敬礼」を捧げた。


「これで歴史は証明されました。世界はセレスティーヌ様の胃袋を中心に回っているのですな!」


……まあ、あのアホが納得しているならそれでいいわ。私は新しくなった「黄金のカトラリーを持つ私」の壁画に満足し、鼻歌混じりに遺跡を後にしようとした。


帰り際、街の入り口で近所の子供たちが泥だらけの手で駆け寄ってくるのとすれ違った。


「あー! 僕たちが昨日書いた、遺跡の『最強のボス』の絵、誰かが変えちゃってたよー!」

「嘘でしょー!?」

「本当だよ! なんか変なお姉さんの絵になってる! 今度は、もっと格好いいドラゴンとか書こうよ!」


子供たちが使い古した炭を手に、再び壁画に「ドラゴンの羽」や「変なヒゲ」を落書きしていくのを、私たちは呆然と見守った。


「……アルフレッド、あれ、ただの子供の落書きだったみたいね」


「……はっ。正義の予言ではなく……いたいけな子供の遊び、だったのですね! 今日も正解は平和で、正義に溢れている!!」


「……迅速に、あのガキ共をパッキング(教育)して参りましょうか?」


「いいわよ、もう。歴史なんて、その程度のものよ。さあ、行くわよ。次は本物の美食が待っているフェス会場よ!」


私は、歴史の真実(笑)よりも、今夜のディナーのメニューを考えることに脳細胞を切り替えた。

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