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2人のサイコパス  作者: アズキ
第5章

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1,共犯

「私のこと、初めから知っていたんですか?」


黒崎の問に、志村は黙ったままだった。

顔のありとあらゆる汗腺から汗が吹き出ている。

焦っているのは確かなようだ。

石井はこの状況、黒崎の読んだ通りだと関心していた。


黒崎が取り調べ室に最初に入ってきた時、石井は部屋の外へと呼ばれた。

とあることを頼むためだった。

呼ばれた時、なぜ自分なんかが呼ばれたのかと不思議に思った。

取り調べ室で奴は何をしているのか分からない。

黒崎から内容を聞かされたときでさえ、一か八かの賭けのようにさえ思える内容だったのだ。


「石井さん、でしたよね。

黒崎って言います。

頼みがあって、今ここに呼びました。

部屋の中で私の名前を絶対に呼ばないようにしてもらえますか?」


「え、それは一体全体、どういうことで?」


「先程、取り調べ室に入った時、妙なことに気がついたんです」


「妙なこと?」


「はい、志村さんの表情です。

私の顔を見るなり、なぜか嬉しそうな顔をしていました。

何かがあるとも言えませんが、何もないとも言い難いことなので、もしかしたら、彼は既に私のことを知っているのかもしれない」


「まさか、そんな」


否定こそしなかったものの、表情1つで読み取ってそこまで考えられるものなのかと驚きを隠せなかった。

若いが捜査1課にいる理由がハッキリとするぐらい優秀であることの証明になる。

半信半疑状態ではあったが、やるだけ損ではないと考え、黒崎の提案を承諾した。

関心したの同時に、自分のことはまで読み取られてしまいそうでリアルな友達にいたらどうなのだろうか?と考えてしまう。


「ちなみに、私が来るまでの間、志村さんの様子を教えて貰えますか?

石井さんから見た、単純な意見でいいです」


「なんていうか、その、落ち着きがなかった?っていうんですかね。

足は貧乏ゆすりしてましたし、どこか焦ってるようにも見えました」


「分かりました。

それが分かれば十分です。

部屋に戻りましょう」


そして今に至る。


結果的には、罠にかかったように、志村は黒崎の名前を口にした。

黒崎は志村に名乗っていないし、石井も黒崎の名前を呼ばずに、パソコンのタイピングだけをしていた。

つまり、志村が黒崎の名前を出せるのは事前に名前を知っていたということになる。

その方法が分からないだけであって。


「志村さん、あなたはなぜ、私の名前を言えたんですか?

私、観察眼は鋭くてねぇ。

部屋に入った時に、あなたの表情に違和感を覚えたんです。

だって、初対面の相手を見て、かなり嬉しそうな顔をしていた。

退屈していて、新しい刑事が来たという喜びからかもしれない。

でも、私は注意深く、用意をしました。

結果、あなたはまんまと私の罠にかかったんです」


志村の表情は先程までとはうって変わって余裕が全くなさそうになっていた。

言葉を発せず、足の貧乏ゆすりがまた戻ってきている。

トントンという音が絶えず聞こえている。

黒崎と最初に対峙した時の、嬉しそうな顔はどこか遠くへ逃げていってしまったらしい。

今は口角が下がりに下がって、ピクリとも動かない。

動いていたのは瞼だった。痙攣を起こしていたのだ。

この人なら、真相を掴める。

石井はそう確信していた。


「私がここに来るまで、あなたはかなり焦っていた様子だったらしいですね。

後ろにいる石井さんに聞きましたよ。

それが、私が部屋に入った途端に、ピタッと止んだ。志村さん、嬉しそうでしたもんね」


煽るように黒崎が話すが、志村は反撃に出ようとはしない。

しないというよりも、反撃できない、というほうが正しいだろう。

志村は今、必死に、頭の中でこの状況をどう気に抜けようかと考えているに違いない。

身から出た錆をどうにかしなければ、負けてしまう。

しかし、そんな道が今の志村にとってあるのだろうか?

黒崎と話しているのを見ているとそう思えた。

志村にとっての「勝ち」というものは石井には分からなかったが。


「事前に、私のことをリサーチしていた。

と考えるのが普通ですね。

でも、あなたは警察と関係性はないと思います。

じゃあ、どうやって私のことを知ったのか」


ジッと黒崎のことを志村は見つめる。

石井もタイピングをする用意をしながらも、黒崎の方を見た。


「誰かから教えてもらったんでしょう?

例えばそう、今、無差別殺人を行っている共犯者から、とかね」


パソコンに打ち込みながらも、それではまるで…と考えを疑った。

その疑いに答えるかのように黒崎は続けて言う。


「そうです。

私はあなたの共犯者は、警察関係、または警察の方と密接に関係があった人間だと考えています」


タイピングし終わった時、1つの連絡がくる。

石井はそちらに目を通して驚愕した。

すぐさま、黒崎に伝える。

黒崎は表情1つ変えずに、まるで予想通りと言わんばかりに志村に話しかけた。


「考え、考察だという必要はなくなりました。

志村さん、これを見てください」

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