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2人のサイコパス  作者: アズキ
第4章

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8,最終段階

女は人目が着く使われていないビルに忍び込んでいた。

屋上から見下ろす景色は夜なのに明るく、自分のいる位置の方が暗い。

本来なら、自分のいる位置と地面の明るさは同じである。

月の光に照らされて、大きなビルによって影ができ、下にいるものを闇に閉ざす。


女は役目を果たしたが、まだ最後の役目が残っていた。

女は男から教わった。

愛について、永遠の愛の証明。

男と関わるうちに、彼のために死にたい、彼に対して永遠の愛の証明をしてやりたい、そう思うようになっていった。

男は女の言うことをなんでも聞いてくれた。

自分を絶望させた相手を殺したいと言った時、協力をしてくれると言ってくれたことを女は思い出す。

「殺す」という言葉がなぜ、あれだけ心地よく聞こえてしまうのだろう。

本来なら裁かれるべき行為。

それが、とても美しいと感じられる。

人間同士で殺し合うことがどれだけ愚かなことか。

しかし、人間は耐えず、殺しを行ってきた。

おそらくは、そういう種族なのだ。

法律でそれを止め、抑制された殺意が溜まった人間が限界に達した時、殺人に至ってしまうに違いない。


男は本当に頭がよかった。

計画を立ててくれたのも彼だ。

事は彼が計画した通りに進み、最終段階へと突入するのである。

女の首にはロープが首輪のように巻かれていた。

彼女は今、死地に立っているのである。

ひとたび、前に1歩踏み出せば、現世から離れてしまう。一瞬で。痛みも感じず、目の前が一瞬にして真っ暗になる。

男を「愛していた」という事実だけを残して。


女は死地に立ちながら、走馬灯のように思い出を振り返っていた。

目を閉じると思い出が映画のように蘇る。

自分を包み込み、抱きしめ、思いつく限りのことをしてくれた。

女にとっては、愛されているという感覚だけで十分だったが、身に余る程の愛を男はくれたのだ。

女が求めずともスキンシップは激しめ、夜だって何度激しくなったか分からない。

そこに、マンネリなんてものを感じたことは一度もなかった。

長かったようで短かった時間のせいだろう。

これからも、男と一緒にいれば、マンネリ化していってしまうかもしれない。

そんな不安も二度と考えなくていいのだ。

男との時間。それは何ものにも、代わりを務めることができない時間だ。

恋をした時、皆がそう思うのだろう。

砕け散った恋を人をいい思い出ではなく、悪い思い出へと変換、手のひら返しをする。

これからはもう、女はそんなことをする必要はないのだ。

愛する人のために死ねる。

あとの復讐は、彼がやってくれる。


安心、嬉しさ、喜び、幸せな気持ちで女は1歩前へ出た。ロープの長さの分だけ、落ちる感覚に襲われる。

落ちる感覚は内臓が浮き出すかのようなもの。

ジェットコースターに乗った時の感覚で、気持ちいいと感じる人がいるように、女もまた、この感覚が心地よかった。

長くは続かない。

ロープの長さが限界に達した時、たるんでいたロープが一気に引っ張られ、ピンっと一直線になる。

一瞬の出来事、一瞬で女の首を折り、絶命させた。


渋谷の街に悲鳴がこだました。

人々は恐ろしい光景をスマホで撮影しながら、ネットへ拡散していく。

情報が回るのは恐ろしく早い。

警察の耳に入るのもとても早いだろう。

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