4,娘
街中で捜査を行っていた警察は慌ただしく動いていた。
志村が発言した4人。
それぞれの家族が判明したことにより、事情聴取を行いに向かうのだ。
家族には電話をして、確認を済ませてある。
被害者と思われる人々はみな、一人暮らしをしているらしい。
ただ1人を除いて。
川島は柊木と一緒にいた。
柊木は警察署からの連絡があったあとから、電話に明け暮れている。
理由は明白であった。柊木の慌てよう。
少しの間しか、一緒にいなかったのに、彼がするとは思えない顔を川島の前にさらけ出してしまったこと。
動揺などしないと思っていた。
だが、連絡が来たあと、目は大きく開き、呼吸が乱れながら急いで電話をしに向かったのだ。
志村が言った名前のうち、柊木という苗字の人間がいたということ。
彼の慌てようから、2人は家族であることが分かった。
妻に連絡をしていたところを見ると、おそらく、娘なのだろうと川島は思った。
スマホを耳に当て、会話をする柊木の声が耳に入ってくる。
この事件が始まってから、彼の印象が川島の中で変わっていた。
最初はどんな状況にも冷静に対応することのできる刑事で、何があっても動揺なんかしなさそうに思えた。
しかし、自分の家族の平和が脅かされそうになったとなれば話は別らしい。
柊木がどんなにゴリラみたいな体格で、冷静な刑事だろうと、人間なのだなと思ったのだ。
彼の口からは「琴音は無事か!?」「今どこにいる!?」などの質問をバンバン投げかけていた。
言い方がかなり投げやりで、奥さんも焦っただろう。
無事かと聞いているため、この時、琴音という人物が娘であることに確信を持った。
しばらくすると、柊木はスマホを耳から離し、フゥーっと息を大きく吐いた。
顔中、汗びっしょりだったが、表情は落ち着いている。
川島の元に来るなり「俺はこの場を離れる」と言い渡された。
「娘さんは無事なんですか?」
「無事だ。今、家にいるらしい。
今日はどこにも出かけてないみたいだしな。
それでも、心配だ。
名前を出されたってことは、もしかしたら、奴に狙いがあるかもしれない。
俺は家に戻る。話は聞く予定だから、1人付き添いがいるけどな」
ついて行きたい。
だが、川島は別の事情聴取があった。
名前をあげられた人物とは別に、志村が勤務していたというコンビニが発見されたらしい。
川島はそこへ事情聴取をしに行くのだ。
「柊木さん、俺は別の場所に行くので、ここで」
「あぁ、わかってる。
付き添いは別のやつが来る」
敬礼をした後、パトカーへと向かう。
歩き出した時、柊木に声をかけられた。
川島は振り返る。
「おい川島。
さっきの会話から、娘だって見抜いただろ?
やるじゃねぇか」
それだけ言い残し、柊木もパトカーへと歩いていった。
川島は呆然とその場に立ち尽くしていたが、途中で嬉しさが腹の底から湧き上がってくるのを感じ始める。
ペアになった刑事に呼ばれ、ようやくその場を動き出す。
嬉しさを噛み締めながら、パトカーに乗ることができた。




