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任務をこなして昇級する

 空軍に正式に入隊したが、俺が直接戦闘に加わることはなかった。自国・嵐の国や友好国で災害が起きれば支援物資を送ったり技術者や医師を乗せたりしていた。世界は広い。毎日どこかで何かが起こる。大陸の東側で洪水が起きたらその一ヶ月後には西側で疫病が流行り、更に一ヶ月後には南の寒冷地で寒波が襲う。各国が協力して復興を進めても新しい災害が起きていく。


 日照りや天候不順で不作が続くと餓死者が続出する前に食糧支援する。食糧を無償で差し出すかそれとも定額で売るか各国首脳が電話や無線で話し合う。それに従って俺達空軍も物資を運び人を送る。


 北側の海域で時化や事故で難破した船を救助することもあった。その時は水艇を操縦して海面に離着陸する。最初は困難を伴ったが、数ヶ月訓練すると実践に使えるようになった。


 任務をこなしていくうちに俺は二十五歳で少尉から中尉に昇格した。戦場で戦友に食糧や医療品や武器弾薬を運んだり、家族への手紙を回収して届けたりもした。敵と直接戦うことはなかったが、撃墜されないように迅速に正確に操縦しなければならなかった。何度か敵に下からも狙われ敵機に襲撃されたが、威嚇射撃で済んでいる。俺は殺しもしなかったし殺されもしなかった。


 兵站を担当する将兵達も前線で命を賭ける戦闘員達も神経を擦り減らしている。俺は戦場と基地を往復するだけでも恐怖を感じたが、彼等からすればかなりマシな立場にいる。


 国際法がある程度機能しているので戦場になった町村で略奪したり民間人を殺傷したり性暴力を振るったりする軍は国際的に非難を浴びる。戦争で勝っても和平交渉も条約も不利になる。捕虜に対する扱いも法で決められている。それでも犠牲者は多い。誤射や流れ弾で死亡する民間人もいるし、拷問で死亡する捕虜もいる。


 考古学者である父が戦争を嫌う意味が分かる気がする。古代の戦争は更に理不尽だった。略奪も捕虜の殺戮も性暴力も特に違法行為ではなかった。国際法が有るだけ現在の方がマシかもしれないが、現在俺達が扱う兵器や動員される兵士の数は古代と比べれば桁外れだ。銃火器も戦車も戦闘機も強力だ。生態系も破壊する。


 戦場での体験は苦痛だが、俺はまだマシだと思い直して任務をこなす。


 それが認められたのか俺は二十八歳で大尉に昇格した。技術者や医師だけではなく、要人を無事に送るようになった。政治家や将官や富裕層を秘密裡に安全に移動させなければならない。俺は荷物よりも慎重に操縦した。技術だけではなく守秘義務も問われる。作戦が成功した時には嬉しさよりも安堵である。要人達は様々な交渉を重ねて和平や条約を締結していく。世界の金融が変わることもある。


 強国は他国を見下して戦争を仕掛ける。仕掛けられた国は自衛の為に死に物狂いで戦う。俺の国・嵐の国は世界の覇権国と呼ばれているが、俺は疑問を持っている。嵐の国の大統領も政府も理由を主張しては戦争に介入したり攻め込んだりする。俺はそれが余計な事だと時々思う。強国が戦争を回避すれば他国も自衛戦争をしなくなる。しかし軍人になった俺はそんな批判を口に出さない。俺は災害時には国を超えて助け合えれば良いだろうと考えている。

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