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卒業

 頑張れば何でもできるのだと自信がついた。今では一人で飛行機を操縦できる。単に往復するだけではなく宙返りも旋回も錐揉み回転も気ままにこなせるようになった。初めて出来た時を覚えている。嬉しさよりも安堵で一杯だった。慣れてしまえば余裕が出来る。景色を楽しめる。


 大地から眺めるのと飛行機から見渡すのとでは空の色合いも美しさも違ってくる。飛行機から眺めると空の色は深い。空から見下ろす大地も絶景だ。人間も建物も矮小で森林と砂漠が大地を覆っている。


 色々出来るように放ったが、着陸が最も緊張する。これが終わらないと飛行が成功したことにはならない。やはり少しの油断で墜落する危険は常にある。


 一方で離陸の時は緊張もするが楽しい。どんなに計画しても風の強い大雨の時は中止になる。その時は格納庫で飛行機を整備するか座学か戦闘訓練を行う。風が穏やかな晴間は嬉しい。迎撃態勢に慣れる為に小雨でも少し風が吹いても決行するが、無茶は出来ない。墜落せずに目的地まで行き、問題なく帰るので精一杯だ。


 俺と同期達は少しずつ悪天候にも慣れていった。整備は下級生達が勉強の為に行うが、俺達も最終確認をする。ぬかりがあったら下級生達を叱責する。俺は怒鳴らないように具体的に不備を指摘しているつもりだ。


 今、俺は最終学年だ。下級生を乗せて慣れさせる。生身の人間を乗せるのは気が引けるが、そうしないと下級生達は成長しないし俺も最初はそうしてもらっていた。俺は少し確認に時間をかけながら下級生にも復唱させる。


 初めて他人を乗せた飛行は余裕がなかったので、同乗している下級生に気遣えなかった。墜落せずに失敗せずに着陸まで気を張った。一人で乗る時と二人乗りだと重さも抵抗も変わるのでそれを考慮しなければならない。さんざん教官達から留意点を聴いて作戦を練っていたが、本番は緊張の連続だ。風で傾いたり鳥に衝突しかけたりすると一瞬頭が真っ白になるが、焦らずに操縦桿を慎重に握る。エンジンが無事で墜落しなければなんとかなる。同乗している下級生に少し負荷がかかっても仕方ない。


 これも慣れていった。下級生達も訓練を受けているので少しの負荷でも耐えられるからだ。俺が無事なら下級生も無事だ。下級生を乗せても宙返りや錐揉み回転が出来るようになった。


 俺は養成所に四年学んで二十二歳になった。軍士官学校なので操縦以外にも軍事学も学んだ。卒業試験に合格したので来年からは少尉として空軍の何処かに配属されるはずだ。


 任官拒否すれば養成所が免除していた宿泊費も食費も衣料費も自費負担しなければならなくなる。授業料は免除されるが経済的な負担はバカにならない。それでも任官拒否する者は毎年数人いる。入隊して理不尽な命令で殺し殺される危険は有るものの、俺は勿体ないと思う。

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